【ミライデザイン研究所】Chim↑Pom展で体験した 社会問題への強烈なアプローチ -後編-

インサイドジール 日本語記事

クリエーティブ局 デザイナーのIです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。 前編に引き続き、現在森美術館で開催中の「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」についてお届けします。 この企画を体験して感じた下記2点、 ①Chim↑Pomの作品・企画構成について ②作品のメッセージをより強める空間での工夫 のうち、後編では②についてお送りします。 ②作品のメッセージをより強める空間での工夫 前述したような作品やプロジェクトが与えるメッセージを強めるために、空間もとても大きな役割を担っているなと感じました。 いくつか空間や展示について感じた工夫を紹介させていただきます。 ◆くらいんぐみゅーじあむ(託児所) 展示会場に入るとまず目に入ったのは、「くらいんぐみゅーじあむ」という託児所でした。 Chim↑Pomメンバーと同世代の子育て事情から着想を得た新プロジェクトで、 より多くの子育て中の方々が気軽に美術館を訪れアートを鑑賞することができるようになることを目的としたものです。 美術館に限らず、子育てしている方々にとって配慮しきれていない施設やコンテンツは多くあるかと思いますが、 なかなかその事実に目を向けるきっかけはありません。 こういった「普段目が向きにくい事象」をこういった形で作品として可視化させ解決することで、 現在子育てされている方々が、アートにより集中できるのはもちろん、 子育てを経験していない私も普段なかなか目につきにくい世の中の問題や不便さに目を向けることができました。 ◆道 本展示会は、展示会場の1フロアの真ん中に床が作られており、前述した「Sukurappu &Birudo」の展示を抜けると、 上にはさらにフロアが広がっていて「道」というプロジェクトが展開されています。 この「道」はこの展示会のために建築家の周防貴之氏と共に構想・着想された 大規模なサイトスペシフィック・インスタレーション(その空間を生かして制作する表現)です。 このプロジェクトでは「拓かれたアスファルトの区画を運営し、道を育てる」というコンセプトのもとに 道を育てる「運営者」を募りそれぞれの独自の「運営」によって「道を育てる」ことを目的としています。 実際にこの「道」ではダンスやイラストなどのパフォーマンスをしている人がいたり、 ただただ寝転がっている人がいたり、俳句の公募がされていたりなど様々な「表現」が行われていました。 この「道」というプロジェクトは日々変化し、私たちに「公共」という言葉の意味を改めて問いかけます。 参加型の展示や企画は多くありますが、空間を分断し、その上に道を作り、 さらにそこに一般の方々が募りそれぞれの「表現」を展開するという一連の流れは、 参加型の展示としての一種の「究極形」のように感じました。 ◆ゴールド・エクスペリエンス こちらは「ゴールド・エクスペリエンス」という巨大なバルーンの立体作品で、 2012年、東京渋谷にて行われた個展にて発表された作品です。 渋谷のゴミが増加していることに目を向けさせることを目的とした作品となっており、 実際に中に入ることで普段ゴミを捨てる側の自分自身がゴミになってしまうという内容です。 こちらの展示と合わせて、それぞれの都市にある環境などの問題の原因物質をゴミ袋に採取し、 ゴミ出しとして捨てるパフォーマンス映像なども制作されていたそうです。 こういった社会問題は普段目を背けがちで、ポスターや演説などで一時的に目や耳に入ったとしても なかなか改めて考えるきっかけにはなりません。 しかしこの「ゴールド・エクスペリエンス」では巨大なモチーフにて目を引き、 さらに中に入るという「空間的工夫」により「体験」を生み、より大きなインパクトを人々に与え、考えさせるきっかけを作ります。 ◆まとめ 今回は「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」の内容を通して、 社会問題に対する企画や空間でのアプローチに触れさせていただきました。 ただ作品を展示する場合は、作品を見ている間は色々と考えたり、 感動はあるかもしれませんが、その場限りのものになってしまいがちです。 「Sukurappu& Birudoプロジェクト」のような「ストーリー性のある企画」や 「道」「ゴールド・エクスペリエンス」などの「空間をダイナミックに使った展示」は人々を振り向かせ、 その問題について考えられずにはいられなくなるような衝撃を鑑賞者に与えます。 こういった「強引なほどのアプローチ」が「Experience Design」を生むのかもしれないと思いました。 また、ご紹介させていただいた「くらいんぐみゅーじあむ」により、 小さなお子様のいる方でも安心してアートに集中できる環境作りがされていたり、 作品完成までの流れや出来事などが記載された年表が各エリアに配置されていて、 背景を知った上で鑑賞することで、鑑賞者側が作品のメッセージをより細かな部分まで感じ取れるようになっていたりと、 自分達の作品に集中させ「メッセージが伝わりやすい環境づくり」が徹底されているなと感じました。 ご紹介した展示は、5月29日まで森美術館で開催されております。 今回紹介しきれなかった作品はもちろん、前述した「道」については日々変化しさらなる盛り上がりを見せているかと思います。 気になった方はぜひ実際に体験してみてください。 ■参考 ・「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」公式サイト:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/chimpom/ ・Chim↑Pom公式サイト:http://chimpom.jp/

【ミライデザイン研究所】Chim↑Pom展で体験した 社会問題への強烈なアプローチ -前編-

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クリエーティブ局 デザイナーのIです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。 今回のトピックは、現在森美術館で開催中の「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」についてです。 Chim↑Pom(チンポム)は、独創的なアイデアと卓越した行動力で社会に介入し、 我々の意表を突くプロジェクトを多く手がける、アーティスト集団です。 日本社会や原爆、震災など現代社会の事象や諸問題に対して強いメッセージを持つ作品を生み出し続けています。 今回の展示では、結成17周年を迎えるChim↑Pomの初期から近年までの代表作と今回の展示のための新作、 計150点が一挙に並ぶ初の本格的回顧展となっています。 展示はいくつかのテーマごとにエリア分けされており、様々な工夫がなされたダイナミックかつ思い切りの良い展示構成により、 作品一つ一つにスポットが当たるような展示会となっていました。 今回はこの企画を体験して感じた下記の2点について考察してみたいと思います。 ①Chim↑Pomの作品・企画構成について ②作品のメッセージをより強める空間での工夫 ①Chim↑Pomの作品・企画構成について 私は、本展示にて初めて「Chim↑Pom」の作品や活動について知ったのですが、 圧倒的かつ独創的な企画構成・作品作りにとても刺激を受けました。 そこで、数ある展示の中でも私が特に刺激を受けた作品・企画について、いくつかご紹介させていただきます。 ◆Sukurappu ando Birudoプロジェクト -ビルバーガー- この写真は「ビルバーガー」という作品で、「Sukurappu& Birudoプロジェクト」というプロジェクトにて展示された作品の一つです。 「Sukurappu ando Birudoプロジェクト」とは2021年に開催された東京オリンピックに向けて、 急速に再開発が進む東京の都市の姿を「スクラップ&ビルド」をテーマに描くプロジェクトです。 このプロジェクトの内容の一つとして、Chim↑Pomは解体が決まっていた新宿の歌舞伎町商店街復興組合ビルを舞台に 「また明日も見てくれるかな?」展を開催しました。 この展示では、前述したように「急速に再開発が進む東京の都市の姿」を問題視し訴えかける作品が10数点展示され、 地下スペースにてパーティイベントも行ったのち、展示会終了後の2017年1月に同ビルは展示作品もろとも取り壊され、 その瓦礫と作品の残骸を次回の「道が拓ける」という高円寺にて行われた展示で、"新作として"発表しました。 このプロジェクトは全てChim↑pomの自費かつ自主運営で行われ、その全貌は書籍「都市は人なり」にまとめられました。 プロジェクト名の「スクラップ&ビルド」が和製英語であることから、敢えてローマ字表記になっています。 作品一つ一つに都市開発に対して問いかける強烈なメッセージ性があり、それだけでもとても考えさせられるものがありました。 それを敢えて解体の決まったビルで展示を行い、作品もろとも取り壊され、 さらにそれを作品として見せるという「ストーリー性のある企画構成」により、 当時一連の流れを体験した方々の受けた衝撃は計り知れないな、と感じました。 ◆リアル千羽鶴 これは「リアル千羽鶴」という作品で、名前の通り千羽鶴を集め、巨大な鶴を模した作品です。 こちらは個人や団体からの発注で1羽ずつ製作され、最終的には千羽鶴と同様に1,000羽作るという目標をコンセプトとしています。 中でも、広島にて行われた「Non-Burnable」というプロジェクトでは、 広島に送られてくる大量の千羽鶴をメンバーであるエリイさんが元の折り紙に戻し、 中に書かれたメッセージ等を読む様子を録画したビデオと共に、 それをまた折り鶴へと観客に折り直させるワークショップを展開しました。 こちらも前述のプロジェクトと同じく、折り紙に戻した鶴を観客に再度折り直させることで「行動」を通して ただ見せるよりもはるかに大きなインパクトやメッセージを観客に与えたのではないかと思います。 平和、というありふれているからこそ伝えることが難しいテーマに対して、 こういった角度・内容でアプローチを続ける姿勢にはとても刺激を受けました。 (後編に続きます) ■参考 ・「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」公式サイト:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/chimpom/ ・Chim↑Pom公式サイト:http://chimpom.jp/

【ミライデザイン研究所】 浮世絵という素材で見せる スピリット・オブ・ジャパン -後編-

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クリエーティブ局 デザイナーのOです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。 前編に引き続き、現在角川武蔵野ミュージアムで開催中の「浮世絵劇場 from Paris.」についてお届けします。 江戸時代初期に庶民の間にも浸透した「浮世=現世」を表す絵画、浮世絵は 今で例えるとSNSなどの、誰もが楽しめる身近なメディアだったようです。 時代を超え、ヨーロッパに渡ったあとも、ゴッホやモネなどの著名な画家たちに大きな影響を与えたと言われています。 今回の展示では浮世絵劇場というタイトルの通り、展示室は大きな劇場と化しており、 360°を浮世絵を再構築した映像が映し出されていました。 この企画を体験して感じた下記2点、 ①浮世絵を再構成して見せることの意味 ②没入感の高い体験を生んでいる空間の工夫の考察 のうち、後編では②についてお送りします。 ②没入感の高い体験を生んでいる空間の工夫の考察 先述したような没入感の高さを生んでいる要因はもちろん映像だけでなく、空間の役割も大きいように感じました。 この企画の会場構成は以下のようになっています。 360度シアターは第一部、それを鑑賞した後に第二部ではダニーローズ・スタジオがインスピレーションを受けた作品の紹介や、 現代作家たちが描く新たな浮世絵などの展示となります。 ◆前室 この企画の概要を解説したり、注意事項の説明を受けるための部屋です。 それと共に第一部での360度シアターへの期待感を高めるための仕組みでもあります。 ほかの一般的な展覧会などでは、入場するとすぐ展示品が目に入ってくるようなところ多くあるかと思います。 しかしこの企画ではあえて前室と第一部のシアターエリアまでに長い廊下を設置する事で、 このあと目に飛び込んでくるインスタレーションのインパクトをより大きなものにしているのです。 ◆第一部_360度シアター メインの展示であるインスタレーションのエリアとなります。 長い廊下を抜けた先に、巨大な空間が目に飛び込んでくる際のインパクトはかなり大きいものでした。 鑑賞者はこの広い空間を自由に移動しながら楽しむことが可能です。 映像が投影される壁面に近づいても良し、中央の柱の間に設置されたベンチで広い範囲をゆったりと眺めながら鑑賞することも良し。 決まった体験の仕方は存在しないのです。 そうした自由な鑑賞方法をとりつつも、ほかの鑑賞者の邪魔をしないテクノロジーや空間の工夫に幾つか気付きました。 一つはベンチや柱の仕様です。 柱の側面位置や人の座るベンチなど、どうしてもプロジェクションマッピングによる映像を投影することが難しい箇所が存在します。 今回の展示ではそのような箇所にミラー素材を貼ることによって、 実際には映像が投影されていない場所にも空間の奥行きが感じられるように、設計されていたのだと思います。 もう一つがプロジェクターの設置台数、そして位置です。 自由に位置を移動して鑑賞するという事は、移動する位置によっては投影する映像を遮り、影になってしまう可能性があるという事です。 それを解消するために、今回の展示では緻密な計算の基にプロジェクターの位置が決定されたのではないかと思います。 実際に壁の近くに立ってみると、確かに床の映像は影になっていますが、 壁の映像は人が立っていても影になってしまうことはありません。 もちろん場所によってはそうではない箇所もありますが、かなり細かく投影する角度を検証しながら決定していったからこそ、 座って鑑賞する人たちのことも邪魔することなく、移動しながら鑑賞できる、没入感を実現できたのではないでしょうか。 ◆第二部 最後に、この展示に関連する浮世絵などの情報が知れる展示エリアとなります。 以前ご紹介した「北斎づくし」の映像作品では、 「事前に実物を鑑賞したからこそ、映像を見た時の理解度が上がる」という事をお話しましたが、 こちらのやっていることは真逆です。 北斎づくしの映像作品は「理解を深めたうえで、更に鑑賞者を引き込ませるためのツール」という立ち位置だったのに対し、 今回の展示の趣旨は「まずは小難しいことは考えずに、 ファーストインパクトで浮世絵のすばらしさを知ってほしい」だったのだと思います。 元々浮世絵というものに興味のない人でも、親しんでもらおうとする姿勢が、このような展示のゾーニングに繋がっています。 実際に会場に足を運んだ際も、映像を見終わった後に詳しい情報を入れることで、一歩先の理解につながるような感覚がありました。 目的やターゲット、企画の趣旨によってゾーニングを変えていく事で、 体験の質そのものが変化していくことの良い例なのではないでしょうか。 ◆まとめ 今回は映像を使ったインスタレーション作品の企画展について、分析や所感を述べさせていただきました。 ただ作品を展示をするだけではなく、より没入感の高い経験を鑑賞者にしてもらうことによって、 記憶に残すような手法を用いることが増えていますが、 それもただ映像を使うだけだったり、体験を入れ込むだけでは質の高い体験や没入感は生まれません。 鑑賞者の動きや展示の趣旨、伝えたいことを軸に置いたうえで、それに沿った空間設計、コンテンツ作成をする必要性があると思います。 それこそが「Experience Design」であるのではないでしょうか。 ご紹介した展示は、5月8日まで会期を延長して、角川武蔵野ミュージアムで開催されております。 今回の記事ではご紹介できなかった映像作品の他の幕や、第二部の展示内容もありますので、ぜひ実際に体験してみてください。 ■参考 ・公式サイト:https://kadcul.com/event/50 ・美術手帳 オンラインマガジン:https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/24767

【ミライデザイン研究所】 浮世絵という素材で見せる スピリット・オブ・ジャパン -前編-

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クリエーティブ局 デザイナーのOです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。 今回のトピックは、現在角川武蔵野ミュージアムで開催中の「浮世絵劇場 from Paris.」についてです。 浮世絵は江戸時代初期に確立された絵画ジャンルです。 低価格で販売されたことから庶民の間でもかなり浸透し「浮世=現世」を表す絵画と言われました。 今で例えるとSNSなどの、誰もが楽しめる身近なメディアだったようです。 時代を超え、ヨーロッパに渡ったあとも、ゴッホやモネなどの著名な画家たちに大きな影響を与えたと言われています。 今回の展示ではそんな浮世絵をテーマとしていますが、有名な浮世絵の実物が展示されているわけではありません。 浮世絵劇場というタイトルの通り、展示室は大きな劇場と化しており、360°を浮世絵を再構築した映像が映し出されます。 この企画はフランスで活躍するクリエイティブチーム「ダニーローズ・スタジオ」が フランス国内で行った企画「Images of the Floating World」をもとに、パワーアップさせて浮世絵の国日本へ凱旋しています。 今回はこの企画を体験して感じた下記の2点について考察してみたいと思います。 ①浮世絵を再構成して見せることの意味 ②没入感の高い体験を生んでいる空間の工夫の考察 ①浮世絵を再構成して見せることの意味 前述したようにこちらの企画は浮世絵をテーマにしてはいますが、 実際の有名とされる日本の古くからある浮世絵の展示はしておりません。 来場者が空間に入っていくと広がっているのは360°全て映像が投影される、インスタレーション空間です。 全12幕のシーンに分かれ、多くの人に親しまれてきた浮世絵の数々を再構成した、映像作品が大きな空間に映し出されます。 浮世絵劇場というタイトルだったため、私も足を運び鑑賞する前には 「一幕ごとに同作者や同じ作品群のものをまとめているのではないか」と思っていたのですが、実はそうではありません。 第一幕を鑑賞した際に、「再構成した」という言葉の意味を知ることになります。 ◆一幕「風景」 オープニングに流れるのは、葛飾北斎や歌川広重などの風景画をメインとした映像です。 富嶽三十六景、諸国滝巡り、東海道五十三次などの膨大な数の作品たちが、屏風が開いていくように現れては消えてゆきます。 有名浮世絵を単にスライドショーで見せるだけにはとどまらず、屏風というモチーフと組み合わせることで、 鑑賞者に空間を感じさせ、一気にこの空間の中に引き込ませる工夫だと感じました。 また、足元に広がるのは北斎がよく水の表現をする際に用いていた、揺らめきの文様です。 壁面に広がる屏風の背景にもこちらを用いており、空間をより広げ、鑑賞者の没入感を深める役割を果たしていたように思います。 そして何より、この絵を一枚の絵として見せたのではなく、「背景や足元に投影することによって、 没入感を増すための素材として使った」ことに、今回の展示の意義が詰まっているように感じました。 浮世絵の魅力を見せる。 そのためには浮世絵そのものを見せるのではなく、浮世絵の素晴らしい部分を抜粋して、映像として再構成する。 ダニーローズ・スタジオが「スピリット・オブ・ジャパン」を表現する際に最も意識した点がこれなのではないでしょうか。 ◆第三幕「日本の妖怪たち」 浮世絵を「素材」として用いて新たな浮世絵の魅力を伝える、というのが最も強く表現されていたと感じるのがこの第三幕です。 舞台は一変して、薄暗い森へ。木々が生い茂る森の中でよく目を凝らしてみれば、木の陰から妖怪たちが飛び出してきます。 もちろんこれも、元々一つの作品ではありません。 それぞれの作品がある中で、愛らしい妖怪のキャラクターを抜粋し、映像素材として用いたものです。 基の作品の状態とは全く異なる「場」で鑑賞することによって、彼らの新たな表情や魅力を発見することが出来ます。   また、この360度シアターという場を生かしていると感じたのは、 「鑑賞する場所によって遭遇できるキャラクターが異なる」という点かと思います。 同じところに立ち止まっていたのでは、遭遇できる妖怪の数は限られます。 森の中を歩くように、観賞場所を移動していく事によって、多くの気付きや新たな出会いを得ることが出来るのです。 その他のシーンも魅力的で、どれも浮世絵のすばらしさを再認識できるものとなっていたので、 気になる方はぜひ足を運んでみて、実際の映像を楽しんでいただければと思います。 (後編に続きます) なお、ご紹介した展示は、2022年5月8日まで会期を延長して、角川武蔵野ミュージアムで開催されております。 今回の記事ではご紹介できなかった映像作品の他の幕や、第二部の展示内容もありますので、ぜひ実際に体験してみてください。 ■参考 ・公式サイト:https://kadcul.com/event/50 ・美術手帳 オンラインマガジン:https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/24767

【ミライデザイン研究所】「2121年 Futures In-Sight」展 -後編-

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クリエーティブ本部 デザイナーのSです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。 前編に引き続き、東京ミッドタウン・ガーデン内21_21 DESIGN SIGHTにて開催されていた 「2121年 Futures In-Sight」展についてご紹介します。 本展は未来を思い描くだけではなく、考え方や物の見方を、多様な参加者たちとともに“可視化”していくものです。 参加者はデザイナーやアーティスト、思想家、エンジニア、教育機関、研究者など多岐にわたり、 様々な視点から未来への考え方を知ることができる場となっています。 自由な動線と様々な観点からの作品があるにも関わらず、来場者を困惑させない2つの要素 1.自由動線でも成立している理由 2.”未来”に没入させる展示方法 のうち、後編ではポイント2.についてお送りします。 2."未来"に没入させる展示方法 階層を分ける 「21-21 DESIGN SIGHT」は地上1階地下1階の低層建築になっています。 こちらは階段を使用して地下に降りた先にある最初の作品でした。 本来最初の作品の近くに展示されている”ごあいさつ”ですが、本展では地上1階に展示され、作品は地下1階から始まります。 階層が分けられ、突如作品が目に入ることで、来場者にとって”没入感”を与えるものとなっているのではないでしょうか。 パネルとグラフィックの位置 また、最初の展示ゾーンには”歴史を歩く”というテーマが設けられています。 パネルを”目線の高さ”に合わせることで、歩きながらもストレスなく作品を鑑賞することができるようになっていました。 もう少し細かく見ていくと、グラフィックの構成で日付やタイトル毎に高さを合わせています。 これもまた目線を一定にする要素となっています。 もしこのパネルが大きく別々に展示されていたら、来場者は立ち止まり流れが悪くなることが想像できます。 メイン会場では”未来を一緒に考察する”というテーマになっています。 先ほどの目線に合わせる方法を用いた”歴史を歩く”展示ゾーンとは異なり、四角柱には満遍なく文字情報が掲示されています。 足元や高い場所にあると読みにくいと感じるかと思いますが、これにより視線が上から下まで向けられるようになります。 普段考え事をする時に、何気なく上を見ることがあるのではないでしょうか。 実際に私も、上に掲示されている文章を読んでいる時は 「そういった未来もあるのか」「私ならこう考えるな」などの思考回路になっていました。 下部にも掲示することで、しゃがみながら考え込む人もいました。 このように視線の幅を広くすることで、考えることに対して視野が広がり、作品に没入することができます。 また、会場全体はモノクロに統一されています。 多くの企画展ではイメージカラーやメインとなる作品があるのに対し、メインとなる作品がないことはもちろん、 余計なイメージを与えてしまうと、来場者にとって”考える”という行為に”弊害”が生まれてしまうかもしれません。 赤は”情熱”、青は”爽やか”など、生活する上で何気なくイメージが浮かび上がってしまいます。 モノクロにすることで色彩からイメージを与えず、来場者に”想像する”余地を与えることができます。 それもまた没入感へ繋がっていると感じました。 このように1つの企画展でも、テーマが異なることで展示方法も変わってきます。 来場者に伝えたいことを明確にすることで、これらは解決できるのではないでしょうか。 まとめ 今回は大きく2つの視点から本展を成り立たせる体験設計について書かせていただきました。 空間デザインをしていく上で、体験設計を考えることは大事であると考えています。 羅針盤がフロアマップとなっていたことや、四角柱の展示において高さを持たせることで回遊を促していたことは、 自由動線でも成立していた要素となっています。 自由動線であることで、来場者自らが情報を取得する構成になっており、 それが今回の没入体験に繋がっていると気づくことができました。 また、その没入体験をストレスなく実現するために、 パネルの位置をテーマによって変化させることや会場全体をモノクロで統一すること、 ランダムに配置された四角柱など様々な工夫が見られました。 体験設計を踏まえ、レイアウト設計を企画書などに明記することは多いですが、 本当の意味での体験設計とは来場者の”主体性を尊重する”ことかもしれません。 展示会や内装、バーチャル空間などにおいて、 このような視点から体験設計を考えてみると、また新しい提案に繋がるのではないでしょうか。

【ミライデザイン研究所】「2121年 Futures In-Sight」展 -前編-

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クリエーティブ本部 デザイナーのSです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。 今回は東京ミッドタウン・ガーデン内21_21 DESIGN SIGHTにて開催されていた「2121年 Futures In-Sight」展についてご紹介します。 本展は未来を思い描くだけではなく、考え方や物の見方を、多様な参加者たちとともに“可視化”していくものです。 参加者はデザイナーやアーティスト、思想家、エンジニア、教育機関、研究者など多岐にわたり、 様々な視点から未来への考え方を知ることができる場となっています。 未来の考え方を知る”様々な視点”を2つの作品を例に挙げてご紹介します。 タイトル  Imaginary Dictionary-未来を編む辞書 概要  過去30年の新聞記事データを学習したAIが、未来の可能性から作り出される言葉を生成します。 考察  AIと聞くと堅苦しいイメージがありますが、この作品で表示されていた未来の言葉には「差別麦」「カーテン哲学」など、 今ある言葉が組み合わさったものが多く見られました。 思わず笑ってしまうものばかりだったので、私も未来の言葉を考えたい気持ちにさせられます。 全く異なる要素を掛け合わせることは、クリエイティブの分野でもよく使われています。 新しいものとは、何かと何かを掛け合わせることで生まれるものであると感じます。   タイトル  "e-lamp.”-心を、光で、可視化する。 概要  自身の指を作品にかざすことで心臓の動きを感じ、心拍が光になって点滅を繰り返す。 考察  もし心が可視化されたら日常にどのようなコミュニケーションが生まれるのでしょうか。 プレゼン時や恋人といる時の”ドキドキ”が可視化されたら少し恥ずかしい気持ちもありますが、 それを知った時の相手の行動に変化が生まれることで、現在とはまた違ったコミュニケーションになるのではないでしょうか。    また、本展は来場者が自由に巡回できるものとなっています。 それにも関わらず、次の目的地へと困惑することもなく作品を鑑賞できました。 自由な動線と様々な観点からの作品があるにも関わらず、来場者を困惑させない要素とは何なのでしょうか。 大きく2つの視点から、どのような体験設計をつくっているのかについて深掘りしていきます。 1.自由動線でも成立している理由 2.”未来”に没入させる展示方法 今回の前編ではポイント1.についてお送りします。 1.自由動線でも成立している理由 作品を鑑賞する際、動線をあえて設けないことで来場者を自ら行動させることができます。 しかし自由に行動できるが故に、そこには自発的に行動させるための何かしらの工夫が必要になってきます。 羅針盤が生み出す動線計画 入り口を真っ直ぐ進むと、左側に大きな羅針盤が見えてきます。 「Future Compass」というこの羅針盤は、3層の円盤から構成され、 21のキーワードを自由に組み合わせることで自身のオリジナルの”問い”を導き出すことができます。 壁面に大きく展示されることで、本展にとって大きな役割を担っていることが伝わってきます。 スマートフォンやタブレットでQRコードを読み込むと、 画面上にも羅針盤が表示されて操作することができるようになっています。 くるくると回しながら3つのキーワードを繋げることで、1つの作品が表示されます。 それは次に鑑賞する作品で、目的地を提示してくれるのです。 この一連の流れの中で毎回異なるパターンが表示され、来場者の足を止めることなく誘導することができるものとなっていました。 本来であればパンフレットから作品概要やフロアマップを伝えるところを、 スマートフォンやタブレットを用いることで、来場者によって異なる鑑賞方法を作り出し、”自由な動線”が生まれています。 ▲羅針盤を操作して作品に行くまでの流れ 四角柱が生み出す動線計画 モノの変化を可視化する四角柱「タイムモノリス」は、100年という時間軸を高さに置き換えられたものです。 その高さは約3mにも及びます。展示物と天井の区別がなくなり、まるで森の中を彷徨っているような感覚になりました。 さらには展示物がランダムに配置されていることで会場全体に死角が生まれます。 遠くの作品はその場からの認識が難しく、羅針盤から提示された作品に一直線でたどり着くことはできません。 その間に惹かれる作品には立ち止まり、結果的に新たな鑑賞方法が生まれます。 これもまた、巡回を促す要素となり、自由な動線を作り出しています。 (後編に続きます)

【ミライデザイン研究所】思わず近づいてみたくなる工夫とは -後編-

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クリエーティブ本部 デザイナーのNです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。 前編に引き続き、昨年11月に二子玉川にオープンした、絵本作家エリック・カールの描く絵本の世界観がテーマの 国内初インドアプレイグラウンド施設「PLAY! PARK ERIC CARLE」についてを、 同様の工夫が凝らされた他の体験型展示会・店舗と合わせてご紹介します。 3.見るだけではなく、触って学べる 「オートマタ(からくり人形)」では、エリック・カールの作品をモチーフにしたからくり人形やゲームが遊べます。 動物たちの形の磁石でボールの通り道を作り、下まで到達する速さを測ったり、 『パパ、お月さまとって!』のゲームではビー玉を上まで落とさずに運んだり、楽しみながら自分で工夫する面白さを感じられます。 ▲自分で動かすことで、どうしたら上手くいくのか考えながら遊べる エリック・カールは自分で絵具を塗った薄紙を切ったり、破いたりしてコラージュしながら絵を描いていました。 「アトリエ」ではそんなエリック・カールの技法を体験できるワークショップなどが開催されています。 絵本を読んで楽しんだ後に、自分の手で作品を生み出す体験をすることで、 子どもたちの掻き立てられた創造力や自主性を発揮できる場となっています。 ▲色紙作りや、昆虫標本などを手作りしオリジナルの作品が出来上がる -あらゆる視点から世界に入り込ませる- 今回は親子連れなど、ターゲットが絞られてくる施設で、大切だと感じたポイントを3点にまとめてご紹介しました。 1.子どもも親も安心して楽しむための、目が行き届く作りへの配慮 2.子供の目線だからこそ楽しめる仕掛けによって、大人も一緒に発見ができる 3.見るだけではなく、触って学べる場所を作ることで、体験と共に記憶に残る 絵本というワードに捉われ、子どもだけにフォーカスした作りだと 安全面などの心配から保護者は自由にのびのびと遊ばせてあげることも難しくなります。 また、子どもの気持ちになっているつもりでも、設計している大人ではまだその目線に立てていないかもしれません。 あらゆる視点から安心して親子が絵本の世界を楽しめる配慮が必要不可欠です。 -それぞれの要素をいかに空間に落とし込むか- 上記のポイント3点をまとめる大きな空間づくりとして「思わず近づきたくなる部屋の繋がり」がありました。 「PLAY! PARK ERIC CARLE」は一方通行ではなく、それぞれのブースを行き来できます。 だからこそ、ブースの繋がりや飽きさせない工夫が大事になってきます。 例えば「緑の迷路」を抜けた先に「ディスカバリーゾーン」があり「草をかきわけて」というタイトルで昆虫たちの展示がされています。 迷路の緑の壁がまるで草のようになっていることで、 子どもたちはその先に何が待っているのか興味津々で標本や虫の音に耳をすませます。 迷路からは「アスレチック」の上の部分が見え「この後に何か待っている!」と気持ちが昂ります。 「オートマタ(からくり人形)」のブースはアスレチックブースよりも床が低い位置にあるため、 遊んでいる際に大きなからくり仕掛けが目に入りやすくなっています。 体を動かし疲れたら、からくりを見て近くの休憩スペースで飲み物を飲むこともできるのです。 親子が自分たちのペースで目一杯パークを満喫できる空間の繋がりがあってこそ、3点のポイントが光ると実感しました。 ここまでに述べたような工夫は他の体験型の展示会や店舗にも見受けられます。 ●生活の中の「食」をテーマにした体験型展示「いただきますの前、ごちそうさまの先。展」 伊藤忠商事のあらゆるSDGsに関する活動を後押しする情報発信・体験の場として出来た スタジオ「ITOCHU SDGs STUDIO」(東京・港区)で10月16日(土)から11月14日(日)まで行われていた展示です。 世界食料デーにあわせ、「食べる」という日常の行為の背景や課題をグラフィックで展示するほか、 3種類のオリジナル弁当を販売していました。 空間をオレンジと緑で分断し、オレンジ側に「課題や問題」、緑側に「解決策や取り組み」を展示しています。 両方を交互に見たり、片方からじっくり読んだり展示の周り方は人それぞれですが、 明確なレイアウトなので難しく感じる内容も入ってきやすい見せ方となっていました。 ▲展示台も左右で課題と解決するための取り組みや製品を並べている グラフィック展示を見た後に奥へ進むと、3種類のオリジナル弁当のサンプルが展示されています。 期間中にそれぞれ入れ替わりで販売されていましたが、 私は[ITOCHU SDGs STUDIO]エバンジェリスト冨永愛さん考案の「発酵美容弁当」を購入できました。 それぞれのお弁当には食材一つ一つの解説がついてきます。 また、中身だけでなく、お箸や風呂敷も使い捨てのものでは無く、食事で生まれるゴミ削減が考慮されています。 ▲「ミライ弁当」「すてない弁当」などそれぞれ新しい観点から作られている 食に関する問題を理解してから食べる「いただきますの前」、食べ終わった後も環境に対する配慮がされた「ごちそうさまの先」。 問題への入り口を易しく、課題と解決方法という分かりやすい視点で見せ、展示会から帰った後も記憶に残る見せ方の構成でした。 ●体験型ストア b8ta (ベータ) 渋谷店 日本初の体験型ストア b8taの、有楽町、新宿マルイ本館に続いて、昨年11月に渋谷にオープンした新店舗です。 b8taは企業に手軽に実店舗に出品できるようにし、客は実際に手にとって体験できるという「商品との出会いの場」を提供する店舗です。 新店舗では新たにカフェスペースが設置され、食品カテゴリの体験も増えました。 カフェのカウンターに行くまでに試飲できる商品が並び、それぞれの説明を見た上で一つだけ試したいものを選べます。 店内は一方通行ですが、試飲試食できる商品の展示が事前に確認でき、コーナーが分かりやすいため、 ストレスなく自分の意思で体験している感覚を味わえます。 従来の店舗と違い、可動式の什器を導入したことでフレキシブルなレイアウトが可能となっていました。 ▲食品展示の中から選びカウンターで注文、その場で試飲ができる 気になった商品は専用のアプリケーションでQRコードを読み取りながら製品体験ができます。 一度読み込めば記録に残り、後から見返すことができるので製品名を忘れたり、 展示内容をしっかり見られなかったりなんてことがありません。 店舗の入り口外側にも、大きくアプリケーションのQRコードが掲出してあり、 入店してからの手間や時間の無駄が発生しない工夫がされています。 ▲アプリで詳細を確認し、後で購入ページにいくことも可能 -自由の中にある分かりやすい体験ストーリー- 体験型の展示は記憶に残りやすく、イベントや施設でも多く取り入れられているかと思います。 興味を持ってもらえる内容にすることは大事ですが、 自由に楽しんでもらいながらも、本来の訴求したい点が伝わるように導かなければなりません。 自分の視点が1つに捉われていないか、体験ストーリーを崩さないレイアウトになっているか、 今一度見直すことがコンセプトのブレない空間づくりへと繋がるのではないでしょうか。 ■おまけ  今回訪れた「PLAY! PARK ERIC CARLE」のある二子玉川がこの冬、エリック・カールの絵本の世界に染まっています。  『はらぺこあおむし』とクリスマスツリーは昨年12月25日まででしたが、スケート場や体験イベントは3月まで行われるそうです。  施設だけでなく、街に広がるカラフルな世界にぜひ足を運んでみてください。

はらぺこあおむし

【ミライデザイン研究所】思わず近づいてみたくなる工夫とは -前編-

インサイドジール 日本語記事

クリエーティブ本部 デザイナーのNです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。 今回は、昨年11月に二子玉川にオープンした、絵本作家エリック・カールの描く絵本の世界観がテーマの 国内初インドアプレイグラウンド施設「PLAY! PARK ERIC CARLE」についてお送りいたします。 エリック・カールは「絵本の魔術師」と呼ばれ、仕掛け絵本などを得意とした日本でも愛される絵本作家です。 世界的なベストセラー絵本『はらぺこあおむし』や『パパ、お月さまとって!』など一度は読んだことがある人が多いのではないでしょうか。 こちらの施設は、「緑の迷路」「ディスカバリーゾーン」「アスレチック」「オートマタ(からくり人形)」「アトリエ」など、 9つのブースを行き来する構成となっており、遊びを通して学びを得ることを大切にしていたエリック・カールの世界観を表現しています。 子供だけでなく大人も楽しめる作りとなっていたため、今回は小学生の従姉妹と一緒に私もカラフルで暖かい空間に浸ってきました。 遊べて、学べる施設。 その魅力の秘密に着目して以下の3つのポイントに沿ってレポートし、 後半は体験型展示の観点から他の展示会や店舗についてもご紹介したいと思います。 【3つのポイント】 1.子どもも親も安心して楽しむための、目が行き届く工夫 2.子供の目線だからこそ楽しめる仕掛け 3.見るだけではなく、触って学べる 今回の前編ではポイント1.と2.のレポートをお送りします。 1.子どもも親も安心して楽しむための、目が行き届く工夫 「PLAY! PARK ERIC CARLE」の対象年齢は、0歳~12歳の子どもとその保護者です。 私が行った際もまだ背丈の低い子たちがたくさん訪れていました。 子どもたちは視線の位置が低く、親も姿を見失いやすいです。 そういった問題への工夫が入り口から施されていました。 入ってすぐの、靴を脱いで荷物をしまうロッカーエリアでは、鉢の巣をモチーフとした靴入れが並び、 その六角形から奥が抜けて見えることで、子どもは親の姿を確認しやすく、 また保護者もお子さんを見失わずに安心して荷物を整理できます。 ▲中が抜けていることで、通路の視認性を良くしている靴入れ 靴を脱ぎ、足の裏で感触を楽しみながら来場者は冒険の始まりを感じます。 3つある扉のうち1つを選び開けると、待っているのが「緑の迷路」です。 ここでは緑の塀で囲まれた迷路を進みます。 迷路の所々にはエリック・カールのイラストが散りばめられており、 子どもでも見やすい低い位置にある生き物達を頼りにしながらゴールを見つける楽しみがあります。 天井の鏡貼りによって高さや広がりを感じられ、保護者も子どもの位置を把握できます。 ▲柱や天井が鏡貼りの為、子どもが何処にいるか分かりやすい「緑の迷路」 その他にも「アスレチック」の遊具に登った際の高さが大人の目線にくるような設計など、 子どもたちの動きを制限せずに保護者が安心して見守ることができる工夫が随所に感じられました。 2.子供の目線だからこそ楽しめる仕掛け 「緑の迷路」を抜けると「ディスカバリーゾーン」が待っています。 ここは子どもたちが大好きな虫や動物を発見し、触れ、出会える場です。 エリック・カールが描いた生き物や昆虫標本などが展示されています。 展示されている動物達は触れることができ、手に優しい素材で作られています。 大人では気づかないような位置に扉や覗ける仕組みがあり、私もかがんで見るとまた違う発見が多くありました。 昆虫や夜の生き物などカテゴリに分かれており、昆虫標本の展示近くでは虫の音が聞こえ、 音や色合いでも生き物の生態を感じられます。 ▲触りやすい素材で、子ども達が自ら発見し楽しめる仕掛け達 ▲近くに寄って覗いたり、耳をすましたりすることで気づける展示 続いての「アスレチック」ブースでは、思う存分体を動かして遊べます。 そんなアスレチックの遊具の中にも、ワクワクする仕掛けがありました。 遊具の壁に描かれた★や▲の謎のメッセージ。 これはエリック・カールの絵本『たんじょうびのふしぎなてがみ』に出てくる手紙の内容です。 早速近くを探してみると、メッセージに書かれた記号が見つかりました。 指示の通りに辿っていくと最終的にあるものが見られます。 私も昔読んだことのある作品でしたが、子どもの目線で下から覗かないと探すのが難しい仕掛けがあり、 私一人では答えを見つけられず従姉妹が教えてくれました。 ▲少しかがむだけでは気づけない隠し要素で、子どもと一緒に楽しめる 詳しくは訪れてからのお楽しみですが、子供がどんな世界を見ているのか大人に気づかせてくれる要素でした。 (後編に続きます)

当社のオンラインイベントツールが
Aichi Sky Expo主催者支援サービスに採用されました

zone. お知らせ プレスリリース 日本語記事

「zone.-unbelievable-(ゾーンアンビリーバブル)」に関して愛知国際会議展示場株式会社と販売代理店契約を締結 株式会社ジールアソシエイツ(本社:東京都中央区 代表取締役:永門 大輔)は、愛知国際会議展示場株式会社(本社:愛知県常滑市 代表取締役:モルガン ショドゥレール)と、オンラインイベントツール「zone.-unbelievable-(ゾーンアンビリーバブル)」に関して、販売代理店契約を締結いたしました。本契約により当社は、愛知国際会議展示場株式会社を通じて、Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)において催事を開催する主催者様に対し、オンラインでの実施を併用したハイブリッド形式の開催支援を行ってまいります。 「zone.-unbelievable-(ゾーンアンビリーバブル)」Webサイト:https://zone-event.jp/zone/ 新型コロナウイルス感染症の影響によるオンラインイベント需要の高まりを受け、当社は本サービスの企画開発を行い、2020年5月に「zone.-unbelievable-(ゾーンアンビリーバブル)」をリリースいたしました。発売以降もアップデートを続け、ウェビナー配信システムやビデオミーティングツール、360°3D空間撮影・閲覧サービス等の新たな開発や、株式会社ロゼッタの超高精度自動翻訳ツールやSansan株式会社のスマートエントリーシステム等との機能連携を行なってまいりました。現在はMAツールとの連携を進めており、オンラインイベントの主催者様の更なる支援ができるよう利便性向上と品質改善への努力を続けております。 本ツールは主催者側の管理画面および利用者側の体験画面が大変シンプルであることが特徴で、幅広い年代の方々に簡単にご利用いただけます。また高精度AI自動翻訳の開発を行う株式会社ロゼッタの自動翻訳機能を搭載しており、商談・配信時において、海外の主催者・来場者と容易にコミュニケーションが取れる、多言語対応のイベントを開催することが可能です。 両社は今後、販売代理店契約の締結を通して、ハイブリッド開催を検討されている主催者様、あるいはリアル開催を検討されている主催者様にとって将来のリスクに対する備えとして、本サービスを提案するとともに、イベント開催効果の拡大に貢献してまいります。 本リリースはPR TIMESにも掲載しました:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000058445.html ■Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)について Aichi Sky Expoは、6つの展示ホール、18室の会議室、約33,000㎡の屋外多目的利用地、3447台の駐車場などを備えた超大型施設です。国内最大級の展示面積60,000㎡の広さ、国内唯一の常設保税展示場という強みを生かし、国内外の大規模なイベントを誘致しています。 Aichi Sky Expoは展示会としての利用はもとより、コンサート・フェス、式典、学会、ゲームイベント、握手会、スポーツイベント、eスポーツイベント、試乗会、撮影会、また、コロナ禍において、ソーシャルディスタンスを配慮した試験会場としてなど、多岐に亘る形態で利用されております。今後も展示場としての可能性を切り拓いていきます。 Aichi Sky Expoを運営する愛知国際会議展示場株式会社は、主催者様の催事開催を支援する各種サポート体制を完備しております。ご利用目的に応じた最適なソリューションをご提供するとともに、期待を超えるおもてなしをご提案します。 <主な提供サービス> ・オンラインイベントツール ・装飾施工 ・備品レンタル ・イベント警備 ・運営スタッフ ・通信回線サービス ・清掃・廃棄物処理 ・シャトルバス ・物流オペレーション ■愛知国際会議展示場株式会社について 会社名:愛知国際会議展示場株式会社 本社所在地:愛知県常滑市セントレア5丁目10番1号 代表取締役:モルガン ショドゥレール 設立:2018年1月19日 事業内容:コンセッション契約による展示場運営・管理、自主イベント開催事業、官民連携による需要創造推進業務 Webサイト:https://www.aichiskyexpo.com/ Facebook:https://www.facebook.com/Aichi.Sky.Expo/ Twitter:https://twitter.com/Aichi_Sky_Expo Instagram:https://www.instagram.com/aichi_sky_expo_official/ YouTube:https://www.youtube.com/channel/UClrlDg6oZw3d1zR_TNTRrdw Linkedin:https://www.linkedin.com/company/aichi-sky-expo/ ■zone.-unbelievable-(ゾーンアンビリーバブル)について オンライン開催であってもイベントはイベント。 多くのイベントをプロデュースしてきた当社だからこそ設計できる、時間軸に沿って流れるようなオンラインイベントを実現します。 様々な規模のオンラインイベントに対応します。 ※「ゾーンアンビリーバブル」は株式会社ジールアソシエイツの登録商標です。(登録商標第6476043号) <主な機能> ・超高精度自動翻訳ツールによる多言語対応(株式会社ロゼッタとの機能連携) ・「Smart Entry by Eight オンライン名刺」(Sansan株式会社との機能連携) ・WebAR配信ソリューション(長谷川工業株式会社との共同開発) ・ウェビナー配信ツール「zone. Webinar」との連携 ・オンラインビデオミーティングツール「すもとく」との連携 ・360°3D空間撮影・閲覧サービス「ZEAL Cutting Edge 3D」との連携 ・MAツールとの連携 ※開発中 ・外部商談/配信ツールとの連携 <概要> 商品名称:zone.-unbelievable-(ゾーンアンビリーバブル) Webサイト:https://zone-event.jp/zone/ 企画・開発:株式会社ジールアソシエイツ ■株式会社ジールアソシエイツについて 会社名:株式会社ジールアソシエイツ 本社所在地:東京都中央区築地2-3-4 築地第1長岡ビル2F 代表取締役:永門 大輔 設立:2004年1月23日 事業内容:”体験”に特化したハイブリッド(リアル&デジタル)プロモーションの企画・制作・開発 <リアルエクスペリエンス> ・イベントプロモーション ・展示会出展 ・プライベートショー / カンファレンス ・商環境 ・デジタルコンテンツ <デジタルエクスペリエンス> ・自社運営サービス:zone.-unbelievable-(ゾーンアンビリーバブル)、zone. Webinar、すもとく powered by zone.、ZEAL Cutting EDGE 3D ・オンラインプロモーション開発 Webサイト:https://www.zeal-as.co.jp Facebook:https://www.facebook.com/ZEALAssociates Twitter:https://twitter.com/zealas Instagram:https://www.instagram.com/zealassociate_corp/ YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCtR2D0FWxTEdtmtAWJCTDYQ 【本件リリースに関するお問い合わせ先】 株式会社ジールアソシエイツ 営業本部 東京都中央区築地2-3-4 築地第1長岡ビル2F お問い合わせフォーム:https://zeal-as.co.jp/contact/

【ミライデザイン研究所】「庵野秀明展」から学ぶ、来場者を夢中にさせる体験設計

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営業本部 プランナーのTです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。 今回は、現在、新国立美術館にて絶賛開催中である、「庵野秀明展」についてお送りいたします。 みなさんは庵野秀明という名を聞いて、どんな作品を思い浮かべますでしょうか。 彼は、特撮怪獣映画として、第40回日本アカデミー賞にて7冠を制した「シン・ゴジラ」や、 世界中に熱狂的なファンを持つアニメ「ヱヴァンゲリヲン」シリーズなど、輝かしい・衝撃的な映像作品の数々を世に生み出してきました。 今展覧会では、「庵野秀明をつくったもの」「庵野秀明がつくったもの」「そしてこれからつくるもの」の3つのコンセプトにて 時系列で空間構成されており、それらの映像作品に関する、数々の貴重な原画や画コンテ、ミニチュア模型、完成した映像など 膨大な量の制作資料の展示がメインとなっています。 これだけの膨大な情報量の中を歩いてみましたが、世界観に没頭し時間が経つのがあっという間に感じました。 そこで、このような大規模な展覧会などにおいて、どのように来場者をうまく誘導しつつ、飽きさせない空間にするかのヒントを この庵野秀明展から探し出し、その中から2つの視点をピックアップしてご紹介したいと思います。 1.同じ展示物に対して「魅せ方」をいくつ用意できるか 例えば、「第1章 原点、或いは呪縛」のエリアでは、 庵野氏が幼少期に影響を受けたアニメ・特撮のフィギュアや模型が所狭しと並べられていました。 これらは、美しく整列する美術館のような展示、というよりも、それぞれの特性に合わせ、模型を高さ違いに置いたり、吊り下げたり、 360度模型を見渡せるようにしたりと1つのエリアの中でも多種類の展示方法が活用されていました。 また、模型のほとんどはカバーがかけられておらず、ギリギリまで接近して見ることができるのも 臨場感や没入感を与える方法だと考えられます。 貴重な資料類も種類によって適切な展示方法が使い分けされていました。 画コンテや設定資料などは額に入れられて壁に展示、 膨大なメモや脚本などの厚みのあるものは平置きでそのリアルな物量感を訴求しています。 また、写真やポスターはパネルで大小分けて貼られているものもあったり、ターポリンで大きく出力し存在感を出させるものもあったりと、 平面物だからこそ単調にさせないためにもメリハリのある展示をすることが必要だと言えます。 さらに、庵野秀明展ということで、もちろん映像作品も多く展示されています。 小さなモニターで映し出されたものもあれば、縦3m×横15mの巨大LEDスクリーンを用いたもの、座ってゆっくり鑑賞できるスペース、 画コンテと見比べながら見られるコーナー、天井高までプロジェクターによって高く投影されたものなど、 1つの「映像」に対しての観る方法がいくつも用意されていました。 このように、同じ種類の展示物に関しての魅せ方を多く出すことで、来場者を長い時間飽きさせずに夢中にさせることが可能になります。 視点や見栄え、動作が単調であると、集中力の低下や、印象に残らないなどの原因となり、 どんなに中身が素晴らしい展示品でも魅力が伝わらないこととなってしまうのです。 常に、この展示方法で本当に良いのか、他に最適な方法があるのではないかと考えることが重要になります。 2.人の行動を予測し、さりげなく誘導・制限する 人の行動に無理矢理に制限をかけて誘導をするというのは難しいことです。 いかにストレスなく「さりげなく」人を動かすことができるかが、大きな展覧会やイベントでは鍵になってくると考えられます。 例えば、この庵野秀明展では、よくある「順路」の矢印看板の案内がなくても、大勢の人が道に沿ってスルスルと動いていました。 そして、道に迷ったり、逆走してしまったりしてしまう人もほとんどいなかったように思います。 また、人が詰まって待たされるなんてことも特にありませんでした。 もちろん、コロナ対策で人数を制限していたこともありますが、それ以外にもきちんと空間計画されていた結果だと思われます。 その方法とは、十分な道幅で緩やかに進む強制動線にされていたということです。 狭く複雑な道幅や曲がる角が多いと、移動のためだけの時間や何もない時間が多いと感じる要因となり、 強制されている印象が強くなってしまいます。 また、今回は空間のきっちりとした区切りが少なく、 「隣のエリアから残酷な天使のテーゼが聴こえる!」、「投影された映像が少し見えるけどなんだろう?」などの、 次に早く進んでみたいという気持ちを昂らせる要素も、人をそちらに無意識に動かす要因になっていたと考えられます。 [caption id="attachment_7026" align="aligncenter" width="665"] ▲奥の別のエリアまでの区切りが少なく、動線も広く視野が開ける[/caption] また、人にさせたくないことを、さりげなく制限することも時には必要になってきます。 例えば、この庵野秀明展では映像作品が多く展示されていますがそれらは撮影が禁止になっています。 ほかの展示品は殆どが撮影可能のため、来場者は混同しかねません。 よくある、撮影禁止のマークも本当に毎回確認しているかと言われると、ほとんどの人が気にしていないのではないでしょうか。 そこで、モニターの位置を人の視点より高く配置することで自然と写真を撮影しにくくするようにしています。 そうすることで、モニター下に対比のために展示されている画コンテなどはしっかりと記録ができつつ、 映像はうまく写らないようにすることが可能になります。 モニターも入れて全面を写すには後ろにしっかりと下がるか、カメラの角度を付けなくてはならず、撮りにくいと感じさせることができ、 撮影禁止のマークに気づく機会が増えるとも考えられます。 [caption id="attachment_7027" align="aligncenter" width="665"] ▲上にモニターがあり、実際の映像が流れている。[/caption] 前に述べたように、人の動きを予測し、それに対する解決方法をいかに簡潔にするかが重要になってきます。 今回のように道幅を広くとって緩やかにすることや、撮影禁止のものを高く掲出するなど、 意外と簡単な方法が解決に繋がっているケースが多いです。 案内板や注意喚起以外にもっと適切な方法がないかを考えることが、自然と意匠的な造作に繋がったり、 スタッフ・来場者のお互いにストレスのない運営に繋がったりと、様々な利点を生むことができるのではないでしょうか。 【まとめ:隠れた心の声を読み取る力】 今回の展覧会から学んだことはまとめると以下の2点です。 「どう来場者をうまく誘導しつつ、飽きさせない空間にするか」 → 1.魅せ方を多く用意することで飽きさせず、夢中にさせ続ける 2.さりげなく誘導・制限することで、快適な体験空間になる 今回の庵野秀明展の様に、来場者が見て回る形式の展覧会においては以上の2点を常に抑えておかねばなりません。 そして、十分な体験設計において、最も重要視すべきことは、体験者(来場者)の気持ちです。 人の心情を中心に考えること、そのためには、声には出さないけれども、 実は来場者が思っているであろうことを読み取る力が重要だということを再確認させられました。 人が当たり前にさりげなく行動していることや、面白いと思っていること、快適だと感じていることには、 なにかしらの理由や工夫が凝らされています。 そうした日常のちょっとした隠れたヒントをよく観察し、提供することが、より真髄をついたクリエイティブになるのではないでしょうか。

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