【ミライデザイン研究所】素材で七色の変化をもたらす没入体験 -後編-

インサイドジール 日本語記事

クリエーティブ局 デザイナーのSです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。 前編、中編に引き続き、東京都立川市のPLAY!MUSEUMで開催されていた「コジコジ万博」についてお送りいたします。 今回は体験を通してメルヘンな世界へと引き込む要素を2つの視点から考察しており、 1.誰もが楽しめる企画・会場構成 2.アナログとデジタルの融合で新たな体験価値を与える のうち、後編では2.の続きと、まとめをお送りします。
 2.アナログとデジタルの融合で新たな体験価値を与える 最後に紹介するのは「⑤ディスコ☆ポケットカウボーイ」です。 アニメのエンディング曲である「ポケットカウボーイ」が流れており、 アニメ映像にも出てくるお立ち台、テクノポップな音楽、ミラーボールの光が反射する空間は まるでディスコのような雰囲気をもたらしてくれます。 また3つのプロジェクターから構成される最新技術の映像ビジョン、そして後ろのスペースには1900年代のカラーテレビが並んでおり、 どちらもエンディング映像が映し出されています。 アナログで当時を懐かしむ人もいれば、最新技術でコジコジ万博を堪能する人もいて、楽しみ方は人それぞれです。 個人的にはそれらが同じエリアに配置されていることで、 アナログを大迫力で楽しみ時間軸を行き来するような新しい不思議な感覚になりました。 ここからも最新技術とアナログを組み合わせて、また違ったアプローチで新たな感覚を生み出しているのがわかるかと思います。 同時に長年愛され続けてきたコジコジの歴史をこのエリアで堪能できるのは、 コアファンの心を強く引き寄せ、ここでしか味わえない非現実的な体験になってきます。 以上3エリアをもとにアナログとデジタルによって体験価値を高める要素を紹介しましたが、 巡回していくうちに徐々に映像のサイズが大きくなっていく印象を受けました。 進むにつれ技術の進化を感じるとともに、受け取る印象も変化していきます。 素材によって適正なアプローチ方法があり、企画全体を見通しながら構成していくことが重要であると思います。 他にも原画でのストーリー鑑賞やオリジナルグッズ、期間限定のミュージアムカフェなど、 ここPLAY!MUSEUMでしか味わうことのできない体験が多く用意されていました。 まとめ 長年に渡り愛され続けてきたコジコジだからこそ、今ここPLAY!MUSEUMでしかできない体験がありました。 舞台の経験を経て得たアプローチ方法であるダンボールなどの素材を使用して、 あえてアナログ感を出すことで不思議なコジコジの世界観へと没入させています。 また、アナログとデジタルを融合させることで今まで見たことのない体験方法を提供します。 人々の記憶に残し、より深くまで没入体験してもらうには、このような双方のアプローチが効果的であると感じることできました。 これらの体験方法はコジコジ万博のみならず転用することができます。 同時にそのアプローチによってどのような効果を生み出すのか、来場者の気持ちをどう変化させていくのかを深くまで考察することで、 オリジナル性のある新しい体験方法が生まれてきます。 テクノロジーの進化が急速に行われる現代だからこそ、それらの使い所を見極めることが重要です。 これまでのアプローチ方法と掛け合わせることで、来場者が本当に求めているものに寄り添うことができるのだと改めて感じます。 企画展示「コジコジ万博」 (PLAY! Museum):https://play2020.jp/article/cojicoji/

【ミライデザイン研究所】素材で七色の変化をもたらす没入体験 -中編-

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クリエーティブ局 デザイナーのSです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。 前編に引き続き、東京都立川市のPLAY!MUSEUMで開催中の「コジコジ万博」についてお送りいたします。 今回は体験を通してメルヘンな世界へと引き込む要素を2つの視点から考察していますが、 1.誰もが楽しめる企画・会場構成 2.アナログとデジタルの融合で新たな体験価値を与える のうち、中編では2.についてお送りします。
 2.アナログとデジタルの融合で新たな体験価値を与える 全体の構成を知っていただいたところで、細かい造作にも目を向けていきたいと思います。 先ほども触れた「世界観の表現」は来場者の心を掴むために最も重要な部分になってきます。 昨今ではプロジェクションマッピングなどで映像を大胆に投影することに注目が浴びていますが、 それだけでは似たような空間が生まれてしまい体験価値を短調にさせてしまいます。 そこで本展ではアナログとデジタルの技術を上手く活用することで、PLAY!MUSEUMならではの ここでしか味わうことのできない空間づくりを3つのアリアを紹介していきながら深掘りしていきます。 まずは入り口です。独特な造作と色使いからなるゲートは通れる高さが150cm程で、大人の胸元くらいしかありません。 子供からは大きな門を潜るような感覚で、大人は少しかがんで通った後、その先の広々とした空間と相まってより一層没入感を高めます。 一度目線を落として誘導させるのは、わざと入り口を狭くしている隠れ家的カフェなどでも使われる有効な手法だそうです。 そうすることで目線に振り幅が生まれ、空間にダイナミックさをもたらすことができます。 これらが本展でも感じ取れ、次のエリア②からは大きな木やもこもこの雲に囲まれた緑の道が存分に広がってきます。 ここで注目したいのが素材です。主に紙や段ボール、発泡スチロールなどから構成されていて、 凹凸をつけてキャラクターや名シーン、セリフを会場全体に細かく配置していくことで独特な世界観が広がっていました。 ここでも目線の移動が頻繁に行われるように工夫されていて、歩みを進めるたびにキョロキョロと見渡してしまいます。 そこはまるでコジコジたちが暮らす不思議な世界観「メルヘンの国」に入り込んだような感覚を与えます。 しかしその中でも一番際立っていたのが、プロジェクションマッピングで投影された主人公コジコジです。 大きな顔で構成されたコジコジにはインパクトがあり、表情が変わることで次のエリアにワクワク感を与えてくれます。 この時、一部分を映像で表現することはとても有効だと感じました。 もしエリア全体が段ボールなどの素材だけで構成されていたら、来場者にチープな印象を与えていたかもしれません。 素材に振り幅を与えることで空間に動きをもたらしてくれる、そのような使い方が映像表現でできるのではないでしょうか。 また「⑥モヤモヤトンネル」から先も、素材を上手く活かした手法で来場者の心を掴んでいました。 明るい道を歩いて鑑賞する所と、一変して暗く座ってじっくりと堪能する所に分かれています。 作中に出てくる登場人物の「モヤモヤな感情」を一体どのように空間に落とし込んで体感させているのでしょうか。 まず歩くゾーンでは白い布地で覆われたトンネルに映像がマッピングされており、 風でひらひらと布が揺れ映像が歪んで見えるものとなっています。 徐々にアップになっていくコミック調の映像が布地とともに動くことで、 それはまさにモヤモヤ感とメルヘンな世界観を存分に味合わせてくれるものとなっていました。 トンネルを抜けると野外シネマをイメージされた、座って鑑賞するものへと一変します。 ここでも複数ある雲の形にだけ映像を投影することで、来場者はどこから鑑賞するかを選択することができます。 それは映像から情報を全て受け取るのではなく、自らが鑑賞しているという感情をもたらすことができるので、 体感的に物語を知っていくことに繋がってきます。 (後編に続きます) 企画展示「コジコジ万博」 (PLAY! Museum):https://play2020.jp/article/cojicoji/

【ミライデザイン研究所】素材で七色の変化をもたらす没入体験 -前編-

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クリエーティブ局 デザイナーのSです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。 今回は、東京都立川市のPLAY!MUSEUMで開催中の「コジコジ万博」についてお送りいたします。 「コジコジ」は大人もドキッとするような言葉やナンセンスなギャグが人気の作品です。 ――コジコジは生まれた時からずーっと 将来もコジコジはコジコジだよ ――遊んで食べて寝てるだけだよ なんで悪いの 年齢も性別も謎だらけな生き物である主人公のコジコジとその仲間たちとの毎日には、 子供も大人も関係なく心を掴む不思議な力があると感じます。 1997年にアニメ放送が始まり、2019年には舞台などを通して様々なアプローチで長年愛され続けてきたコジコジですが、 本展では、そんなコジコジたちが暮らす「メルヘンの国」のインスタレーション、漫画やイラストの原画、オリジナル映像を通して、 コジコジの世界観を体感的に知っていくものとなっています。 体験を通してメルヘンな世界へと引き込む要素を2つの視点から考察します。 1.誰もが楽しめる企画・会場構成 2.アナログとデジタルの融合で新たな体験価値を与える 1.誰もが楽しめる企画・会場構成 PLAY!MUSEUMでは過去の企画展からも推測されるように、 体験型を絡めた企画内容でターゲットは大人から子供まで幅広いことが予測されます。 今回訪れた際にも、大半が家族で来場されていました。 さらには1997年にアニメ放送され、古くから愛されるコジコジにおいて 若者や子供の中にはそもそもコジコジを知らない人たちもいます。 ライト層とコア層の双方にも配慮しなくてはいけません。 そんな幅広いターゲットでも楽しむことができるように、会場構成に工夫が見られました。 本展は大きく8つのエリアで構成されています。 まずはコジコジを知らない人に対して少しでも作品を理解してもらうことが重要です。 ①と②においては作中の「世界観の表現」「キャラクター紹介」となっていて、ここは最初に必ず通るエリアです。 そこから先は3方向に分かれており、③~⑧のエリアは自由に回ることができるようになっています。 強制的な動線を初めの作品紹介エリアに設けることで、コジコジを見たことがない人は1から作品を知ることができ、 以前から知っている人からしても、作品を思い出し高揚感を一気に高めることができるのです。 そして世界観とキャラクターを知ってもらった後は、 ここPLAY!MUSEUMでしか味わえない手法で物語を堪能していくという流れになっています。 このように単純に来場者の動線を決めてしまうのではなく、「まずは作品を理解してほしい」などの明確な意図を持つことで 幅広い層の来場者にアプローチし、誰もが世界観を存分に楽しませることに繋がっていくのではないでしょうか。 (中編に続きます) 企画展示「コジコジ万博」 (PLAY! Museum):https://play2020.jp/article/cojicoji/