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【ミライデザイン研究所】Chim↑Pom展で体験した 社会問題への強烈なアプローチ -後編-

インサイドジール 日本語記事

クリエーティブ局 デザイナーのIです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。 前編に引き続き、現在森美術館で開催中の「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」についてお届けします。 この企画を体験して感じた下記2点、 ①Chim↑Pomの作品・企画構成について ②作品のメッセージをより強める空間での工夫 のうち、後編では②についてお送りします。 ②作品のメッセージをより強める空間での工夫 前述したような作品やプロジェクトが与えるメッセージを強めるために、空間もとても大きな役割を担っているなと感じました。 いくつか空間や展示について感じた工夫を紹介させていただきます。 ◆くらいんぐみゅーじあむ(託児所) 展示会場に入るとまず目に入ったのは、「くらいんぐみゅーじあむ」という託児所でした。 Chim↑Pomメンバーと同世代の子育て事情から着想を得た新プロジェクトで、 より多くの子育て中の方々が気軽に美術館を訪れアートを鑑賞することができるようになることを目的としたものです。 美術館に限らず、子育てしている方々にとって配慮しきれていない施設やコンテンツは多くあるかと思いますが、 なかなかその事実に目を向けるきっかけはありません。 こういった「普段目が向きにくい事象」をこういった形で作品として可視化させ解決することで、 現在子育てされている方々が、アートにより集中できるのはもちろん、 子育てを経験していない私も普段なかなか目につきにくい世の中の問題や不便さに目を向けることができました。 ◆道 本展示会は、展示会場の1フロアの真ん中に床が作られており、前述した「Sukurappu &Birudo」の展示を抜けると、 上にはさらにフロアが広がっていて「道」というプロジェクトが展開されています。 この「道」はこの展示会のために建築家の周防貴之氏と共に構想・着想された 大規模なサイトスペシフィック・インスタレーション(その空間を生かして制作する表現)です。 このプロジェクトでは「拓かれたアスファルトの区画を運営し、道を育てる」というコンセプトのもとに 道を育てる「運営者」を募りそれぞれの独自の「運営」によって「道を育てる」ことを目的としています。 実際にこの「道」ではダンスやイラストなどのパフォーマンスをしている人がいたり、 ただただ寝転がっている人がいたり、俳句の公募がされていたりなど様々な「表現」が行われていました。 この「道」というプロジェクトは日々変化し、私たちに「公共」という言葉の意味を改めて問いかけます。 参加型の展示や企画は多くありますが、空間を分断し、その上に道を作り、 さらにそこに一般の方々が募りそれぞれの「表現」を展開するという一連の流れは、 参加型の展示としての一種の「究極形」のように感じました。 ◆ゴールド・エクスペリエンス こちらは「ゴールド・エクスペリエンス」という巨大なバルーンの立体作品で、 2012年、東京渋谷にて行われた個展にて発表された作品です。 渋谷のゴミが増加していることに目を向けさせることを目的とした作品となっており、 実際に中に入ることで普段ゴミを捨てる側の自分自身がゴミになってしまうという内容です。 こちらの展示と合わせて、それぞれの都市にある環境などの問題の原因物質をゴミ袋に採取し、 ゴミ出しとして捨てるパフォーマンス映像なども制作されていたそうです。 こういった社会問題は普段目を背けがちで、ポスターや演説などで一時的に目や耳に入ったとしても なかなか改めて考えるきっかけにはなりません。 しかしこの「ゴールド・エクスペリエンス」では巨大なモチーフにて目を引き、 さらに中に入るという「空間的工夫」により「体験」を生み、より大きなインパクトを人々に与え、考えさせるきっかけを作ります。 ◆まとめ 今回は「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」の内容を通して、 社会問題に対する企画や空間でのアプローチに触れさせていただきました。 ただ作品を展示する場合は、作品を見ている間は色々と考えたり、 感動はあるかもしれませんが、その場限りのものになってしまいがちです。 「Sukurappu& Birudoプロジェクト」のような「ストーリー性のある企画」や 「道」「ゴールド・エクスペリエンス」などの「空間をダイナミックに使った展示」は人々を振り向かせ、 その問題について考えられずにはいられなくなるような衝撃を鑑賞者に与えます。 こういった「強引なほどのアプローチ」が「Experience Design」を生むのかもしれないと思いました。 また、ご紹介させていただいた「くらいんぐみゅーじあむ」により、 小さなお子様のいる方でも安心してアートに集中できる環境作りがされていたり、 作品完成までの流れや出来事などが記載された年表が各エリアに配置されていて、 背景を知った上で鑑賞することで、鑑賞者側が作品のメッセージをより細かな部分まで感じ取れるようになっていたりと、 自分達の作品に集中させ「メッセージが伝わりやすい環境づくり」が徹底されているなと感じました。 ご紹介した展示は、5月29日まで森美術館で開催されております。 今回紹介しきれなかった作品はもちろん、前述した「道」については日々変化しさらなる盛り上がりを見せているかと思います。 気になった方はぜひ実際に体験してみてください。 ■参考 ・「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」公式サイト:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/chimpom/ ・Chim↑Pom公式サイト:http://chimpom.jp/

【ミライデザイン研究所】Chim↑Pom展で体験した 社会問題への強烈なアプローチ -前編-

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クリエーティブ局 デザイナーのIです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。 前編に引き続き、現在森美術館で開催中の「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」についてお届けします。 この企画を体験して感じた下記2点、 ①Chim↑Pomの作品・企画構成について ②作品のメッセージをより強める空間での工夫 のうち、後編では②についてお送りします。 ②作品のメッセージをより強める空間での工夫 前述したような作品やプロジェクトが与えるメッセージを強めるために、空間もとても大きな役割を担っているなと感じました。 いくつか空間や展示について感じた工夫を紹介させていただきます。 ◆くらいんぐみゅーじあむ(託児所) 展示会場に入るとまず目に入ったのは、「くらいんぐみゅーじあむ」という託児所でした。 Chim↑Pomメンバーと同世代の子育て事情から着想を得た新プロジェクトで、 より多くの子育て中の方々が気軽に美術館を訪れアートを鑑賞することができるようになることを目的としたものです。 美術館に限らず、子育てしている方々にとって配慮しきれていない施設やコンテンツは多くあるかと思いますが、 なかなかその事実に目を向けるきっかけはありません。 こういった「普段目が向きにくい事象」をこういった形で作品として可視化させ解決することで、 現在子育てされている方々が、アートにより集中できるのはもちろん、 子育てを経験していない私も普段なかなか目につきにくい世の中の問題や不便さに目を向けることができました。 ◆道 本展示会は、展示会場の1フロアの真ん中に床が作られており、前述した「Sukurappu &Birudo」の展示を抜けると、 上にはさらにフロアが広がっていて「道」というプロジェクトが展開されています。 この「道」はこの展示会のために建築家の周防貴之氏と共に構想・着想された 大規模なサイトスペシフィック・インスタレーション(その空間を生かして制作する表現)です。 このプロジェクトでは「拓かれたアスファルトの区画を運営し、道を育てる」というコンセプトのもとに 道を育てる「運営者」を募りそれぞれの独自の「運営」によって「道を育てる」ことを目的としています。 実際にこの「道」ではダンスやイラストなどのパフォーマンスをしている人がいたり、 ただただ寝転がっている人がいたり、俳句の公募がされていたりなど様々な「表現」が行われていました。 この「道」というプロジェクトは日々変化し、私たちに「公共」という言葉の意味を改めて問いかけます。 参加型の展示や企画は多くありますが、空間を分断し、その上に道を作り、 さらにそこに一般の方々が募りそれぞれの「表現」を展開するという一連の流れは、 参加型の展示としての一種の「究極形」のように感じました。 ◆ゴールド・エクスペリエンス こちらは「ゴールド・エクスペリエンス」という巨大なバルーンの立体作品で、 2012年、東京渋谷にて行われた個展にて発表された作品です。 渋谷のゴミが増加していることに目を向けさせることを目的とした作品となっており、 実際に中に入ることで普段ゴミを捨てる側の自分自身がゴミになってしまうという内容です。 こちらの展示と合わせて、それぞれの都市にある環境などの問題の原因物質をゴミ袋に採取し、 ゴミ出しとして捨てるパフォーマンス映像なども制作されていたそうです。 こういった社会問題は普段目を背けがちで、ポスターや演説などで一時的に目や耳に入ったとしても なかなか改めて考えるきっかけにはなりません。 しかしこの「ゴールド・エクスペリエンス」では巨大なモチーフにて目を引き、 さらに中に入るという「空間的工夫」により「体験」を生み、より大きなインパクトを人々に与え、考えさせるきっかけを作ります。 ◆まとめ 今回は「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」の内容を通して、 社会問題に対する企画や空間でのアプローチに触れさせていただきました。 ただ作品を展示する場合は、作品を見ている間は色々と考えたり、 感動はあるかもしれませんが、その場限りのものになってしまいがちです。 「Sukurappu& Birudoプロジェクト」のような「ストーリー性のある企画」や 「道」「ゴールド・エクスペリエンス」などの「空間をダイナミックに使った展示」は人々を振り向かせ、 その問題について考えられずにはいられなくなるような衝撃を鑑賞者に与えます。 こういった「強引なほどのアプローチ」が「Experience Design」を生むのかもしれないと思いました。 また、ご紹介させていただいた「くらいんぐみゅーじあむ」により、 小さなお子様のいる方でも安心してアートに集中できる環境作りがされていたり、 作品完成までの流れや出来事などが記載された年表が各エリアに配置されていて、 背景を知った上で鑑賞することで、鑑賞者側が作品のメッセージをより細かな部分まで感じ取れるようになっていたりと、 自分達の作品に集中させ「メッセージが伝わりやすい環境づくり」が徹底されているなと感じました。 ご紹介した展示は、5月29日まで森美術館で開催されております。 今回紹介しきれなかった作品はもちろん、前述した「道」については日々変化しさらなる盛り上がりを見せているかと思います。 気になった方はぜひ実際に体験してみてください。 ■参考 ・「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」公式サイト:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/chimpom/ ・Chim↑Pom公式サイト:http://chimpom.jp/

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