【ミライデザイン研究所】空間におけるコラージュ表現の可能性 -中編-
2022.11.21クリエーティブ本部 デザイナーのSです。
【ミライデザイン研究所】とはーーー
空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、
考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想し、アイデアにプラスしていく、そんな企画です。
前編の「直島銭湯『I♥湯』」に引き続き、
瀬戸内国際芸術祭2022の作品、「女根 / めこん」「家プロジェクト:はいしゃ」についてお届けいたします。
【文化のコラージュ:広く愛される無国籍らしい空間】
大胆な媒体の使用以外にも、
異なる文化の背景の持つ要素を切り抜き再構成させる「文化のコラージュ」という手法を観察しました。
こちらは「はいしゃ」の中の風景です。
古民家にこのような巨大の自由の女神像を置こうと思う人はなかなかいないと思いますが、
実際に見ると何となく似合っています。
アメリカ文化の象徴である自由の女神像が日本の民家に突然現れるというのは、
米国をはじめとして異文化をたくさん受け入れている多文化を融合した現代の日本の姿を連想させます。
実は作者によると、以前地方の国道沿いでこのような巨大な自由の女神像を見かけ、
なぜ日本人はこのようなものを建てたいのか気になっていたところ、
その後、レンタルビデオ店で看板として使われた自由の女神像を偶然見つけて、手に入れたという経緯があるそうです。
「めこん」の中庭でも女神像が置かれており、吊り下げのネオンやコラージュ写真を埋め込まれているアクリル床があります。
周囲の道に貼られているタイルをよく観察すると、
タイ語・英語・中国語・日本語が書かれたレトロなフライヤーを切り抜いた画像が見えます。
全体的にネオングリーン・ネオンピンクの配色になっている廊下や、
光の反射でカラーを空間に染めつけるステンドグラスとシックな宇宙的な空気感が生まれています。
一般的には世界観の混乱を避けるために異文化の要素を同じ空間に配置しないのですが、
外国人がたくさん来場する瀬戸内国際芸術祭という場所では、このように様々な文化を取り入れたことで、
誰にも愛される空間になっていると感じます。
後編では、「媒体のコラージュ」や「文化のコラージュ」より中心のコンセプトとする「記憶のコラージュ」についてご紹介します。
【参考】
瀬戸内国際芸術祭2022公式HP:https://setouchi-artfest.jp/