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【ミライデザイン研究所】2023年春の特別企画「EuroShop2023視察レポート」【考察編】

インサイドジール

みなさん、こんにちは! 2023年春の特別企画、「EuroShop2023視察レポート」をお送りいたします。 今回は考察編として実際に見て回った際に気づいたことや、今後我々も活かしていきたいアイデアをご紹介いたします。 ユーロショップの準備編は https://zeal-as.co.jp/euroshop2023-1/ をご覧ください。 【日本の展示会では見られない、壮大な造り】 ユーロショップだけではなく、海外の展示会は日本と出展規定(出展する際のブース造作に関するルール)が異なるため、全くと言ってもいいほどブースの表現方法が異なります。日本よりも非常にこだわり抜いた造形や素材を用いていたり、会場の天井から上物造作を吊っていたりと自由自在に空間表現がされているのが特長です。 〇吊り造作 上空に造作を設置できることで柱がなく、開放感あふれる空間になり来場者が入りやすくなっています。柱を落とす位置に左右されず造形も自由に組み合わせることが可能です。 〇ファブリック+システム部材 日本でも最近環境配慮を意識したブース制作が求められることが増加してきました。 ユーロショップでは、環境に配慮し産業廃棄物を極力減らすことを意識しており、木工造作よりもファブリック素材とシステム部材を組み合わせたブースが主流になっているのが日本と異なる点です。 「SCANBLUE社」 下記3社はシステム部材を取り扱っている企業になります。自社ブース自体が商材になっております。 「SYMA社」 このブースは二階建ての構造になっており、他社のブースよりもかなり高さが出ていて 目立っていました。 吊り構造や、外部からの柱の支えなしで、自立して8mの高さがあるとのことです。 中でスクリーンを用いて大勢に対してプレゼンができるエリアがありました。 「OCTANORM社」 日本でもよく使用されるオクタ部材で全て構成されたブースになっています。 (参考: https://www.octanorm.co.jp/ユーロショップ2023出展/) 「Aluvision社」 まだ設立20周年の若い企業ですが、最先端なシステム部材で、デザイン性の高いブースが製作できるのが強みです。 【こだわりの素材表現】 〇素材でムードをつくる さらに素材を用いて意匠的に活用されている例がありました。 まずは「L&S社」のブースになります。 上記のファブリック表現以外にも、より意匠的に使用されているブースになります。 シースルーな透け感のある布を重ね、中に展示してある照明器具の光が淡く映り込むことで、柔らかい雰囲気を醸し出しています。 「quattrobi社」 周りをメッシュ生地で囲ったブースになっています。 空間のブラックを踏襲した色になっていますが、重い印象なくスタイリッシュにおさめられています。 ぱっと見ではほぼ壁を感じず圧迫感なくも、ブースの外と内をきちんと分けるように設計されているブースが日本よりも多いです。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/Awards/EuroShop/peopleschoice-vote.asp) 「BEST MANNEQUIN社」では壁面を左官でおおっており、落ち着いたシックな空間を作ることで自社製品を活用するシーンやブランドイメージをうまく訴求していました。 ○環境配慮をアピールした表現 ステナブルを意識し、それをブースで表現するケースも多く見受けられました。 中でも「ITAB社」のブースは本物の植栽と、ボイド菅(コンクリートを打設する際に用いる紙管)で構成するという手法を用いていました。 (参考: https://itab.com) (参考: https://www.exhibitoronline.com/awards/euroShop/peopleschoice-vote.asp?fbclid=IwAR0COw5HuMOenKDeYkfjWCrriQs_fQXks7AYJQ3Nn0IMPb0weRcSZxq83sM) 素材の質感や色味を利用し、そこにグリーンを合わせることで環境配慮を印象付けるデザインで、上から吊るされている照明もロープ素材をうまく使い、全体のトーンに合わせながらもアイコニックな存在になっています。 ○異素材を組み合わせる 素材感の異なるものを組み合わせることで、空間が単調にならず表現幅もグッと広がります。 例えば「gokcelik社」はエキスパンドメタルと石膏シートを組み合わせて、スタイリッシュなトーンで構成されているブースになっていました。 参考: https://enbursa.com/gokcelik-en-yeni-urunlerini-euroshop2023-fuarinda-tanitti.html 「grottini社」 こちらも白のエキスパンドと植栽を組み合わせ、サステナブルさと先進さを表現できているブースになります。 (参考: https://4urspace.com/blog/2023/02/28/grottini-a-new-co-creative-technological-and-sustainable-era-starts-at-euroshop-2023/) 【カラー・グラフィックで人を引き寄せる】 日本ではブースにて製品説明用のグラフィックを作成するのが主流なため、必然と情報量が多く感じることがあります。 しかし、ユーロショップには、全世界の各地からさまざまな言語を使用する来場者が集まるため、言葉を交わさなくても自然とブース内に引き込まれるような「ブースデザインで人を引き寄せる」意識が強いです。 そこでポイントになってくるのが、カラーの使い方やグラフィックでの表現になってくると思われます。 ○圧倒的なカラー配色で目立たせる 「Hans Boodt Mannequins B.V.社」では、一面がパープルで構成されており、どのブースよりも世界観が作り込まれています。 外観にはコンテナの外壁もあり 一切中の様子が見えないようになっており、中に入ってみたくなる要素のひとつになっています。 (参考: https://www.hansboodt-maniquies.es/blog/2023/03/08/the-digital-revolution/) 内観は単管や透明素材など異素材同士をうまく組み合わせています。 ○グラフィカルな空間でワクワクさせる 「Imoon社」はイタリアにて照明設計を行なっており、各製品での照明を用いた見せ方をに紹介していました。ブース全体がカラフルかつグラフィカルなため、つい入ってみたくなる目立つブースです。 【コミュニケーションをとる、に特化させた構成】 ユーロショップでのブースで気づいたことがあります。 それが、「ブース内での商談スペースが非常に充実している」、そして「ステージ・プレゼンテーション用の造作がない」ということです。 また、会話のきっかけになり、かつ記憶に残すようなキャッチーな体験施策も用いられていました。 ○商談は飲食しながらゆったりと、が主流 どのブースもほぼ必ず商談のエリアがあります。そこで飲食を提供し、来場者をおもてなししながら会話するのが基本になっています。日本ではほとんど見られない雰囲気です。 (ITAB社) ○ブース全体がステージ!どこでもゲリラでデモンストレーション 「duo社」 人の手で簡単に組み立てられるシステムのデモンストレーションが行われていました。 組み立てにかかる時間を可視化してベストタイムを出せるかドキドキさせる演出にもなっています。 ブースの空いているスペースのその場で実演するゲリラ的演出で、 ステージを行なっていない際は製品展示ができるエリアになっています。 ○企業紹介を“体験”で伝える ものを使って記憶に残る体験を通して紹介を行なっていた企業を2社ピックします。 「Umdasch社」 (参考: https://www.umdasch.com/en/n/224-sustainable-togetherthe-umdasch-trade-fair-experie) ブースに入るとプカプカと水に浮かぶアヒルが出迎えてくれます。 各アヒルには、この企業のサービスや実績紹介などの情報がRFIDタグによって埋め込まれており、来場者はこのアヒルを釣ってモニターのセンサにかざすと映像にて紹介を受けることができるという、かわいらしくも記憶に残る体験です。 「BRACE GROUP社」 (参考: https://brace-group.com) 全体を大きなキッチンとし、自社のサービスを調味料、アウトプットや実績を料理に例えている、ワクワクしてつい話を聞きたくなるコンセプトです。 調味料缶(=自社サービス)裏のコードをフライパンに読み込ませると、お皿にあるディスプレイに盛り付けられる(=詳細説明)という仕組みです。 【総括】 2日間、あっという間でしたが、全て回りきることができず残念ですが、 世界での最大規模の展示会ということもあり、かなりボリューミーな展示になっておりました。コロナ禍以降の技術発展によりデジタル商材を大きく打ち出している企業がやはり多かったです。 ブースの装飾に関しては以下のような所感を得ました。 ○環境配慮への意識が高い まず、感じたのがファブリック+システム部材のブースが多いということです。 日本では木工造作がまだまだ主流でありますが、ドイツでは、ほとんど見受けられませんでした。 ドイツは環境保護意識が非常に高い国であり、展示会やイベントにおいても環境に配慮した取り組みが積極的に行われています。そのため、再利用可能な素材の使用が推奨され、一般的には環境に優しい素材の使用が奨励される傾向が高くなっていました。 ユーロショップでは、来場者が印象に残ったブースに投票するアワードがありますが、 最も多く表を集めたのが「ITAB社」と、やはりサステナブルなブースに注目が集まるとわかります。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/news/article.asp?ID=23069) ○空間の力で惹きつけ、コミュニケーションを活性化させる施策 さらに、情報掲出は文字情報で訴求するよりも、ビジュアル・映像で魅せる手法が主に使われていました。日本とは異なり、情報を提供することよりも会話を生み出すことを重視するため、商談のエリアもカフェやレストランのようなおもてなし空間がほとんどでした。 当日立つスタッフの説明のしやすさも大切ですが、何よりも来場者がどうやったら自分たちの企業の世界観に惹かれて訪れてくれるかを意識し どんなに閉鎖的でも中に入ってみようと思うパワフルなブースデザインになっていました。 今後日本でのイベント・展示会デザインにおいて、空間の持つパワーをうまく生かすために、造作のアイデアの引き出しを増やしていくことを続けていきたいと思います。 そして、どうしても決められた枠に留まってしまいがちですが、新たなデザインにチャレンジしていく姿勢を忘れないようにしていきたいです。 次回開催は2026年の3年後になります。 3年後はどんな展示会になっているのか、ますます期待が高まりますね。 では、次のレポートでお会いしましょう! Tschüss!

【ミライデザイン研究所】2023年春の特別企画「EuroShop2023視察レポート」【予習編】

インサイドジール

みなさん、こんにちは! 2023年春の特別企画、「EuroShop2023視察レポート」をお送りいたします。 今回は考察編として実際に見て回った際に気づいたことや、今後我々も活かしていきたいアイデアをご紹介いたします。 ユーロショップの準備編は https://zeal-as.co.jp/euroshop2023-1/ をご覧ください。 【日本の展示会では見られない、壮大な造り】 ユーロショップだけではなく、海外の展示会は日本と出展規定(出展する際のブース造作に関するルール)が異なるため、全くと言ってもいいほどブースの表現方法が異なります。日本よりも非常にこだわり抜いた造形や素材を用いていたり、会場の天井から上物造作を吊っていたりと自由自在に空間表現がされているのが特長です。 〇吊り造作 上空に造作を設置できることで柱がなく、開放感あふれる空間になり来場者が入りやすくなっています。柱を落とす位置に左右されず造形も自由に組み合わせることが可能です。 〇ファブリック+システム部材 日本でも最近環境配慮を意識したブース制作が求められることが増加してきました。 ユーロショップでは、環境に配慮し産業廃棄物を極力減らすことを意識しており、木工造作よりもファブリック素材とシステム部材を組み合わせたブースが主流になっているのが日本と異なる点です。 「SCANBLUE社」 下記3社はシステム部材を取り扱っている企業になります。自社ブース自体が商材になっております。 「SYMA社」 このブースは二階建ての構造になっており、他社のブースよりもかなり高さが出ていて 目立っていました。 吊り構造や、外部からの柱の支えなしで、自立して8mの高さがあるとのことです。 中でスクリーンを用いて大勢に対してプレゼンができるエリアがありました。 「OCTANORM社」 日本でもよく使用されるオクタ部材で全て構成されたブースになっています。 (参考: https://www.octanorm.co.jp/ユーロショップ2023出展/) 「Aluvision社」 まだ設立20周年の若い企業ですが、最先端なシステム部材で、デザイン性の高いブースが製作できるのが強みです。 【こだわりの素材表現】 〇素材でムードをつくる さらに素材を用いて意匠的に活用されている例がありました。 まずは「L&S社」のブースになります。 上記のファブリック表現以外にも、より意匠的に使用されているブースになります。 シースルーな透け感のある布を重ね、中に展示してある照明器具の光が淡く映り込むことで、柔らかい雰囲気を醸し出しています。 「quattrobi社」 周りをメッシュ生地で囲ったブースになっています。 空間のブラックを踏襲した色になっていますが、重い印象なくスタイリッシュにおさめられています。 ぱっと見ではほぼ壁を感じず圧迫感なくも、ブースの外と内をきちんと分けるように設計されているブースが日本よりも多いです。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/Awards/EuroShop/peopleschoice-vote.asp) 「BEST MANNEQUIN社」では壁面を左官でおおっており、落ち着いたシックな空間を作ることで自社製品を活用するシーンやブランドイメージをうまく訴求していました。 ○環境配慮をアピールした表現 ステナブルを意識し、それをブースで表現するケースも多く見受けられました。 中でも「ITAB社」のブースは本物の植栽と、ボイド菅(コンクリートを打設する際に用いる紙管)で構成するという手法を用いていました。 (参考: https://itab.com) (参考: https://www.exhibitoronline.com/awards/euroShop/peopleschoice-vote.asp?fbclid=IwAR0COw5HuMOenKDeYkfjWCrriQs_fQXks7AYJQ3Nn0IMPb0weRcSZxq83sM) 素材の質感や色味を利用し、そこにグリーンを合わせることで環境配慮を印象付けるデザインで、上から吊るされている照明もロープ素材をうまく使い、全体のトーンに合わせながらもアイコニックな存在になっています。 ○異素材を組み合わせる 素材感の異なるものを組み合わせることで、空間が単調にならず表現幅もグッと広がります。 例えば「gokcelik社」はエキスパンドメタルと石膏シートを組み合わせて、スタイリッシュなトーンで構成されているブースになっていました。 参考: https://enbursa.com/gokcelik-en-yeni-urunlerini-euroshop2023-fuarinda-tanitti.html 「grottini社」 こちらも白のエキスパンドと植栽を組み合わせ、サステナブルさと先進さを表現できているブースになります。 (参考: https://4urspace.com/blog/2023/02/28/grottini-a-new-co-creative-technological-and-sustainable-era-starts-at-euroshop-2023/) 【カラー・グラフィックで人を引き寄せる】 日本ではブースにて製品説明用のグラフィックを作成するのが主流なため、必然と情報量が多く感じることがあります。 しかし、ユーロショップには、全世界の各地からさまざまな言語を使用する来場者が集まるため、言葉を交わさなくても自然とブース内に引き込まれるような「ブースデザインで人を引き寄せる」意識が強いです。 そこでポイントになってくるのが、カラーの使い方やグラフィックでの表現になってくると思われます。 ○圧倒的なカラー配色で目立たせる 「Hans Boodt Mannequins B.V.社」では、一面がパープルで構成されており、どのブースよりも世界観が作り込まれています。 外観にはコンテナの外壁もあり 一切中の様子が見えないようになっており、中に入ってみたくなる要素のひとつになっています。 (参考: https://www.hansboodt-maniquies.es/blog/2023/03/08/the-digital-revolution/) 内観は単管や透明素材など異素材同士をうまく組み合わせています。 ○グラフィカルな空間でワクワクさせる 「Imoon社」はイタリアにて照明設計を行なっており、各製品での照明を用いた見せ方をに紹介していました。ブース全体がカラフルかつグラフィカルなため、つい入ってみたくなる目立つブースです。 【コミュニケーションをとる、に特化させた構成】 ユーロショップでのブースで気づいたことがあります。 それが、「ブース内での商談スペースが非常に充実している」、そして「ステージ・プレゼンテーション用の造作がない」ということです。 また、会話のきっかけになり、かつ記憶に残すようなキャッチーな体験施策も用いられていました。 ○商談は飲食しながらゆったりと、が主流 どのブースもほぼ必ず商談のエリアがあります。そこで飲食を提供し、来場者をおもてなししながら会話するのが基本になっています。日本ではほとんど見られない雰囲気です。 (ITAB社) ○ブース全体がステージ!どこでもゲリラでデモンストレーション 「duo社」 人の手で簡単に組み立てられるシステムのデモンストレーションが行われていました。 組み立てにかかる時間を可視化してベストタイムを出せるかドキドキさせる演出にもなっています。 ブースの空いているスペースのその場で実演するゲリラ的演出で、 ステージを行なっていない際は製品展示ができるエリアになっています。 ○企業紹介を“体験”で伝える ものを使って記憶に残る体験を通して紹介を行なっていた企業を2社ピックします。 「Umdasch社」 (参考: https://www.umdasch.com/en/n/224-sustainable-togetherthe-umdasch-trade-fair-experie) ブースに入るとプカプカと水に浮かぶアヒルが出迎えてくれます。 各アヒルには、この企業のサービスや実績紹介などの情報がRFIDタグによって埋め込まれており、来場者はこのアヒルを釣ってモニターのセンサにかざすと映像にて紹介を受けることができるという、かわいらしくも記憶に残る体験です。 「BRACE GROUP社」 (参考: https://brace-group.com) 全体を大きなキッチンとし、自社のサービスを調味料、アウトプットや実績を料理に例えている、ワクワクしてつい話を聞きたくなるコンセプトです。 調味料缶(=自社サービス)裏のコードをフライパンに読み込ませると、お皿にあるディスプレイに盛り付けられる(=詳細説明)という仕組みです。 【総括】 2日間、あっという間でしたが、全て回りきることができず残念ですが、 世界での最大規模の展示会ということもあり、かなりボリューミーな展示になっておりました。コロナ禍以降の技術発展によりデジタル商材を大きく打ち出している企業がやはり多かったです。 ブースの装飾に関しては以下のような所感を得ました。 ○環境配慮への意識が高い まず、感じたのがファブリック+システム部材のブースが多いということです。 日本では木工造作がまだまだ主流でありますが、ドイツでは、ほとんど見受けられませんでした。 ドイツは環境保護意識が非常に高い国であり、展示会やイベントにおいても環境に配慮した取り組みが積極的に行われています。そのため、再利用可能な素材の使用が推奨され、一般的には環境に優しい素材の使用が奨励される傾向が高くなっていました。 ユーロショップでは、来場者が印象に残ったブースに投票するアワードがありますが、 最も多く表を集めたのが「ITAB社」と、やはりサステナブルなブースに注目が集まるとわかります。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/news/article.asp?ID=23069) ○空間の力で惹きつけ、コミュニケーションを活性化させる施策 さらに、情報掲出は文字情報で訴求するよりも、ビジュアル・映像で魅せる手法が主に使われていました。日本とは異なり、情報を提供することよりも会話を生み出すことを重視するため、商談のエリアもカフェやレストランのようなおもてなし空間がほとんどでした。 当日立つスタッフの説明のしやすさも大切ですが、何よりも来場者がどうやったら自分たちの企業の世界観に惹かれて訪れてくれるかを意識し どんなに閉鎖的でも中に入ってみようと思うパワフルなブースデザインになっていました。 今後日本でのイベント・展示会デザインにおいて、空間の持つパワーをうまく生かすために、造作のアイデアの引き出しを増やしていくことを続けていきたいと思います。 そして、どうしても決められた枠に留まってしまいがちですが、新たなデザインにチャレンジしていく姿勢を忘れないようにしていきたいです。 次回開催は2026年の3年後になります。 3年後はどんな展示会になっているのか、ますます期待が高まりますね。 では、次のレポートでお会いしましょう! Tschüss!

【ミライデザイン研究所】3種類の体験で、ゴッホが見た世界を体感する【後編】

インサイドジール

みなさん、こんにちは! 2023年春の特別企画、「EuroShop2023視察レポート」をお送りいたします。 今回は考察編として実際に見て回った際に気づいたことや、今後我々も活かしていきたいアイデアをご紹介いたします。 ユーロショップの準備編は https://zeal-as.co.jp/euroshop2023-1/ をご覧ください。 【日本の展示会では見られない、壮大な造り】 ユーロショップだけではなく、海外の展示会は日本と出展規定(出展する際のブース造作に関するルール)が異なるため、全くと言ってもいいほどブースの表現方法が異なります。日本よりも非常にこだわり抜いた造形や素材を用いていたり、会場の天井から上物造作を吊っていたりと自由自在に空間表現がされているのが特長です。 〇吊り造作 上空に造作を設置できることで柱がなく、開放感あふれる空間になり来場者が入りやすくなっています。柱を落とす位置に左右されず造形も自由に組み合わせることが可能です。 〇ファブリック+システム部材 日本でも最近環境配慮を意識したブース制作が求められることが増加してきました。 ユーロショップでは、環境に配慮し産業廃棄物を極力減らすことを意識しており、木工造作よりもファブリック素材とシステム部材を組み合わせたブースが主流になっているのが日本と異なる点です。 「SCANBLUE社」 下記3社はシステム部材を取り扱っている企業になります。自社ブース自体が商材になっております。 「SYMA社」 このブースは二階建ての構造になっており、他社のブースよりもかなり高さが出ていて 目立っていました。 吊り構造や、外部からの柱の支えなしで、自立して8mの高さがあるとのことです。 中でスクリーンを用いて大勢に対してプレゼンができるエリアがありました。 「OCTANORM社」 日本でもよく使用されるオクタ部材で全て構成されたブースになっています。 (参考: https://www.octanorm.co.jp/ユーロショップ2023出展/) 「Aluvision社」 まだ設立20周年の若い企業ですが、最先端なシステム部材で、デザイン性の高いブースが製作できるのが強みです。 【こだわりの素材表現】 〇素材でムードをつくる さらに素材を用いて意匠的に活用されている例がありました。 まずは「L&S社」のブースになります。 上記のファブリック表現以外にも、より意匠的に使用されているブースになります。 シースルーな透け感のある布を重ね、中に展示してある照明器具の光が淡く映り込むことで、柔らかい雰囲気を醸し出しています。 「quattrobi社」 周りをメッシュ生地で囲ったブースになっています。 空間のブラックを踏襲した色になっていますが、重い印象なくスタイリッシュにおさめられています。 ぱっと見ではほぼ壁を感じず圧迫感なくも、ブースの外と内をきちんと分けるように設計されているブースが日本よりも多いです。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/Awards/EuroShop/peopleschoice-vote.asp) 「BEST MANNEQUIN社」では壁面を左官でおおっており、落ち着いたシックな空間を作ることで自社製品を活用するシーンやブランドイメージをうまく訴求していました。 ○環境配慮をアピールした表現 ステナブルを意識し、それをブースで表現するケースも多く見受けられました。 中でも「ITAB社」のブースは本物の植栽と、ボイド菅(コンクリートを打設する際に用いる紙管)で構成するという手法を用いていました。 (参考: https://itab.com) (参考: https://www.exhibitoronline.com/awards/euroShop/peopleschoice-vote.asp?fbclid=IwAR0COw5HuMOenKDeYkfjWCrriQs_fQXks7AYJQ3Nn0IMPb0weRcSZxq83sM) 素材の質感や色味を利用し、そこにグリーンを合わせることで環境配慮を印象付けるデザインで、上から吊るされている照明もロープ素材をうまく使い、全体のトーンに合わせながらもアイコニックな存在になっています。 ○異素材を組み合わせる 素材感の異なるものを組み合わせることで、空間が単調にならず表現幅もグッと広がります。 例えば「gokcelik社」はエキスパンドメタルと石膏シートを組み合わせて、スタイリッシュなトーンで構成されているブースになっていました。 参考: https://enbursa.com/gokcelik-en-yeni-urunlerini-euroshop2023-fuarinda-tanitti.html 「grottini社」 こちらも白のエキスパンドと植栽を組み合わせ、サステナブルさと先進さを表現できているブースになります。 (参考: https://4urspace.com/blog/2023/02/28/grottini-a-new-co-creative-technological-and-sustainable-era-starts-at-euroshop-2023/) 【カラー・グラフィックで人を引き寄せる】 日本ではブースにて製品説明用のグラフィックを作成するのが主流なため、必然と情報量が多く感じることがあります。 しかし、ユーロショップには、全世界の各地からさまざまな言語を使用する来場者が集まるため、言葉を交わさなくても自然とブース内に引き込まれるような「ブースデザインで人を引き寄せる」意識が強いです。 そこでポイントになってくるのが、カラーの使い方やグラフィックでの表現になってくると思われます。 ○圧倒的なカラー配色で目立たせる 「Hans Boodt Mannequins B.V.社」では、一面がパープルで構成されており、どのブースよりも世界観が作り込まれています。 外観にはコンテナの外壁もあり 一切中の様子が見えないようになっており、中に入ってみたくなる要素のひとつになっています。 (参考: https://www.hansboodt-maniquies.es/blog/2023/03/08/the-digital-revolution/) 内観は単管や透明素材など異素材同士をうまく組み合わせています。 ○グラフィカルな空間でワクワクさせる 「Imoon社」はイタリアにて照明設計を行なっており、各製品での照明を用いた見せ方をに紹介していました。ブース全体がカラフルかつグラフィカルなため、つい入ってみたくなる目立つブースです。 【コミュニケーションをとる、に特化させた構成】 ユーロショップでのブースで気づいたことがあります。 それが、「ブース内での商談スペースが非常に充実している」、そして「ステージ・プレゼンテーション用の造作がない」ということです。 また、会話のきっかけになり、かつ記憶に残すようなキャッチーな体験施策も用いられていました。 ○商談は飲食しながらゆったりと、が主流 どのブースもほぼ必ず商談のエリアがあります。そこで飲食を提供し、来場者をおもてなししながら会話するのが基本になっています。日本ではほとんど見られない雰囲気です。 (ITAB社) ○ブース全体がステージ!どこでもゲリラでデモンストレーション 「duo社」 人の手で簡単に組み立てられるシステムのデモンストレーションが行われていました。 組み立てにかかる時間を可視化してベストタイムを出せるかドキドキさせる演出にもなっています。 ブースの空いているスペースのその場で実演するゲリラ的演出で、 ステージを行なっていない際は製品展示ができるエリアになっています。 ○企業紹介を“体験”で伝える ものを使って記憶に残る体験を通して紹介を行なっていた企業を2社ピックします。 「Umdasch社」 (参考: https://www.umdasch.com/en/n/224-sustainable-togetherthe-umdasch-trade-fair-experie) ブースに入るとプカプカと水に浮かぶアヒルが出迎えてくれます。 各アヒルには、この企業のサービスや実績紹介などの情報がRFIDタグによって埋め込まれており、来場者はこのアヒルを釣ってモニターのセンサにかざすと映像にて紹介を受けることができるという、かわいらしくも記憶に残る体験です。 「BRACE GROUP社」 (参考: https://brace-group.com) 全体を大きなキッチンとし、自社のサービスを調味料、アウトプットや実績を料理に例えている、ワクワクしてつい話を聞きたくなるコンセプトです。 調味料缶(=自社サービス)裏のコードをフライパンに読み込ませると、お皿にあるディスプレイに盛り付けられる(=詳細説明)という仕組みです。 【総括】 2日間、あっという間でしたが、全て回りきることができず残念ですが、 世界での最大規模の展示会ということもあり、かなりボリューミーな展示になっておりました。コロナ禍以降の技術発展によりデジタル商材を大きく打ち出している企業がやはり多かったです。 ブースの装飾に関しては以下のような所感を得ました。 ○環境配慮への意識が高い まず、感じたのがファブリック+システム部材のブースが多いということです。 日本では木工造作がまだまだ主流でありますが、ドイツでは、ほとんど見受けられませんでした。 ドイツは環境保護意識が非常に高い国であり、展示会やイベントにおいても環境に配慮した取り組みが積極的に行われています。そのため、再利用可能な素材の使用が推奨され、一般的には環境に優しい素材の使用が奨励される傾向が高くなっていました。 ユーロショップでは、来場者が印象に残ったブースに投票するアワードがありますが、 最も多く表を集めたのが「ITAB社」と、やはりサステナブルなブースに注目が集まるとわかります。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/news/article.asp?ID=23069) ○空間の力で惹きつけ、コミュニケーションを活性化させる施策 さらに、情報掲出は文字情報で訴求するよりも、ビジュアル・映像で魅せる手法が主に使われていました。日本とは異なり、情報を提供することよりも会話を生み出すことを重視するため、商談のエリアもカフェやレストランのようなおもてなし空間がほとんどでした。 当日立つスタッフの説明のしやすさも大切ですが、何よりも来場者がどうやったら自分たちの企業の世界観に惹かれて訪れてくれるかを意識し どんなに閉鎖的でも中に入ってみようと思うパワフルなブースデザインになっていました。 今後日本でのイベント・展示会デザインにおいて、空間の持つパワーをうまく生かすために、造作のアイデアの引き出しを増やしていくことを続けていきたいと思います。 そして、どうしても決められた枠に留まってしまいがちですが、新たなデザインにチャレンジしていく姿勢を忘れないようにしていきたいです。 次回開催は2026年の3年後になります。 3年後はどんな展示会になっているのか、ますます期待が高まりますね。 では、次のレポートでお会いしましょう! Tschüss!

【ミライデザイン研究所】3種類の体験で、ゴッホが見た世界を体感する【前編】

インサイドジール

みなさん、こんにちは! 2023年春の特別企画、「EuroShop2023視察レポート」をお送りいたします。 今回は考察編として実際に見て回った際に気づいたことや、今後我々も活かしていきたいアイデアをご紹介いたします。 ユーロショップの準備編は https://zeal-as.co.jp/euroshop2023-1/ をご覧ください。 【日本の展示会では見られない、壮大な造り】 ユーロショップだけではなく、海外の展示会は日本と出展規定(出展する際のブース造作に関するルール)が異なるため、全くと言ってもいいほどブースの表現方法が異なります。日本よりも非常にこだわり抜いた造形や素材を用いていたり、会場の天井から上物造作を吊っていたりと自由自在に空間表現がされているのが特長です。 〇吊り造作 上空に造作を設置できることで柱がなく、開放感あふれる空間になり来場者が入りやすくなっています。柱を落とす位置に左右されず造形も自由に組み合わせることが可能です。 〇ファブリック+システム部材 日本でも最近環境配慮を意識したブース制作が求められることが増加してきました。 ユーロショップでは、環境に配慮し産業廃棄物を極力減らすことを意識しており、木工造作よりもファブリック素材とシステム部材を組み合わせたブースが主流になっているのが日本と異なる点です。 「SCANBLUE社」 下記3社はシステム部材を取り扱っている企業になります。自社ブース自体が商材になっております。 「SYMA社」 このブースは二階建ての構造になっており、他社のブースよりもかなり高さが出ていて 目立っていました。 吊り構造や、外部からの柱の支えなしで、自立して8mの高さがあるとのことです。 中でスクリーンを用いて大勢に対してプレゼンができるエリアがありました。 「OCTANORM社」 日本でもよく使用されるオクタ部材で全て構成されたブースになっています。 (参考: https://www.octanorm.co.jp/ユーロショップ2023出展/) 「Aluvision社」 まだ設立20周年の若い企業ですが、最先端なシステム部材で、デザイン性の高いブースが製作できるのが強みです。 【こだわりの素材表現】 〇素材でムードをつくる さらに素材を用いて意匠的に活用されている例がありました。 まずは「L&S社」のブースになります。 上記のファブリック表現以外にも、より意匠的に使用されているブースになります。 シースルーな透け感のある布を重ね、中に展示してある照明器具の光が淡く映り込むことで、柔らかい雰囲気を醸し出しています。 「quattrobi社」 周りをメッシュ生地で囲ったブースになっています。 空間のブラックを踏襲した色になっていますが、重い印象なくスタイリッシュにおさめられています。 ぱっと見ではほぼ壁を感じず圧迫感なくも、ブースの外と内をきちんと分けるように設計されているブースが日本よりも多いです。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/Awards/EuroShop/peopleschoice-vote.asp) 「BEST MANNEQUIN社」では壁面を左官でおおっており、落ち着いたシックな空間を作ることで自社製品を活用するシーンやブランドイメージをうまく訴求していました。 ○環境配慮をアピールした表現 ステナブルを意識し、それをブースで表現するケースも多く見受けられました。 中でも「ITAB社」のブースは本物の植栽と、ボイド菅(コンクリートを打設する際に用いる紙管)で構成するという手法を用いていました。 (参考: https://itab.com) (参考: https://www.exhibitoronline.com/awards/euroShop/peopleschoice-vote.asp?fbclid=IwAR0COw5HuMOenKDeYkfjWCrriQs_fQXks7AYJQ3Nn0IMPb0weRcSZxq83sM) 素材の質感や色味を利用し、そこにグリーンを合わせることで環境配慮を印象付けるデザインで、上から吊るされている照明もロープ素材をうまく使い、全体のトーンに合わせながらもアイコニックな存在になっています。 ○異素材を組み合わせる 素材感の異なるものを組み合わせることで、空間が単調にならず表現幅もグッと広がります。 例えば「gokcelik社」はエキスパンドメタルと石膏シートを組み合わせて、スタイリッシュなトーンで構成されているブースになっていました。 参考: https://enbursa.com/gokcelik-en-yeni-urunlerini-euroshop2023-fuarinda-tanitti.html 「grottini社」 こちらも白のエキスパンドと植栽を組み合わせ、サステナブルさと先進さを表現できているブースになります。 (参考: https://4urspace.com/blog/2023/02/28/grottini-a-new-co-creative-technological-and-sustainable-era-starts-at-euroshop-2023/) 【カラー・グラフィックで人を引き寄せる】 日本ではブースにて製品説明用のグラフィックを作成するのが主流なため、必然と情報量が多く感じることがあります。 しかし、ユーロショップには、全世界の各地からさまざまな言語を使用する来場者が集まるため、言葉を交わさなくても自然とブース内に引き込まれるような「ブースデザインで人を引き寄せる」意識が強いです。 そこでポイントになってくるのが、カラーの使い方やグラフィックでの表現になってくると思われます。 ○圧倒的なカラー配色で目立たせる 「Hans Boodt Mannequins B.V.社」では、一面がパープルで構成されており、どのブースよりも世界観が作り込まれています。 外観にはコンテナの外壁もあり 一切中の様子が見えないようになっており、中に入ってみたくなる要素のひとつになっています。 (参考: https://www.hansboodt-maniquies.es/blog/2023/03/08/the-digital-revolution/) 内観は単管や透明素材など異素材同士をうまく組み合わせています。 ○グラフィカルな空間でワクワクさせる 「Imoon社」はイタリアにて照明設計を行なっており、各製品での照明を用いた見せ方をに紹介していました。ブース全体がカラフルかつグラフィカルなため、つい入ってみたくなる目立つブースです。 【コミュニケーションをとる、に特化させた構成】 ユーロショップでのブースで気づいたことがあります。 それが、「ブース内での商談スペースが非常に充実している」、そして「ステージ・プレゼンテーション用の造作がない」ということです。 また、会話のきっかけになり、かつ記憶に残すようなキャッチーな体験施策も用いられていました。 ○商談は飲食しながらゆったりと、が主流 どのブースもほぼ必ず商談のエリアがあります。そこで飲食を提供し、来場者をおもてなししながら会話するのが基本になっています。日本ではほとんど見られない雰囲気です。 (ITAB社) ○ブース全体がステージ!どこでもゲリラでデモンストレーション 「duo社」 人の手で簡単に組み立てられるシステムのデモンストレーションが行われていました。 組み立てにかかる時間を可視化してベストタイムを出せるかドキドキさせる演出にもなっています。 ブースの空いているスペースのその場で実演するゲリラ的演出で、 ステージを行なっていない際は製品展示ができるエリアになっています。 ○企業紹介を“体験”で伝える ものを使って記憶に残る体験を通して紹介を行なっていた企業を2社ピックします。 「Umdasch社」 (参考: https://www.umdasch.com/en/n/224-sustainable-togetherthe-umdasch-trade-fair-experie) ブースに入るとプカプカと水に浮かぶアヒルが出迎えてくれます。 各アヒルには、この企業のサービスや実績紹介などの情報がRFIDタグによって埋め込まれており、来場者はこのアヒルを釣ってモニターのセンサにかざすと映像にて紹介を受けることができるという、かわいらしくも記憶に残る体験です。 「BRACE GROUP社」 (参考: https://brace-group.com) 全体を大きなキッチンとし、自社のサービスを調味料、アウトプットや実績を料理に例えている、ワクワクしてつい話を聞きたくなるコンセプトです。 調味料缶(=自社サービス)裏のコードをフライパンに読み込ませると、お皿にあるディスプレイに盛り付けられる(=詳細説明)という仕組みです。 【総括】 2日間、あっという間でしたが、全て回りきることができず残念ですが、 世界での最大規模の展示会ということもあり、かなりボリューミーな展示になっておりました。コロナ禍以降の技術発展によりデジタル商材を大きく打ち出している企業がやはり多かったです。 ブースの装飾に関しては以下のような所感を得ました。 ○環境配慮への意識が高い まず、感じたのがファブリック+システム部材のブースが多いということです。 日本では木工造作がまだまだ主流でありますが、ドイツでは、ほとんど見受けられませんでした。 ドイツは環境保護意識が非常に高い国であり、展示会やイベントにおいても環境に配慮した取り組みが積極的に行われています。そのため、再利用可能な素材の使用が推奨され、一般的には環境に優しい素材の使用が奨励される傾向が高くなっていました。 ユーロショップでは、来場者が印象に残ったブースに投票するアワードがありますが、 最も多く表を集めたのが「ITAB社」と、やはりサステナブルなブースに注目が集まるとわかります。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/news/article.asp?ID=23069) ○空間の力で惹きつけ、コミュニケーションを活性化させる施策 さらに、情報掲出は文字情報で訴求するよりも、ビジュアル・映像で魅せる手法が主に使われていました。日本とは異なり、情報を提供することよりも会話を生み出すことを重視するため、商談のエリアもカフェやレストランのようなおもてなし空間がほとんどでした。 当日立つスタッフの説明のしやすさも大切ですが、何よりも来場者がどうやったら自分たちの企業の世界観に惹かれて訪れてくれるかを意識し どんなに閉鎖的でも中に入ってみようと思うパワフルなブースデザインになっていました。 今後日本でのイベント・展示会デザインにおいて、空間の持つパワーをうまく生かすために、造作のアイデアの引き出しを増やしていくことを続けていきたいと思います。 そして、どうしても決められた枠に留まってしまいがちですが、新たなデザインにチャレンジしていく姿勢を忘れないようにしていきたいです。 次回開催は2026年の3年後になります。 3年後はどんな展示会になっているのか、ますます期待が高まりますね。 では、次のレポートでお会いしましょう! Tschüss!

【ミライデザイン研究所】空間におけるコラージュ表現の可能性-後編-

インサイドジール

みなさん、こんにちは! 2023年春の特別企画、「EuroShop2023視察レポート」をお送りいたします。 今回は考察編として実際に見て回った際に気づいたことや、今後我々も活かしていきたいアイデアをご紹介いたします。 ユーロショップの準備編は https://zeal-as.co.jp/euroshop2023-1/ をご覧ください。 【日本の展示会では見られない、壮大な造り】 ユーロショップだけではなく、海外の展示会は日本と出展規定(出展する際のブース造作に関するルール)が異なるため、全くと言ってもいいほどブースの表現方法が異なります。日本よりも非常にこだわり抜いた造形や素材を用いていたり、会場の天井から上物造作を吊っていたりと自由自在に空間表現がされているのが特長です。 〇吊り造作 上空に造作を設置できることで柱がなく、開放感あふれる空間になり来場者が入りやすくなっています。柱を落とす位置に左右されず造形も自由に組み合わせることが可能です。 〇ファブリック+システム部材 日本でも最近環境配慮を意識したブース制作が求められることが増加してきました。 ユーロショップでは、環境に配慮し産業廃棄物を極力減らすことを意識しており、木工造作よりもファブリック素材とシステム部材を組み合わせたブースが主流になっているのが日本と異なる点です。 「SCANBLUE社」 下記3社はシステム部材を取り扱っている企業になります。自社ブース自体が商材になっております。 「SYMA社」 このブースは二階建ての構造になっており、他社のブースよりもかなり高さが出ていて 目立っていました。 吊り構造や、外部からの柱の支えなしで、自立して8mの高さがあるとのことです。 中でスクリーンを用いて大勢に対してプレゼンができるエリアがありました。 「OCTANORM社」 日本でもよく使用されるオクタ部材で全て構成されたブースになっています。 (参考: https://www.octanorm.co.jp/ユーロショップ2023出展/) 「Aluvision社」 まだ設立20周年の若い企業ですが、最先端なシステム部材で、デザイン性の高いブースが製作できるのが強みです。 【こだわりの素材表現】 〇素材でムードをつくる さらに素材を用いて意匠的に活用されている例がありました。 まずは「L&S社」のブースになります。 上記のファブリック表現以外にも、より意匠的に使用されているブースになります。 シースルーな透け感のある布を重ね、中に展示してある照明器具の光が淡く映り込むことで、柔らかい雰囲気を醸し出しています。 「quattrobi社」 周りをメッシュ生地で囲ったブースになっています。 空間のブラックを踏襲した色になっていますが、重い印象なくスタイリッシュにおさめられています。 ぱっと見ではほぼ壁を感じず圧迫感なくも、ブースの外と内をきちんと分けるように設計されているブースが日本よりも多いです。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/Awards/EuroShop/peopleschoice-vote.asp) 「BEST MANNEQUIN社」では壁面を左官でおおっており、落ち着いたシックな空間を作ることで自社製品を活用するシーンやブランドイメージをうまく訴求していました。 ○環境配慮をアピールした表現 ステナブルを意識し、それをブースで表現するケースも多く見受けられました。 中でも「ITAB社」のブースは本物の植栽と、ボイド菅(コンクリートを打設する際に用いる紙管)で構成するという手法を用いていました。 (参考: https://itab.com) (参考: https://www.exhibitoronline.com/awards/euroShop/peopleschoice-vote.asp?fbclid=IwAR0COw5HuMOenKDeYkfjWCrriQs_fQXks7AYJQ3Nn0IMPb0weRcSZxq83sM) 素材の質感や色味を利用し、そこにグリーンを合わせることで環境配慮を印象付けるデザインで、上から吊るされている照明もロープ素材をうまく使い、全体のトーンに合わせながらもアイコニックな存在になっています。 ○異素材を組み合わせる 素材感の異なるものを組み合わせることで、空間が単調にならず表現幅もグッと広がります。 例えば「gokcelik社」はエキスパンドメタルと石膏シートを組み合わせて、スタイリッシュなトーンで構成されているブースになっていました。 参考: https://enbursa.com/gokcelik-en-yeni-urunlerini-euroshop2023-fuarinda-tanitti.html 「grottini社」 こちらも白のエキスパンドと植栽を組み合わせ、サステナブルさと先進さを表現できているブースになります。 (参考: https://4urspace.com/blog/2023/02/28/grottini-a-new-co-creative-technological-and-sustainable-era-starts-at-euroshop-2023/) 【カラー・グラフィックで人を引き寄せる】 日本ではブースにて製品説明用のグラフィックを作成するのが主流なため、必然と情報量が多く感じることがあります。 しかし、ユーロショップには、全世界の各地からさまざまな言語を使用する来場者が集まるため、言葉を交わさなくても自然とブース内に引き込まれるような「ブースデザインで人を引き寄せる」意識が強いです。 そこでポイントになってくるのが、カラーの使い方やグラフィックでの表現になってくると思われます。 ○圧倒的なカラー配色で目立たせる 「Hans Boodt Mannequins B.V.社」では、一面がパープルで構成されており、どのブースよりも世界観が作り込まれています。 外観にはコンテナの外壁もあり 一切中の様子が見えないようになっており、中に入ってみたくなる要素のひとつになっています。 (参考: https://www.hansboodt-maniquies.es/blog/2023/03/08/the-digital-revolution/) 内観は単管や透明素材など異素材同士をうまく組み合わせています。 ○グラフィカルな空間でワクワクさせる 「Imoon社」はイタリアにて照明設計を行なっており、各製品での照明を用いた見せ方をに紹介していました。ブース全体がカラフルかつグラフィカルなため、つい入ってみたくなる目立つブースです。 【コミュニケーションをとる、に特化させた構成】 ユーロショップでのブースで気づいたことがあります。 それが、「ブース内での商談スペースが非常に充実している」、そして「ステージ・プレゼンテーション用の造作がない」ということです。 また、会話のきっかけになり、かつ記憶に残すようなキャッチーな体験施策も用いられていました。 ○商談は飲食しながらゆったりと、が主流 どのブースもほぼ必ず商談のエリアがあります。そこで飲食を提供し、来場者をおもてなししながら会話するのが基本になっています。日本ではほとんど見られない雰囲気です。 (ITAB社) ○ブース全体がステージ!どこでもゲリラでデモンストレーション 「duo社」 人の手で簡単に組み立てられるシステムのデモンストレーションが行われていました。 組み立てにかかる時間を可視化してベストタイムを出せるかドキドキさせる演出にもなっています。 ブースの空いているスペースのその場で実演するゲリラ的演出で、 ステージを行なっていない際は製品展示ができるエリアになっています。 ○企業紹介を“体験”で伝える ものを使って記憶に残る体験を通して紹介を行なっていた企業を2社ピックします。 「Umdasch社」 (参考: https://www.umdasch.com/en/n/224-sustainable-togetherthe-umdasch-trade-fair-experie) ブースに入るとプカプカと水に浮かぶアヒルが出迎えてくれます。 各アヒルには、この企業のサービスや実績紹介などの情報がRFIDタグによって埋め込まれており、来場者はこのアヒルを釣ってモニターのセンサにかざすと映像にて紹介を受けることができるという、かわいらしくも記憶に残る体験です。 「BRACE GROUP社」 (参考: https://brace-group.com) 全体を大きなキッチンとし、自社のサービスを調味料、アウトプットや実績を料理に例えている、ワクワクしてつい話を聞きたくなるコンセプトです。 調味料缶(=自社サービス)裏のコードをフライパンに読み込ませると、お皿にあるディスプレイに盛り付けられる(=詳細説明)という仕組みです。 【総括】 2日間、あっという間でしたが、全て回りきることができず残念ですが、 世界での最大規模の展示会ということもあり、かなりボリューミーな展示になっておりました。コロナ禍以降の技術発展によりデジタル商材を大きく打ち出している企業がやはり多かったです。 ブースの装飾に関しては以下のような所感を得ました。 ○環境配慮への意識が高い まず、感じたのがファブリック+システム部材のブースが多いということです。 日本では木工造作がまだまだ主流でありますが、ドイツでは、ほとんど見受けられませんでした。 ドイツは環境保護意識が非常に高い国であり、展示会やイベントにおいても環境に配慮した取り組みが積極的に行われています。そのため、再利用可能な素材の使用が推奨され、一般的には環境に優しい素材の使用が奨励される傾向が高くなっていました。 ユーロショップでは、来場者が印象に残ったブースに投票するアワードがありますが、 最も多く表を集めたのが「ITAB社」と、やはりサステナブルなブースに注目が集まるとわかります。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/news/article.asp?ID=23069) ○空間の力で惹きつけ、コミュニケーションを活性化させる施策 さらに、情報掲出は文字情報で訴求するよりも、ビジュアル・映像で魅せる手法が主に使われていました。日本とは異なり、情報を提供することよりも会話を生み出すことを重視するため、商談のエリアもカフェやレストランのようなおもてなし空間がほとんどでした。 当日立つスタッフの説明のしやすさも大切ですが、何よりも来場者がどうやったら自分たちの企業の世界観に惹かれて訪れてくれるかを意識し どんなに閉鎖的でも中に入ってみようと思うパワフルなブースデザインになっていました。 今後日本でのイベント・展示会デザインにおいて、空間の持つパワーをうまく生かすために、造作のアイデアの引き出しを増やしていくことを続けていきたいと思います。 そして、どうしても決められた枠に留まってしまいがちですが、新たなデザインにチャレンジしていく姿勢を忘れないようにしていきたいです。 次回開催は2026年の3年後になります。 3年後はどんな展示会になっているのか、ますます期待が高まりますね。 では、次のレポートでお会いしましょう! Tschüss!

【ミライデザイン研究所】空間におけるコラージュ表現の可能性-前編-

インサイドジール

みなさん、こんにちは! 2023年春の特別企画、「EuroShop2023視察レポート」をお送りいたします。 今回は考察編として実際に見て回った際に気づいたことや、今後我々も活かしていきたいアイデアをご紹介いたします。 ユーロショップの準備編は https://zeal-as.co.jp/euroshop2023-1/ をご覧ください。 【日本の展示会では見られない、壮大な造り】 ユーロショップだけではなく、海外の展示会は日本と出展規定(出展する際のブース造作に関するルール)が異なるため、全くと言ってもいいほどブースの表現方法が異なります。日本よりも非常にこだわり抜いた造形や素材を用いていたり、会場の天井から上物造作を吊っていたりと自由自在に空間表現がされているのが特長です。 〇吊り造作 上空に造作を設置できることで柱がなく、開放感あふれる空間になり来場者が入りやすくなっています。柱を落とす位置に左右されず造形も自由に組み合わせることが可能です。 〇ファブリック+システム部材 日本でも最近環境配慮を意識したブース制作が求められることが増加してきました。 ユーロショップでは、環境に配慮し産業廃棄物を極力減らすことを意識しており、木工造作よりもファブリック素材とシステム部材を組み合わせたブースが主流になっているのが日本と異なる点です。 「SCANBLUE社」 下記3社はシステム部材を取り扱っている企業になります。自社ブース自体が商材になっております。 「SYMA社」 このブースは二階建ての構造になっており、他社のブースよりもかなり高さが出ていて 目立っていました。 吊り構造や、外部からの柱の支えなしで、自立して8mの高さがあるとのことです。 中でスクリーンを用いて大勢に対してプレゼンができるエリアがありました。 「OCTANORM社」 日本でもよく使用されるオクタ部材で全て構成されたブースになっています。 (参考: https://www.octanorm.co.jp/ユーロショップ2023出展/) 「Aluvision社」 まだ設立20周年の若い企業ですが、最先端なシステム部材で、デザイン性の高いブースが製作できるのが強みです。 【こだわりの素材表現】 〇素材でムードをつくる さらに素材を用いて意匠的に活用されている例がありました。 まずは「L&S社」のブースになります。 上記のファブリック表現以外にも、より意匠的に使用されているブースになります。 シースルーな透け感のある布を重ね、中に展示してある照明器具の光が淡く映り込むことで、柔らかい雰囲気を醸し出しています。 「quattrobi社」 周りをメッシュ生地で囲ったブースになっています。 空間のブラックを踏襲した色になっていますが、重い印象なくスタイリッシュにおさめられています。 ぱっと見ではほぼ壁を感じず圧迫感なくも、ブースの外と内をきちんと分けるように設計されているブースが日本よりも多いです。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/Awards/EuroShop/peopleschoice-vote.asp) 「BEST MANNEQUIN社」では壁面を左官でおおっており、落ち着いたシックな空間を作ることで自社製品を活用するシーンやブランドイメージをうまく訴求していました。 ○環境配慮をアピールした表現 ステナブルを意識し、それをブースで表現するケースも多く見受けられました。 中でも「ITAB社」のブースは本物の植栽と、ボイド菅(コンクリートを打設する際に用いる紙管)で構成するという手法を用いていました。 (参考: https://itab.com) (参考: https://www.exhibitoronline.com/awards/euroShop/peopleschoice-vote.asp?fbclid=IwAR0COw5HuMOenKDeYkfjWCrriQs_fQXks7AYJQ3Nn0IMPb0weRcSZxq83sM) 素材の質感や色味を利用し、そこにグリーンを合わせることで環境配慮を印象付けるデザインで、上から吊るされている照明もロープ素材をうまく使い、全体のトーンに合わせながらもアイコニックな存在になっています。 ○異素材を組み合わせる 素材感の異なるものを組み合わせることで、空間が単調にならず表現幅もグッと広がります。 例えば「gokcelik社」はエキスパンドメタルと石膏シートを組み合わせて、スタイリッシュなトーンで構成されているブースになっていました。 参考: https://enbursa.com/gokcelik-en-yeni-urunlerini-euroshop2023-fuarinda-tanitti.html 「grottini社」 こちらも白のエキスパンドと植栽を組み合わせ、サステナブルさと先進さを表現できているブースになります。 (参考: https://4urspace.com/blog/2023/02/28/grottini-a-new-co-creative-technological-and-sustainable-era-starts-at-euroshop-2023/) 【カラー・グラフィックで人を引き寄せる】 日本ではブースにて製品説明用のグラフィックを作成するのが主流なため、必然と情報量が多く感じることがあります。 しかし、ユーロショップには、全世界の各地からさまざまな言語を使用する来場者が集まるため、言葉を交わさなくても自然とブース内に引き込まれるような「ブースデザインで人を引き寄せる」意識が強いです。 そこでポイントになってくるのが、カラーの使い方やグラフィックでの表現になってくると思われます。 ○圧倒的なカラー配色で目立たせる 「Hans Boodt Mannequins B.V.社」では、一面がパープルで構成されており、どのブースよりも世界観が作り込まれています。 外観にはコンテナの外壁もあり 一切中の様子が見えないようになっており、中に入ってみたくなる要素のひとつになっています。 (参考: https://www.hansboodt-maniquies.es/blog/2023/03/08/the-digital-revolution/) 内観は単管や透明素材など異素材同士をうまく組み合わせています。 ○グラフィカルな空間でワクワクさせる 「Imoon社」はイタリアにて照明設計を行なっており、各製品での照明を用いた見せ方をに紹介していました。ブース全体がカラフルかつグラフィカルなため、つい入ってみたくなる目立つブースです。 【コミュニケーションをとる、に特化させた構成】 ユーロショップでのブースで気づいたことがあります。 それが、「ブース内での商談スペースが非常に充実している」、そして「ステージ・プレゼンテーション用の造作がない」ということです。 また、会話のきっかけになり、かつ記憶に残すようなキャッチーな体験施策も用いられていました。 ○商談は飲食しながらゆったりと、が主流 どのブースもほぼ必ず商談のエリアがあります。そこで飲食を提供し、来場者をおもてなししながら会話するのが基本になっています。日本ではほとんど見られない雰囲気です。 (ITAB社) ○ブース全体がステージ!どこでもゲリラでデモンストレーション 「duo社」 人の手で簡単に組み立てられるシステムのデモンストレーションが行われていました。 組み立てにかかる時間を可視化してベストタイムを出せるかドキドキさせる演出にもなっています。 ブースの空いているスペースのその場で実演するゲリラ的演出で、 ステージを行なっていない際は製品展示ができるエリアになっています。 ○企業紹介を“体験”で伝える ものを使って記憶に残る体験を通して紹介を行なっていた企業を2社ピックします。 「Umdasch社」 (参考: https://www.umdasch.com/en/n/224-sustainable-togetherthe-umdasch-trade-fair-experie) ブースに入るとプカプカと水に浮かぶアヒルが出迎えてくれます。 各アヒルには、この企業のサービスや実績紹介などの情報がRFIDタグによって埋め込まれており、来場者はこのアヒルを釣ってモニターのセンサにかざすと映像にて紹介を受けることができるという、かわいらしくも記憶に残る体験です。 「BRACE GROUP社」 (参考: https://brace-group.com) 全体を大きなキッチンとし、自社のサービスを調味料、アウトプットや実績を料理に例えている、ワクワクしてつい話を聞きたくなるコンセプトです。 調味料缶(=自社サービス)裏のコードをフライパンに読み込ませると、お皿にあるディスプレイに盛り付けられる(=詳細説明)という仕組みです。 【総括】 2日間、あっという間でしたが、全て回りきることができず残念ですが、 世界での最大規模の展示会ということもあり、かなりボリューミーな展示になっておりました。コロナ禍以降の技術発展によりデジタル商材を大きく打ち出している企業がやはり多かったです。 ブースの装飾に関しては以下のような所感を得ました。 ○環境配慮への意識が高い まず、感じたのがファブリック+システム部材のブースが多いということです。 日本では木工造作がまだまだ主流でありますが、ドイツでは、ほとんど見受けられませんでした。 ドイツは環境保護意識が非常に高い国であり、展示会やイベントにおいても環境に配慮した取り組みが積極的に行われています。そのため、再利用可能な素材の使用が推奨され、一般的には環境に優しい素材の使用が奨励される傾向が高くなっていました。 ユーロショップでは、来場者が印象に残ったブースに投票するアワードがありますが、 最も多く表を集めたのが「ITAB社」と、やはりサステナブルなブースに注目が集まるとわかります。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/news/article.asp?ID=23069) ○空間の力で惹きつけ、コミュニケーションを活性化させる施策 さらに、情報掲出は文字情報で訴求するよりも、ビジュアル・映像で魅せる手法が主に使われていました。日本とは異なり、情報を提供することよりも会話を生み出すことを重視するため、商談のエリアもカフェやレストランのようなおもてなし空間がほとんどでした。 当日立つスタッフの説明のしやすさも大切ですが、何よりも来場者がどうやったら自分たちの企業の世界観に惹かれて訪れてくれるかを意識し どんなに閉鎖的でも中に入ってみようと思うパワフルなブースデザインになっていました。 今後日本でのイベント・展示会デザインにおいて、空間の持つパワーをうまく生かすために、造作のアイデアの引き出しを増やしていくことを続けていきたいと思います。 そして、どうしても決められた枠に留まってしまいがちですが、新たなデザインにチャレンジしていく姿勢を忘れないようにしていきたいです。 次回開催は2026年の3年後になります。 3年後はどんな展示会になっているのか、ますます期待が高まりますね。 では、次のレポートでお会いしましょう! Tschüss!

【ミライデザイン研究所】空間におけるコラージュ表現の可能性 -後編-

インサイドジール

みなさん、こんにちは! 2023年春の特別企画、「EuroShop2023視察レポート」をお送りいたします。 今回は考察編として実際に見て回った際に気づいたことや、今後我々も活かしていきたいアイデアをご紹介いたします。 ユーロショップの準備編は https://zeal-as.co.jp/euroshop2023-1/ をご覧ください。 【日本の展示会では見られない、壮大な造り】 ユーロショップだけではなく、海外の展示会は日本と出展規定(出展する際のブース造作に関するルール)が異なるため、全くと言ってもいいほどブースの表現方法が異なります。日本よりも非常にこだわり抜いた造形や素材を用いていたり、会場の天井から上物造作を吊っていたりと自由自在に空間表現がされているのが特長です。 〇吊り造作 上空に造作を設置できることで柱がなく、開放感あふれる空間になり来場者が入りやすくなっています。柱を落とす位置に左右されず造形も自由に組み合わせることが可能です。 〇ファブリック+システム部材 日本でも最近環境配慮を意識したブース制作が求められることが増加してきました。 ユーロショップでは、環境に配慮し産業廃棄物を極力減らすことを意識しており、木工造作よりもファブリック素材とシステム部材を組み合わせたブースが主流になっているのが日本と異なる点です。 「SCANBLUE社」 下記3社はシステム部材を取り扱っている企業になります。自社ブース自体が商材になっております。 「SYMA社」 このブースは二階建ての構造になっており、他社のブースよりもかなり高さが出ていて 目立っていました。 吊り構造や、外部からの柱の支えなしで、自立して8mの高さがあるとのことです。 中でスクリーンを用いて大勢に対してプレゼンができるエリアがありました。 「OCTANORM社」 日本でもよく使用されるオクタ部材で全て構成されたブースになっています。 (参考: https://www.octanorm.co.jp/ユーロショップ2023出展/) 「Aluvision社」 まだ設立20周年の若い企業ですが、最先端なシステム部材で、デザイン性の高いブースが製作できるのが強みです。 【こだわりの素材表現】 〇素材でムードをつくる さらに素材を用いて意匠的に活用されている例がありました。 まずは「L&S社」のブースになります。 上記のファブリック表現以外にも、より意匠的に使用されているブースになります。 シースルーな透け感のある布を重ね、中に展示してある照明器具の光が淡く映り込むことで、柔らかい雰囲気を醸し出しています。 「quattrobi社」 周りをメッシュ生地で囲ったブースになっています。 空間のブラックを踏襲した色になっていますが、重い印象なくスタイリッシュにおさめられています。 ぱっと見ではほぼ壁を感じず圧迫感なくも、ブースの外と内をきちんと分けるように設計されているブースが日本よりも多いです。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/Awards/EuroShop/peopleschoice-vote.asp) 「BEST MANNEQUIN社」では壁面を左官でおおっており、落ち着いたシックな空間を作ることで自社製品を活用するシーンやブランドイメージをうまく訴求していました。 ○環境配慮をアピールした表現 ステナブルを意識し、それをブースで表現するケースも多く見受けられました。 中でも「ITAB社」のブースは本物の植栽と、ボイド菅(コンクリートを打設する際に用いる紙管)で構成するという手法を用いていました。 (参考: https://itab.com) (参考: https://www.exhibitoronline.com/awards/euroShop/peopleschoice-vote.asp?fbclid=IwAR0COw5HuMOenKDeYkfjWCrriQs_fQXks7AYJQ3Nn0IMPb0weRcSZxq83sM) 素材の質感や色味を利用し、そこにグリーンを合わせることで環境配慮を印象付けるデザインで、上から吊るされている照明もロープ素材をうまく使い、全体のトーンに合わせながらもアイコニックな存在になっています。 ○異素材を組み合わせる 素材感の異なるものを組み合わせることで、空間が単調にならず表現幅もグッと広がります。 例えば「gokcelik社」はエキスパンドメタルと石膏シートを組み合わせて、スタイリッシュなトーンで構成されているブースになっていました。 参考: https://enbursa.com/gokcelik-en-yeni-urunlerini-euroshop2023-fuarinda-tanitti.html 「grottini社」 こちらも白のエキスパンドと植栽を組み合わせ、サステナブルさと先進さを表現できているブースになります。 (参考: https://4urspace.com/blog/2023/02/28/grottini-a-new-co-creative-technological-and-sustainable-era-starts-at-euroshop-2023/) 【カラー・グラフィックで人を引き寄せる】 日本ではブースにて製品説明用のグラフィックを作成するのが主流なため、必然と情報量が多く感じることがあります。 しかし、ユーロショップには、全世界の各地からさまざまな言語を使用する来場者が集まるため、言葉を交わさなくても自然とブース内に引き込まれるような「ブースデザインで人を引き寄せる」意識が強いです。 そこでポイントになってくるのが、カラーの使い方やグラフィックでの表現になってくると思われます。 ○圧倒的なカラー配色で目立たせる 「Hans Boodt Mannequins B.V.社」では、一面がパープルで構成されており、どのブースよりも世界観が作り込まれています。 外観にはコンテナの外壁もあり 一切中の様子が見えないようになっており、中に入ってみたくなる要素のひとつになっています。 (参考: https://www.hansboodt-maniquies.es/blog/2023/03/08/the-digital-revolution/) 内観は単管や透明素材など異素材同士をうまく組み合わせています。 ○グラフィカルな空間でワクワクさせる 「Imoon社」はイタリアにて照明設計を行なっており、各製品での照明を用いた見せ方をに紹介していました。ブース全体がカラフルかつグラフィカルなため、つい入ってみたくなる目立つブースです。 【コミュニケーションをとる、に特化させた構成】 ユーロショップでのブースで気づいたことがあります。 それが、「ブース内での商談スペースが非常に充実している」、そして「ステージ・プレゼンテーション用の造作がない」ということです。 また、会話のきっかけになり、かつ記憶に残すようなキャッチーな体験施策も用いられていました。 ○商談は飲食しながらゆったりと、が主流 どのブースもほぼ必ず商談のエリアがあります。そこで飲食を提供し、来場者をおもてなししながら会話するのが基本になっています。日本ではほとんど見られない雰囲気です。 (ITAB社) ○ブース全体がステージ!どこでもゲリラでデモンストレーション 「duo社」 人の手で簡単に組み立てられるシステムのデモンストレーションが行われていました。 組み立てにかかる時間を可視化してベストタイムを出せるかドキドキさせる演出にもなっています。 ブースの空いているスペースのその場で実演するゲリラ的演出で、 ステージを行なっていない際は製品展示ができるエリアになっています。 ○企業紹介を“体験”で伝える ものを使って記憶に残る体験を通して紹介を行なっていた企業を2社ピックします。 「Umdasch社」 (参考: https://www.umdasch.com/en/n/224-sustainable-togetherthe-umdasch-trade-fair-experie) ブースに入るとプカプカと水に浮かぶアヒルが出迎えてくれます。 各アヒルには、この企業のサービスや実績紹介などの情報がRFIDタグによって埋め込まれており、来場者はこのアヒルを釣ってモニターのセンサにかざすと映像にて紹介を受けることができるという、かわいらしくも記憶に残る体験です。 「BRACE GROUP社」 (参考: https://brace-group.com) 全体を大きなキッチンとし、自社のサービスを調味料、アウトプットや実績を料理に例えている、ワクワクしてつい話を聞きたくなるコンセプトです。 調味料缶(=自社サービス)裏のコードをフライパンに読み込ませると、お皿にあるディスプレイに盛り付けられる(=詳細説明)という仕組みです。 【総括】 2日間、あっという間でしたが、全て回りきることができず残念ですが、 世界での最大規模の展示会ということもあり、かなりボリューミーな展示になっておりました。コロナ禍以降の技術発展によりデジタル商材を大きく打ち出している企業がやはり多かったです。 ブースの装飾に関しては以下のような所感を得ました。 ○環境配慮への意識が高い まず、感じたのがファブリック+システム部材のブースが多いということです。 日本では木工造作がまだまだ主流でありますが、ドイツでは、ほとんど見受けられませんでした。 ドイツは環境保護意識が非常に高い国であり、展示会やイベントにおいても環境に配慮した取り組みが積極的に行われています。そのため、再利用可能な素材の使用が推奨され、一般的には環境に優しい素材の使用が奨励される傾向が高くなっていました。 ユーロショップでは、来場者が印象に残ったブースに投票するアワードがありますが、 最も多く表を集めたのが「ITAB社」と、やはりサステナブルなブースに注目が集まるとわかります。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/news/article.asp?ID=23069) ○空間の力で惹きつけ、コミュニケーションを活性化させる施策 さらに、情報掲出は文字情報で訴求するよりも、ビジュアル・映像で魅せる手法が主に使われていました。日本とは異なり、情報を提供することよりも会話を生み出すことを重視するため、商談のエリアもカフェやレストランのようなおもてなし空間がほとんどでした。 当日立つスタッフの説明のしやすさも大切ですが、何よりも来場者がどうやったら自分たちの企業の世界観に惹かれて訪れてくれるかを意識し どんなに閉鎖的でも中に入ってみようと思うパワフルなブースデザインになっていました。 今後日本でのイベント・展示会デザインにおいて、空間の持つパワーをうまく生かすために、造作のアイデアの引き出しを増やしていくことを続けていきたいと思います。 そして、どうしても決められた枠に留まってしまいがちですが、新たなデザインにチャレンジしていく姿勢を忘れないようにしていきたいです。 次回開催は2026年の3年後になります。 3年後はどんな展示会になっているのか、ますます期待が高まりますね。 では、次のレポートでお会いしましょう! Tschüss!

【ミライデザイン研究所】空間におけるコラージュ表現の可能性 -中編-

インサイドジール

みなさん、こんにちは! 2023年春の特別企画、「EuroShop2023視察レポート」をお送りいたします。 今回は考察編として実際に見て回った際に気づいたことや、今後我々も活かしていきたいアイデアをご紹介いたします。 ユーロショップの準備編は https://zeal-as.co.jp/euroshop2023-1/ をご覧ください。 【日本の展示会では見られない、壮大な造り】 ユーロショップだけではなく、海外の展示会は日本と出展規定(出展する際のブース造作に関するルール)が異なるため、全くと言ってもいいほどブースの表現方法が異なります。日本よりも非常にこだわり抜いた造形や素材を用いていたり、会場の天井から上物造作を吊っていたりと自由自在に空間表現がされているのが特長です。 〇吊り造作 上空に造作を設置できることで柱がなく、開放感あふれる空間になり来場者が入りやすくなっています。柱を落とす位置に左右されず造形も自由に組み合わせることが可能です。 〇ファブリック+システム部材 日本でも最近環境配慮を意識したブース制作が求められることが増加してきました。 ユーロショップでは、環境に配慮し産業廃棄物を極力減らすことを意識しており、木工造作よりもファブリック素材とシステム部材を組み合わせたブースが主流になっているのが日本と異なる点です。 「SCANBLUE社」 下記3社はシステム部材を取り扱っている企業になります。自社ブース自体が商材になっております。 「SYMA社」 このブースは二階建ての構造になっており、他社のブースよりもかなり高さが出ていて 目立っていました。 吊り構造や、外部からの柱の支えなしで、自立して8mの高さがあるとのことです。 中でスクリーンを用いて大勢に対してプレゼンができるエリアがありました。 「OCTANORM社」 日本でもよく使用されるオクタ部材で全て構成されたブースになっています。 (参考: https://www.octanorm.co.jp/ユーロショップ2023出展/) 「Aluvision社」 まだ設立20周年の若い企業ですが、最先端なシステム部材で、デザイン性の高いブースが製作できるのが強みです。 【こだわりの素材表現】 〇素材でムードをつくる さらに素材を用いて意匠的に活用されている例がありました。 まずは「L&S社」のブースになります。 上記のファブリック表現以外にも、より意匠的に使用されているブースになります。 シースルーな透け感のある布を重ね、中に展示してある照明器具の光が淡く映り込むことで、柔らかい雰囲気を醸し出しています。 「quattrobi社」 周りをメッシュ生地で囲ったブースになっています。 空間のブラックを踏襲した色になっていますが、重い印象なくスタイリッシュにおさめられています。 ぱっと見ではほぼ壁を感じず圧迫感なくも、ブースの外と内をきちんと分けるように設計されているブースが日本よりも多いです。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/Awards/EuroShop/peopleschoice-vote.asp) 「BEST MANNEQUIN社」では壁面を左官でおおっており、落ち着いたシックな空間を作ることで自社製品を活用するシーンやブランドイメージをうまく訴求していました。 ○環境配慮をアピールした表現 ステナブルを意識し、それをブースで表現するケースも多く見受けられました。 中でも「ITAB社」のブースは本物の植栽と、ボイド菅(コンクリートを打設する際に用いる紙管)で構成するという手法を用いていました。 (参考: https://itab.com) (参考: https://www.exhibitoronline.com/awards/euroShop/peopleschoice-vote.asp?fbclid=IwAR0COw5HuMOenKDeYkfjWCrriQs_fQXks7AYJQ3Nn0IMPb0weRcSZxq83sM) 素材の質感や色味を利用し、そこにグリーンを合わせることで環境配慮を印象付けるデザインで、上から吊るされている照明もロープ素材をうまく使い、全体のトーンに合わせながらもアイコニックな存在になっています。 ○異素材を組み合わせる 素材感の異なるものを組み合わせることで、空間が単調にならず表現幅もグッと広がります。 例えば「gokcelik社」はエキスパンドメタルと石膏シートを組み合わせて、スタイリッシュなトーンで構成されているブースになっていました。 参考: https://enbursa.com/gokcelik-en-yeni-urunlerini-euroshop2023-fuarinda-tanitti.html 「grottini社」 こちらも白のエキスパンドと植栽を組み合わせ、サステナブルさと先進さを表現できているブースになります。 (参考: https://4urspace.com/blog/2023/02/28/grottini-a-new-co-creative-technological-and-sustainable-era-starts-at-euroshop-2023/) 【カラー・グラフィックで人を引き寄せる】 日本ではブースにて製品説明用のグラフィックを作成するのが主流なため、必然と情報量が多く感じることがあります。 しかし、ユーロショップには、全世界の各地からさまざまな言語を使用する来場者が集まるため、言葉を交わさなくても自然とブース内に引き込まれるような「ブースデザインで人を引き寄せる」意識が強いです。 そこでポイントになってくるのが、カラーの使い方やグラフィックでの表現になってくると思われます。 ○圧倒的なカラー配色で目立たせる 「Hans Boodt Mannequins B.V.社」では、一面がパープルで構成されており、どのブースよりも世界観が作り込まれています。 外観にはコンテナの外壁もあり 一切中の様子が見えないようになっており、中に入ってみたくなる要素のひとつになっています。 (参考: https://www.hansboodt-maniquies.es/blog/2023/03/08/the-digital-revolution/) 内観は単管や透明素材など異素材同士をうまく組み合わせています。 ○グラフィカルな空間でワクワクさせる 「Imoon社」はイタリアにて照明設計を行なっており、各製品での照明を用いた見せ方をに紹介していました。ブース全体がカラフルかつグラフィカルなため、つい入ってみたくなる目立つブースです。 【コミュニケーションをとる、に特化させた構成】 ユーロショップでのブースで気づいたことがあります。 それが、「ブース内での商談スペースが非常に充実している」、そして「ステージ・プレゼンテーション用の造作がない」ということです。 また、会話のきっかけになり、かつ記憶に残すようなキャッチーな体験施策も用いられていました。 ○商談は飲食しながらゆったりと、が主流 どのブースもほぼ必ず商談のエリアがあります。そこで飲食を提供し、来場者をおもてなししながら会話するのが基本になっています。日本ではほとんど見られない雰囲気です。 (ITAB社) ○ブース全体がステージ!どこでもゲリラでデモンストレーション 「duo社」 人の手で簡単に組み立てられるシステムのデモンストレーションが行われていました。 組み立てにかかる時間を可視化してベストタイムを出せるかドキドキさせる演出にもなっています。 ブースの空いているスペースのその場で実演するゲリラ的演出で、 ステージを行なっていない際は製品展示ができるエリアになっています。 ○企業紹介を“体験”で伝える ものを使って記憶に残る体験を通して紹介を行なっていた企業を2社ピックします。 「Umdasch社」 (参考: https://www.umdasch.com/en/n/224-sustainable-togetherthe-umdasch-trade-fair-experie) ブースに入るとプカプカと水に浮かぶアヒルが出迎えてくれます。 各アヒルには、この企業のサービスや実績紹介などの情報がRFIDタグによって埋め込まれており、来場者はこのアヒルを釣ってモニターのセンサにかざすと映像にて紹介を受けることができるという、かわいらしくも記憶に残る体験です。 「BRACE GROUP社」 (参考: https://brace-group.com) 全体を大きなキッチンとし、自社のサービスを調味料、アウトプットや実績を料理に例えている、ワクワクしてつい話を聞きたくなるコンセプトです。 調味料缶(=自社サービス)裏のコードをフライパンに読み込ませると、お皿にあるディスプレイに盛り付けられる(=詳細説明)という仕組みです。 【総括】 2日間、あっという間でしたが、全て回りきることができず残念ですが、 世界での最大規模の展示会ということもあり、かなりボリューミーな展示になっておりました。コロナ禍以降の技術発展によりデジタル商材を大きく打ち出している企業がやはり多かったです。 ブースの装飾に関しては以下のような所感を得ました。 ○環境配慮への意識が高い まず、感じたのがファブリック+システム部材のブースが多いということです。 日本では木工造作がまだまだ主流でありますが、ドイツでは、ほとんど見受けられませんでした。 ドイツは環境保護意識が非常に高い国であり、展示会やイベントにおいても環境に配慮した取り組みが積極的に行われています。そのため、再利用可能な素材の使用が推奨され、一般的には環境に優しい素材の使用が奨励される傾向が高くなっていました。 ユーロショップでは、来場者が印象に残ったブースに投票するアワードがありますが、 最も多く表を集めたのが「ITAB社」と、やはりサステナブルなブースに注目が集まるとわかります。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/news/article.asp?ID=23069) ○空間の力で惹きつけ、コミュニケーションを活性化させる施策 さらに、情報掲出は文字情報で訴求するよりも、ビジュアル・映像で魅せる手法が主に使われていました。日本とは異なり、情報を提供することよりも会話を生み出すことを重視するため、商談のエリアもカフェやレストランのようなおもてなし空間がほとんどでした。 当日立つスタッフの説明のしやすさも大切ですが、何よりも来場者がどうやったら自分たちの企業の世界観に惹かれて訪れてくれるかを意識し どんなに閉鎖的でも中に入ってみようと思うパワフルなブースデザインになっていました。 今後日本でのイベント・展示会デザインにおいて、空間の持つパワーをうまく生かすために、造作のアイデアの引き出しを増やしていくことを続けていきたいと思います。 そして、どうしても決められた枠に留まってしまいがちですが、新たなデザインにチャレンジしていく姿勢を忘れないようにしていきたいです。 次回開催は2026年の3年後になります。 3年後はどんな展示会になっているのか、ますます期待が高まりますね。 では、次のレポートでお会いしましょう! Tschüss!

【ミライデザイン研究所】空間におけるコラージュ表現の可能性 -前編-

インサイドジール

みなさん、こんにちは! 2023年春の特別企画、「EuroShop2023視察レポート」をお送りいたします。 今回は考察編として実際に見て回った際に気づいたことや、今後我々も活かしていきたいアイデアをご紹介いたします。 ユーロショップの準備編は https://zeal-as.co.jp/euroshop2023-1/ をご覧ください。 【日本の展示会では見られない、壮大な造り】 ユーロショップだけではなく、海外の展示会は日本と出展規定(出展する際のブース造作に関するルール)が異なるため、全くと言ってもいいほどブースの表現方法が異なります。日本よりも非常にこだわり抜いた造形や素材を用いていたり、会場の天井から上物造作を吊っていたりと自由自在に空間表現がされているのが特長です。 〇吊り造作 上空に造作を設置できることで柱がなく、開放感あふれる空間になり来場者が入りやすくなっています。柱を落とす位置に左右されず造形も自由に組み合わせることが可能です。 〇ファブリック+システム部材 日本でも最近環境配慮を意識したブース制作が求められることが増加してきました。 ユーロショップでは、環境に配慮し産業廃棄物を極力減らすことを意識しており、木工造作よりもファブリック素材とシステム部材を組み合わせたブースが主流になっているのが日本と異なる点です。 「SCANBLUE社」 下記3社はシステム部材を取り扱っている企業になります。自社ブース自体が商材になっております。 「SYMA社」 このブースは二階建ての構造になっており、他社のブースよりもかなり高さが出ていて 目立っていました。 吊り構造や、外部からの柱の支えなしで、自立して8mの高さがあるとのことです。 中でスクリーンを用いて大勢に対してプレゼンができるエリアがありました。 「OCTANORM社」 日本でもよく使用されるオクタ部材で全て構成されたブースになっています。 (参考: https://www.octanorm.co.jp/ユーロショップ2023出展/) 「Aluvision社」 まだ設立20周年の若い企業ですが、最先端なシステム部材で、デザイン性の高いブースが製作できるのが強みです。 【こだわりの素材表現】 〇素材でムードをつくる さらに素材を用いて意匠的に活用されている例がありました。 まずは「L&S社」のブースになります。 上記のファブリック表現以外にも、より意匠的に使用されているブースになります。 シースルーな透け感のある布を重ね、中に展示してある照明器具の光が淡く映り込むことで、柔らかい雰囲気を醸し出しています。 「quattrobi社」 周りをメッシュ生地で囲ったブースになっています。 空間のブラックを踏襲した色になっていますが、重い印象なくスタイリッシュにおさめられています。 ぱっと見ではほぼ壁を感じず圧迫感なくも、ブースの外と内をきちんと分けるように設計されているブースが日本よりも多いです。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/Awards/EuroShop/peopleschoice-vote.asp) 「BEST MANNEQUIN社」では壁面を左官でおおっており、落ち着いたシックな空間を作ることで自社製品を活用するシーンやブランドイメージをうまく訴求していました。 ○環境配慮をアピールした表現 ステナブルを意識し、それをブースで表現するケースも多く見受けられました。 中でも「ITAB社」のブースは本物の植栽と、ボイド菅(コンクリートを打設する際に用いる紙管)で構成するという手法を用いていました。 (参考: https://itab.com) (参考: https://www.exhibitoronline.com/awards/euroShop/peopleschoice-vote.asp?fbclid=IwAR0COw5HuMOenKDeYkfjWCrriQs_fQXks7AYJQ3Nn0IMPb0weRcSZxq83sM) 素材の質感や色味を利用し、そこにグリーンを合わせることで環境配慮を印象付けるデザインで、上から吊るされている照明もロープ素材をうまく使い、全体のトーンに合わせながらもアイコニックな存在になっています。 ○異素材を組み合わせる 素材感の異なるものを組み合わせることで、空間が単調にならず表現幅もグッと広がります。 例えば「gokcelik社」はエキスパンドメタルと石膏シートを組み合わせて、スタイリッシュなトーンで構成されているブースになっていました。 参考: https://enbursa.com/gokcelik-en-yeni-urunlerini-euroshop2023-fuarinda-tanitti.html 「grottini社」 こちらも白のエキスパンドと植栽を組み合わせ、サステナブルさと先進さを表現できているブースになります。 (参考: https://4urspace.com/blog/2023/02/28/grottini-a-new-co-creative-technological-and-sustainable-era-starts-at-euroshop-2023/) 【カラー・グラフィックで人を引き寄せる】 日本ではブースにて製品説明用のグラフィックを作成するのが主流なため、必然と情報量が多く感じることがあります。 しかし、ユーロショップには、全世界の各地からさまざまな言語を使用する来場者が集まるため、言葉を交わさなくても自然とブース内に引き込まれるような「ブースデザインで人を引き寄せる」意識が強いです。 そこでポイントになってくるのが、カラーの使い方やグラフィックでの表現になってくると思われます。 ○圧倒的なカラー配色で目立たせる 「Hans Boodt Mannequins B.V.社」では、一面がパープルで構成されており、どのブースよりも世界観が作り込まれています。 外観にはコンテナの外壁もあり 一切中の様子が見えないようになっており、中に入ってみたくなる要素のひとつになっています。 (参考: https://www.hansboodt-maniquies.es/blog/2023/03/08/the-digital-revolution/) 内観は単管や透明素材など異素材同士をうまく組み合わせています。 ○グラフィカルな空間でワクワクさせる 「Imoon社」はイタリアにて照明設計を行なっており、各製品での照明を用いた見せ方をに紹介していました。ブース全体がカラフルかつグラフィカルなため、つい入ってみたくなる目立つブースです。 【コミュニケーションをとる、に特化させた構成】 ユーロショップでのブースで気づいたことがあります。 それが、「ブース内での商談スペースが非常に充実している」、そして「ステージ・プレゼンテーション用の造作がない」ということです。 また、会話のきっかけになり、かつ記憶に残すようなキャッチーな体験施策も用いられていました。 ○商談は飲食しながらゆったりと、が主流 どのブースもほぼ必ず商談のエリアがあります。そこで飲食を提供し、来場者をおもてなししながら会話するのが基本になっています。日本ではほとんど見られない雰囲気です。 (ITAB社) ○ブース全体がステージ!どこでもゲリラでデモンストレーション 「duo社」 人の手で簡単に組み立てられるシステムのデモンストレーションが行われていました。 組み立てにかかる時間を可視化してベストタイムを出せるかドキドキさせる演出にもなっています。 ブースの空いているスペースのその場で実演するゲリラ的演出で、 ステージを行なっていない際は製品展示ができるエリアになっています。 ○企業紹介を“体験”で伝える ものを使って記憶に残る体験を通して紹介を行なっていた企業を2社ピックします。 「Umdasch社」 (参考: https://www.umdasch.com/en/n/224-sustainable-togetherthe-umdasch-trade-fair-experie) ブースに入るとプカプカと水に浮かぶアヒルが出迎えてくれます。 各アヒルには、この企業のサービスや実績紹介などの情報がRFIDタグによって埋め込まれており、来場者はこのアヒルを釣ってモニターのセンサにかざすと映像にて紹介を受けることができるという、かわいらしくも記憶に残る体験です。 「BRACE GROUP社」 (参考: https://brace-group.com) 全体を大きなキッチンとし、自社のサービスを調味料、アウトプットや実績を料理に例えている、ワクワクしてつい話を聞きたくなるコンセプトです。 調味料缶(=自社サービス)裏のコードをフライパンに読み込ませると、お皿にあるディスプレイに盛り付けられる(=詳細説明)という仕組みです。 【総括】 2日間、あっという間でしたが、全て回りきることができず残念ですが、 世界での最大規模の展示会ということもあり、かなりボリューミーな展示になっておりました。コロナ禍以降の技術発展によりデジタル商材を大きく打ち出している企業がやはり多かったです。 ブースの装飾に関しては以下のような所感を得ました。 ○環境配慮への意識が高い まず、感じたのがファブリック+システム部材のブースが多いということです。 日本では木工造作がまだまだ主流でありますが、ドイツでは、ほとんど見受けられませんでした。 ドイツは環境保護意識が非常に高い国であり、展示会やイベントにおいても環境に配慮した取り組みが積極的に行われています。そのため、再利用可能な素材の使用が推奨され、一般的には環境に優しい素材の使用が奨励される傾向が高くなっていました。 ユーロショップでは、来場者が印象に残ったブースに投票するアワードがありますが、 最も多く表を集めたのが「ITAB社」と、やはりサステナブルなブースに注目が集まるとわかります。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/news/article.asp?ID=23069) ○空間の力で惹きつけ、コミュニケーションを活性化させる施策 さらに、情報掲出は文字情報で訴求するよりも、ビジュアル・映像で魅せる手法が主に使われていました。日本とは異なり、情報を提供することよりも会話を生み出すことを重視するため、商談のエリアもカフェやレストランのようなおもてなし空間がほとんどでした。 当日立つスタッフの説明のしやすさも大切ですが、何よりも来場者がどうやったら自分たちの企業の世界観に惹かれて訪れてくれるかを意識し どんなに閉鎖的でも中に入ってみようと思うパワフルなブースデザインになっていました。 今後日本でのイベント・展示会デザインにおいて、空間の持つパワーをうまく生かすために、造作のアイデアの引き出しを増やしていくことを続けていきたいと思います。 そして、どうしても決められた枠に留まってしまいがちですが、新たなデザインにチャレンジしていく姿勢を忘れないようにしていきたいです。 次回開催は2026年の3年後になります。 3年後はどんな展示会になっているのか、ますます期待が高まりますね。 では、次のレポートでお会いしましょう! Tschüss!

【ミライデザイン研究所】能動的に鑑賞してしまう展示方法と空間についての考察 -後編-

インサイドジール

みなさん、こんにちは! 2023年春の特別企画、「EuroShop2023視察レポート」をお送りいたします。 今回は考察編として実際に見て回った際に気づいたことや、今後我々も活かしていきたいアイデアをご紹介いたします。 ユーロショップの準備編は https://zeal-as.co.jp/euroshop2023-1/ をご覧ください。 【日本の展示会では見られない、壮大な造り】 ユーロショップだけではなく、海外の展示会は日本と出展規定(出展する際のブース造作に関するルール)が異なるため、全くと言ってもいいほどブースの表現方法が異なります。日本よりも非常にこだわり抜いた造形や素材を用いていたり、会場の天井から上物造作を吊っていたりと自由自在に空間表現がされているのが特長です。 〇吊り造作 上空に造作を設置できることで柱がなく、開放感あふれる空間になり来場者が入りやすくなっています。柱を落とす位置に左右されず造形も自由に組み合わせることが可能です。 〇ファブリック+システム部材 日本でも最近環境配慮を意識したブース制作が求められることが増加してきました。 ユーロショップでは、環境に配慮し産業廃棄物を極力減らすことを意識しており、木工造作よりもファブリック素材とシステム部材を組み合わせたブースが主流になっているのが日本と異なる点です。 「SCANBLUE社」 下記3社はシステム部材を取り扱っている企業になります。自社ブース自体が商材になっております。 「SYMA社」 このブースは二階建ての構造になっており、他社のブースよりもかなり高さが出ていて 目立っていました。 吊り構造や、外部からの柱の支えなしで、自立して8mの高さがあるとのことです。 中でスクリーンを用いて大勢に対してプレゼンができるエリアがありました。 「OCTANORM社」 日本でもよく使用されるオクタ部材で全て構成されたブースになっています。 (参考: https://www.octanorm.co.jp/ユーロショップ2023出展/) 「Aluvision社」 まだ設立20周年の若い企業ですが、最先端なシステム部材で、デザイン性の高いブースが製作できるのが強みです。 【こだわりの素材表現】 〇素材でムードをつくる さらに素材を用いて意匠的に活用されている例がありました。 まずは「L&S社」のブースになります。 上記のファブリック表現以外にも、より意匠的に使用されているブースになります。 シースルーな透け感のある布を重ね、中に展示してある照明器具の光が淡く映り込むことで、柔らかい雰囲気を醸し出しています。 「quattrobi社」 周りをメッシュ生地で囲ったブースになっています。 空間のブラックを踏襲した色になっていますが、重い印象なくスタイリッシュにおさめられています。 ぱっと見ではほぼ壁を感じず圧迫感なくも、ブースの外と内をきちんと分けるように設計されているブースが日本よりも多いです。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/Awards/EuroShop/peopleschoice-vote.asp) 「BEST MANNEQUIN社」では壁面を左官でおおっており、落ち着いたシックな空間を作ることで自社製品を活用するシーンやブランドイメージをうまく訴求していました。 ○環境配慮をアピールした表現 ステナブルを意識し、それをブースで表現するケースも多く見受けられました。 中でも「ITAB社」のブースは本物の植栽と、ボイド菅(コンクリートを打設する際に用いる紙管)で構成するという手法を用いていました。 (参考: https://itab.com) (参考: https://www.exhibitoronline.com/awards/euroShop/peopleschoice-vote.asp?fbclid=IwAR0COw5HuMOenKDeYkfjWCrriQs_fQXks7AYJQ3Nn0IMPb0weRcSZxq83sM) 素材の質感や色味を利用し、そこにグリーンを合わせることで環境配慮を印象付けるデザインで、上から吊るされている照明もロープ素材をうまく使い、全体のトーンに合わせながらもアイコニックな存在になっています。 ○異素材を組み合わせる 素材感の異なるものを組み合わせることで、空間が単調にならず表現幅もグッと広がります。 例えば「gokcelik社」はエキスパンドメタルと石膏シートを組み合わせて、スタイリッシュなトーンで構成されているブースになっていました。 参考: https://enbursa.com/gokcelik-en-yeni-urunlerini-euroshop2023-fuarinda-tanitti.html 「grottini社」 こちらも白のエキスパンドと植栽を組み合わせ、サステナブルさと先進さを表現できているブースになります。 (参考: https://4urspace.com/blog/2023/02/28/grottini-a-new-co-creative-technological-and-sustainable-era-starts-at-euroshop-2023/) 【カラー・グラフィックで人を引き寄せる】 日本ではブースにて製品説明用のグラフィックを作成するのが主流なため、必然と情報量が多く感じることがあります。 しかし、ユーロショップには、全世界の各地からさまざまな言語を使用する来場者が集まるため、言葉を交わさなくても自然とブース内に引き込まれるような「ブースデザインで人を引き寄せる」意識が強いです。 そこでポイントになってくるのが、カラーの使い方やグラフィックでの表現になってくると思われます。 ○圧倒的なカラー配色で目立たせる 「Hans Boodt Mannequins B.V.社」では、一面がパープルで構成されており、どのブースよりも世界観が作り込まれています。 外観にはコンテナの外壁もあり 一切中の様子が見えないようになっており、中に入ってみたくなる要素のひとつになっています。 (参考: https://www.hansboodt-maniquies.es/blog/2023/03/08/the-digital-revolution/) 内観は単管や透明素材など異素材同士をうまく組み合わせています。 ○グラフィカルな空間でワクワクさせる 「Imoon社」はイタリアにて照明設計を行なっており、各製品での照明を用いた見せ方をに紹介していました。ブース全体がカラフルかつグラフィカルなため、つい入ってみたくなる目立つブースです。 【コミュニケーションをとる、に特化させた構成】 ユーロショップでのブースで気づいたことがあります。 それが、「ブース内での商談スペースが非常に充実している」、そして「ステージ・プレゼンテーション用の造作がない」ということです。 また、会話のきっかけになり、かつ記憶に残すようなキャッチーな体験施策も用いられていました。 ○商談は飲食しながらゆったりと、が主流 どのブースもほぼ必ず商談のエリアがあります。そこで飲食を提供し、来場者をおもてなししながら会話するのが基本になっています。日本ではほとんど見られない雰囲気です。 (ITAB社) ○ブース全体がステージ!どこでもゲリラでデモンストレーション 「duo社」 人の手で簡単に組み立てられるシステムのデモンストレーションが行われていました。 組み立てにかかる時間を可視化してベストタイムを出せるかドキドキさせる演出にもなっています。 ブースの空いているスペースのその場で実演するゲリラ的演出で、 ステージを行なっていない際は製品展示ができるエリアになっています。 ○企業紹介を“体験”で伝える ものを使って記憶に残る体験を通して紹介を行なっていた企業を2社ピックします。 「Umdasch社」 (参考: https://www.umdasch.com/en/n/224-sustainable-togetherthe-umdasch-trade-fair-experie) ブースに入るとプカプカと水に浮かぶアヒルが出迎えてくれます。 各アヒルには、この企業のサービスや実績紹介などの情報がRFIDタグによって埋め込まれており、来場者はこのアヒルを釣ってモニターのセンサにかざすと映像にて紹介を受けることができるという、かわいらしくも記憶に残る体験です。 「BRACE GROUP社」 (参考: https://brace-group.com) 全体を大きなキッチンとし、自社のサービスを調味料、アウトプットや実績を料理に例えている、ワクワクしてつい話を聞きたくなるコンセプトです。 調味料缶(=自社サービス)裏のコードをフライパンに読み込ませると、お皿にあるディスプレイに盛り付けられる(=詳細説明)という仕組みです。 【総括】 2日間、あっという間でしたが、全て回りきることができず残念ですが、 世界での最大規模の展示会ということもあり、かなりボリューミーな展示になっておりました。コロナ禍以降の技術発展によりデジタル商材を大きく打ち出している企業がやはり多かったです。 ブースの装飾に関しては以下のような所感を得ました。 ○環境配慮への意識が高い まず、感じたのがファブリック+システム部材のブースが多いということです。 日本では木工造作がまだまだ主流でありますが、ドイツでは、ほとんど見受けられませんでした。 ドイツは環境保護意識が非常に高い国であり、展示会やイベントにおいても環境に配慮した取り組みが積極的に行われています。そのため、再利用可能な素材の使用が推奨され、一般的には環境に優しい素材の使用が奨励される傾向が高くなっていました。 ユーロショップでは、来場者が印象に残ったブースに投票するアワードがありますが、 最も多く表を集めたのが「ITAB社」と、やはりサステナブルなブースに注目が集まるとわかります。 (参考: https://www.exhibitoronline.com/news/article.asp?ID=23069) ○空間の力で惹きつけ、コミュニケーションを活性化させる施策 さらに、情報掲出は文字情報で訴求するよりも、ビジュアル・映像で魅せる手法が主に使われていました。日本とは異なり、情報を提供することよりも会話を生み出すことを重視するため、商談のエリアもカフェやレストランのようなおもてなし空間がほとんどでした。 当日立つスタッフの説明のしやすさも大切ですが、何よりも来場者がどうやったら自分たちの企業の世界観に惹かれて訪れてくれるかを意識し どんなに閉鎖的でも中に入ってみようと思うパワフルなブースデザインになっていました。 今後日本でのイベント・展示会デザインにおいて、空間の持つパワーをうまく生かすために、造作のアイデアの引き出しを増やしていくことを続けていきたいと思います。 そして、どうしても決められた枠に留まってしまいがちですが、新たなデザインにチャレンジしていく姿勢を忘れないようにしていきたいです。 次回開催は2026年の3年後になります。 3年後はどんな展示会になっているのか、ますます期待が高まりますね。 では、次のレポートでお会いしましょう! Tschüss!

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