【ミライデザイン研究所】空間におけるコラージュ表現の可能性 -前編-
2022.11.15クリエーティブ本部 デザイナーのSです。
【ミライデザイン研究所】とはーーー
空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、
考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想し、アイデアにプラスしていく、そんな企画です。
今回のトピックは、瀬戸内国際芸術祭2022でアーティストの大竹伸朗が手がけた
「直島銭湯『I♥湯』」、「女根 / めこん」、「家プロジェクト:はいしゃ」という三つの作品についてお送りいたします。
以下、三つの作品の概要です。
■直島銭湯「I♥湯」(以下、I♥湯)
・鮮やかな天井画を再制作
実際に入浴できる美術施設。
町民の活力源として、また国内外からのお客様との交流の場としてつくられた。
(瀬戸内国際芸術祭2022公式HPより)■女根 / めこん(以下、めこん)
・校舎から校庭まで大竹テイストが随所に
島で育った大きな椰子の周りに、タイルのモザイクやワニのオブジェ、船材などを配置。
休校中の小学校と植物、作品が響き合う。
(瀬戸内国際芸術祭2022公式HPより)■家プロジェクト:はいしゃ(以下、はいしゃ)
・家プロジェクト
直島特有の家屋や寺社などを改修し、現在も生活が営まれる地域で、空間そのものを作品化。現在では7軒が公開中。
・感覚からたどる夢の記憶の過程がテーマ
かつての歯科医院兼住居を作品化。
ペインティングやスクラップなど、多様なスタイルによる作品。
(瀬戸内国際芸術祭2022公式HPより)
大竹伸朗はコラージュという表現手法が知られており、
今回の瀬戸内国際芸術祭における三つの作品はただ絵画の技法としてのコラージュだけではなく、
島の精神と既存の空間を踏まえて異なる素材や要素を取り入れた空間になります。
そこで、「媒体のコラージュ」、「文化のコラージュ」、「記憶のコラージュ」
という三つの観点から空間におけるコラージュの可能性を考察していきたいと思います。
【媒体のコラージュ:カオスから生まれた圧倒的なエネルギー】
こちらはかつて歯科医院だった「はいしゃ」という作品の外観です。
解体されたスクラップでビルの外観を構成しており、その上に枯れた木が象徴的に配置されています。
島本来の緑の中に、金属スクラップの一軒家が現れるという有機物と無機物の組み合わせが力強く響き合っています。
ビルの中に入ると、壁は狂気に溢れたドローイングに覆われており、
厚く重なったり垂らしたりしているアクション・ペイティングが見られます。
右に曲がると、青いペイティングで仕上げた青い部屋があります。
古民家本来の控え目の素材の上に、抽象的なペイティングを加えたことで、
豊かなテクスチャのレイヤーを作り出せて飽きない鑑賞体験になっていると感じます。
また、休校になっている学校を丸ごと作品化された「めこん」でも同じ手法が見られます。
廊下には切られた太い幹が埋められ、
ペインティング・タイルやネオンカラーに染めた天井のステンドグラスという有機物と無機物の素材がお互いに反射し合っています。
こちらは直島の銭湯「I♥湯」の外観です。
夜になって島の最も光っているパワースポットになるネオンの看板、
そして空まで伸びた「ゆ」文字は聳え立った両側の椰子と共鳴する不思議な衝突感を与えつつ、暖かい南国らしさが感じられます。
このように異なる媒体を同じ空間に配置することで、
普段目にしない素材の組み方なのでカオスから生まれる圧倒的なパワーを伝えられとても新鮮で魅力的です。
中編では、異なる文化の背景の持つ要素を切り抜き、
再構成させる「文化のコラージュ」という手法についてご紹介します。
【参考】
瀬戸内国際芸術祭2022公式HP:https://setouchi-artfest.jp/