【ミライデザイン研究所】バーチャル配信での発見

インサイドジール

クリエーティブ本部 デザイナーの関です。
今回は新企画で【ミライデザイン研究所】という連載を立ち上げることにしました。
空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていくそんな企画になります。

今回トピックにあげるのは「バーチャル配信」についてです。
バーチャル配信というのは、CG空間の中に合成で人や物を入れ、配信していくという内容のものです。
例を出すと、テレビ番組などで天気予報の際に、クロマキーを使用しCGの合成で映像を配信していますが、あのような仕組みです。

最近ではありがたいことにオンラインに関する問い合わせを数多くいただいております。
その中には、今までにはなかった新たな発見や今後に生かしていけそうなアイデアがたくさんあり、領域の垣根を少し超えただけでこんなにも新しい発見があるのかと業務を進めていく中で日々驚いています。笑
その中から、いくつかピックアップして今回はご紹介していけたらと思います!

配信を意識した照明設計って?
CGを制作するにあたり、いかに人を自然にCG空間に溶け込ませるか、皆様ならどう考えますでしょうか?
カメラアングル・クロマキーへの配慮・撮影環境とCGのスケール感を合わせることなど、意識しなくてはならない項目が目白押しですが、中でも重要だと感じたのは「照明」です。
人は、自然と光が反射することで色を認識しています。
スタジオの中はクロマキーで緑が多く、どうしても出演者にその光が写り込んできてしまいます。
そうした場合、編集の際に半分CGを拾ってしまうという問題が生じCG上の人が半分透明人間のように見えてしまう可能性が出てきます。

専門にやっている方に話を聞くと、このような問題が生じた際には、リアルでの対策とCG上での対策が思いつくとのことです。
まず、リアルでの対策としてはクロマキー自体を撮影者からなるべく遠ざけて撮影することが重要だそうです。
そうすることで撮影者が緑の光を拾うことを最低限に抑えることができ、CGに合成された際なじみやすくなります。

この考えからいくと、撮影者の服装も白など明るい色だと光を拾ってしまいやすいと考えられますね。なので、提案の際は、色味を考慮した衣装を選ぶようにしましょう。
また、CG上でも光のことを意識しなくてはなりません。
CG上で出演者の立ち位置に近いところに照明を配置するとリアル空間で出演者にその角度から光を当てなくてはなりません。
そのため特殊な光をCG上で作成した場合、出演者にその光が実際当たっているようにみせるためにリアルでも特殊な光をあてる必要があります。
例えば床が光っていて出演者の周りを回るとします。
そうするとリアルでもそのような光が実際回っているように作成する必要があるということです。
この辺りはコストやスタジオ環境によって可能かどうか決まってくるので、CG上でうまく見せるには配慮しつつデザインしていくのが1つポイントです。

素材選びが重要!?
クロマキーで映像を合成するにも、出演者周りはリアルな造作を作ることが多いです。
なぜかというと、リアルな造作を作ることでいくつかのメリットがあるからです。

メリット1、先ほど説明したクロマキーの色を拾わないため。
メリット2、リアル造作とCG表現を混在させた方が編集した際に違和感を減らせる
メリット3、リアルな造作が近くにあった方が出演者が演技しやすい。

その中でも、2つ目のリアル造作とCG表現を混在させた方が編集した際に違和感を減らせるというのが1番のメリットになります。
その際には、マテリアル選びに注意が必要です。
前述で述べた照明の話を思い出してください。光を反射してしまうマテリアルは避けるようにしましょう。
例えば、金属製の鉄パイプがクロマキーの中にあったとします。
金属製の鉄パイプは光を反射してしまうので、周りの色を拾ってしまい、映像とうまく合成できないのは想像できるかと思います。
反射の影響を考意識することは素材を選ぶ際にも意識しなければならないことの1つです。
とはいえ空間デザイナーとして、マットな質感でしか空間設計ができないというのは息苦しく感じます。
反射する素材を使用したい場合は、空間から排除するのではなくCG上での表現として見せることができるように設計していきたいですね。

クロマキー造作はシンプルでいい
以前行われた配信イベントでは、出演者が登壇する姿を自然に見せるために、造作で舞台などにある袖をパネルで建て、そこから実際に出演者が登壇できるようにしたそうです。
このやり方は、設置されたカメラが座標を把握しているため、自然に合成できるようです。
かえって見切れる位置を合わせる方が大変そうですよね。
他にもスタジオでは天井部分に照明バトンがたくさん吊ってありますが、これも出演者と被ってくることがないため合成で隠せてしまいます。
編集でできることが多いので、こちらも余計な造作を増やすことはしない方が良いようです。

ワイプを意識したデザイン
普段注目していなかった場所からこんな発見がありました。
意識してみないとあまり注目されない番組のセットですが、皆さんは着目したことはありますか?
私は、最近の配信案件などが入ってくる中で自然と注目してみるようになってしまいました。
日本のテレビ番組のセットってすごく作り込まれているものが多いですよね。
海外の放送番組と比べるとセットのスケールは小さいですが、細かい備品や装飾までぎっしりと埋まっているイメージが多い気がします。
テレビでは放送中映像シーンに切り替わるものがあったりしますが、そこではワイプといって画面の端に顔周りを切り抜かれて表情が見えるように撮影されたりしています。その際、どの画面を見ても背景になにかしら写っていることに気がつきました。
これは、バラエティ番組だけでなくニュース番組でも同じことが言えます。
リアル空間に落として考えると、例えばe-sports案件などで配信者や実況席の背景に密度の濃いデザインを落とすことで、画面自体に見応えがでてくるのかなと感じます。

CG空間デザインに求められること
CG空間の考え方と、リアル空間の考え方はやはり違うなと最近すごく感じます。
例えば、CG上で重力を無視したような造作で色々なものが宙に浮いているとします。
リアルであれば、無視できない条件があるため(重力、光等)人は、その違和感が心地よかったり、目に止まりやすくなったりします。
しかしCG上だと、視聴者からすると、ここはどんな空間なのか想像できなくなってしまいます。
「CG=なんでも表現できる」ではなく「CG=イメージが伝わりづらい」だと考えてください。
リアル以上にCG上では場所の設定を意識し空間を構成する必要があります。
わかりやすく説明的に設定を意識した備品など置くのも1つの手法としてありだと感じます。
他にもCG空間から見える外の景色で場所を説明的に表現してもいいですし、アングルを考え、空間全体に奥行きを持たせその先を視聴者に想像させる見せ方も表現方法の1つとして挙げられるかと思います。

映像の世界からリアルの空間へ
最近ではコロナの影響もあり在宅で動画を見る人が増え、ショートムービープラットフォームやYou Tubeがさらに勢いを加速させています。
その中でも注目したいものがVtuberです。
これはアニメやゲーム系の展示会が復活した際、トレンドになってくる可能性が高いと思い個人的に注目していいます。配信事業にはまだこういった設備がないですが、ステージで今までのように振る舞うだけでなく、書き割りが動いていたり喋っていたりしたらもっと面白くなると思っています。
10年以上前のモーターショーでバーチャルコンパニオンを展示しているブースがありました。
実際に録画したコンパニオンをマッピングでアクリルに投影しているものになります。
最近ではAIやロボット展示が多いですが、VTuberのように配信技術を生かし、当時のバーチャルコンパニオンのような展示ではなく、さらに生身の人間が受け答えをする、そんなことができたらさらに面白くなると考えたりします。

バーチャル配信は現在コロナの影響もあり注目度が高いと思いますが、私はいつかリアルの復活があると信じています。配信もそうですが、この時期に今まで触れてこなかった領域に触れることで様々な発見があります。
リアルイベントにいつか還元できるよう日々インプットし、今後のデザインを考えていく上でプラスになる面白い情報を発信していければと思います。

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【ミライデザイン研究所】
専門とする空間デザインの領域だけでなく、オンライン事業やプロダクト、都市開発、映像など様々な領域からインスピレーションを経て、今後のデザインにプラスしていく