インサイドジール

【ミライデザイン研究所】国際スポーツイベントのデザインから学ぶこと

2021.09.03

クリエーティブ本部 デザイナーのNです。

【ミライデザイン研究所】とはーーー
空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、
考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。

今回のトピックは今夏に開催された国際スポーツイベントにまつわるデザインについてです。
それらは日本を代表する名だたるデザイナーが手がけているということで、トップデザイナー達が各所に散りばめたデザインについて、
大会を振り返りつつ皆様とともに学んでいきたいと思います。

今回触れていく内容として、大会に無くてはならない
・大会エンブレム(表彰台)
・競技ピクトグラム
上記2点にフォーカスを当てていきます。

まず、導入として、大会エンブレムと競技ピクトグラムに触れる前にデザインの根幹となる大会コンセプトを振り返ろうと思います。
今大会のコンセプトは“全員が自己ベスト” “多様性と調和” “未来への継承”でした。
今回はこの中でもデザインにおいて言えば、“多様性と調和”“未来への継承”この2つが大きく影響していた印象を受けました。
現在、世界のトレンドワードと言ってもいいような“多様性と調和”と、今後の日本に求められる“未来への継承” ですが、
実際デザインに落とし込むとなった際、とても難易度が高いワードだと思います。
そんな難しい課題をどのように実現したか見ていきたいと思います。

大会エンブレム
今回のエンブレムは、美術家の方によってデザインされました。

(エンブレム概要)
https://olympics.com/tokyo-2020/ja/games/emblem/

このエンブレムの勉強になったポイントとしては、
「すでにあるデザイン(今回で言うところの市松模様)に意味を掛け合わせ、新しいものを創造する」という考え方です。
デザインをする上でも、0から1は難しくても、「すでに存在する●●と▲▲を掛け合わせることで新しいものを生み出す」
という考え方は、クリエーターとして重宝していかなければならないと改めて感じました。
ちなみにエンブレムは模様の組み替えパターンが53万通り以上もあるらしく、
まさに今大会のコンセプトである“多様性と調和”の表現に適したデザインだと言えると思います。

エンブレムの市松模様が使用されていた表彰台については、エンブレムをただ平面で印刷して使用するのではなく、
3Dプリンターによって立体的に造作することで日本の伝統的なデザインを現代のデザインとして昇華させたように感じました。

大会ピクトグラム
開会式で話題になったピクトグラムは、グラフィックデザイナーの方によってデザインされました。

(ピクトグラム概要)
https://olympics.com/tokyo-2020/ja/news/news-20190312-01-ja

このピクトグラムを通して勉強になったのは、
・強いデザインは継承され残っていく事
・Try&errarがデザインを洗練させていく事
です。
この2点はデザイナーをはじめクリエーターの方々なら当たり前と感じるかもしれませんが、
その”当たり前”が顕著に出たデザインだったと思います。

・強いデザインは継承され残っていく事
言葉ではなく誰にでも伝わるデザインのピクトグラム。
これを浸透させたのは前回の東京での開催時でした。この時に生まれた、とも言われるほどです。
当時「外国語でのコミュニケーションが難しい」という課題を解決するために発案されました。
そんなピクトグラムが開催当初から現代に至るまで50年以上も残り続けている事を考えると、
ピクトグラムというカテゴリーを生み出すほどの強いデザインは後世にも残っていくことを改めて感じました。
デザインはそもそも課題解決の手段であり、今大会で改めてピクトグラムを見てみるとデザインとは何なのか、
デザイナーは何をすべきかなど、デザインそのものの在り方を考えさせられます。

・Try & errorがデザインを洗練させていく事
胴体を抜き、手足や競技に使用される道具(ギア)の特性を表現していた今大会のピクトグラム。
競技の特徴を浮き上がらせる為、一切の無駄を省くことで、洗礼されたものになっていました。
初期ではひらがなや鳥獣戯画をモチーフにする案も出ていたそうですが、全種目に割り振ることができずに却下されたと言います。
そんなピクトグラムは完成に至るまでの“2年間の内、20回以上もデザインを更新されたそうです。
そんな試行錯誤の上に成り立つ今大会のピクトグラム。
洗練されたデザインの裏側には、トップデザイナーの経験+努力(Try & error)が隠されているという事です。
現段階での成果物に対して満足をするのでは無く、飽くなき探究心をもちデザインに接する大切さを学びました。

まとめ
今回は国際スポーツイベントにフォーカスを当て、トップデザイナーのデザインについて感じたことを綴ってみました。
世の中はデザインで溢れています。
さまざまなデザインに目を向け、意図や成り立ちから調べると新たな発見とともに多くのことを学べると思います。
是非皆様も、なにか一つのデザインを掘り下げてみると面白いかもしれません!

<参考>
https://www.parasapo.tokyo/topics/22117
https://olympics.com/tokyo-2020/ja/games/emblem/
https://olympics.com/tokyo-2020/ja/news/news-20190312-01-ja