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【ミライデザイン研究所】空間におけるコラージュ表現の可能性 -後編-

インサイドジール 日本語記事

クリエーティブ本部 デザイナーのSです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想し、アイデアにプラスしていく、そんな企画です。 中編に引き続き、瀬戸内国際芸術祭2022の作品、 「女根 / めこん」「家プロジェクト:はいしゃ」についてお届けいたします。 【記憶のコラージュ:満遍なく展開させた一つのキーワード】 「媒体のコラージュ」や「文化のコラージュ」より中心のコンセプトとする「記憶のコラージュ」は、 作品において最も重要な考え方になっていると考えます。 三つの作品とも、その島ならではの精神と記憶を元に1つのキーワードで空間を設計されています。 「はいしゃ」では、かつて歯科医院ということで「歯」をテーマに展開していました。 こちらはビルに入る前にある階段の砂壁です。 アイコンとなる各種歯のペンティング・タイルだけではなく、 壁に近づいてじっくり見ると小さいな陶器製の歯が所々埋め込まれています。 また、ビルの中の床には、歯のレントゲン写真が散らばっています。 そして、左の黒い部屋に入ると、巨大な黒い歯のインストレーションが現れます。 ペイティング・陶器・写真・インストレーションといった異なる表現で 「歯」というテーマを貫通させ印象的なアイデアの展開になっています。 「めこん」では、女木島の「生命力」というコンセプトだと思われます。 学校の核としての中庭には、島で育った大きな椰子に赤いフレームで囲まれ、 スクラップや船材などのパーツを再構築することで女木島の精神を表現していると思います。 天辺に風で回転する「めこん」のアイコンのようなものは、 島の呼吸と共振して生きているというような印象を受けました。 そして「I♥湯」では、島の高齢者が自宅での入浴が難しくなっているので銭湯が欲しいという声が上がりました。 そこで、国内外の来島者と島民が交流できる場というコンセプトの銭湯を作るに至ったそうです。 直島の象徴としてこの銭湯が認識されています。 「めこん」と同じく島で育った椰子をそのまま空間に活かし、 島の岩・海・波などのモチーフを書かれたタイルをたくさん飾られていました。 タイルの周囲にリゾット風のサンメントをバランスよく配置することで、 暖かくエキゾチックな南国情緒をあふれる空間になります。 【まとめ】 コラージュという手法だからこそ、色々な要素を組み合わせても成り立つというのもありますが、 異なる素材の遊びから配色の冒険、そして極めたコンセプトの展開まで勉強になり、 ちょっとした変わったデザインを作りたい際に良い手本となる作品だと思います。 島での展示は普段都内の美術館では馴染まない珍しい表現手法がたくさん見られて楽しいので、 ぜひ来年の瀬戸内国際芸術祭まで足を運んでいただけたらと思います。 【参考】 ▼瀬戸内国際芸術祭2022 https://setouchi-artfest.jp ▼北川フラム×大竹伸朗、銭湯やラブホテル...日本の“ローカル”に見い出す新たな価値観【対談2/2】 https://www.fashion-headline.com/article/5014 ▼「2,000個の陶器製の歯」が出迎える――大竹伸朗「はいしゃ」追加制作ドキュメント https://benesse-artsite.jp/story/20210825-1771.html

【ミライデザイン研究所】空間におけるコラージュ表現の可能性 -中編-

インサイドジール 日本語記事

クリエーティブ本部 デザイナーのSです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想し、アイデアにプラスしていく、そんな企画です。 前編の「直島銭湯『I♥湯』」に引き続き、 瀬戸内国際芸術祭2022の作品、「女根 / めこん」「家プロジェクト:はいしゃ」についてお届けいたします。 【文化のコラージュ:広く愛される無国籍らしい空間】 大胆な媒体の使用以外にも、 異なる文化の背景の持つ要素を切り抜き再構成させる「文化のコラージュ」という手法を観察しました。 こちらは「はいしゃ」の中の風景です。 古民家にこのような巨大の自由の女神像を置こうと思う人はなかなかいないと思いますが、 実際に見ると何となく似合っています。 アメリカ文化の象徴である自由の女神像が日本の民家に突然現れるというのは、 米国をはじめとして異文化をたくさん受け入れている多文化を融合した現代の日本の姿を連想させます。 実は作者によると、以前地方の国道沿いでこのような巨大な自由の女神像を見かけ、 なぜ日本人はこのようなものを建てたいのか気になっていたところ、 その後、レンタルビデオ店で看板として使われた自由の女神像を偶然見つけて、手に入れたという経緯があるそうです。 「めこん」の中庭でも女神像が置かれており、吊り下げのネオンやコラージュ写真を埋め込まれているアクリル床があります。 周囲の道に貼られているタイルをよく観察すると、 タイ語・英語・中国語・日本語が書かれたレトロなフライヤーを切り抜いた画像が見えます。 全体的にネオングリーン・ネオンピンクの配色になっている廊下や、 光の反射でカラーを空間に染めつけるステンドグラスとシックな宇宙的な空気感が生まれています。 一般的には世界観の混乱を避けるために異文化の要素を同じ空間に配置しないのですが、 外国人がたくさん来場する瀬戸内国際芸術祭という場所では、このように様々な文化を取り入れたことで、 誰にも愛される空間になっていると感じます。 後編では、「媒体のコラージュ」や「文化のコラージュ」より中心のコンセプトとする「記憶のコラージュ」についてご紹介します。 【参考】 瀬戸内国際芸術祭2022公式HP:https://setouchi-artfest.jp/

本社移転のお知らせ

お知らせ 日本語記事

時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 毎々格別のご高配を賜り、誠に有難く厚くお礼申し上げます。 この度、さらなる社業の発展の為、12月12日に本社を移転することと相成りました。 これを機に社員一同、猛烈に情熱的に一層精励し、皆様のご期待に添う所存です。 今後とも何卒倍旧のご愛顧を賜ります様お願い申し上げます。 令和4年11月吉日 株式会社ジールアソシエイツ 代表取締役 永門 大輔 新所在地 〒104-0061 東京都中央区銀座1丁目19-7 JRE銀座一丁目イーストビル8F ※移転に伴う電話番号/FAX番号の変更はございません。 【株式会社ジールアソシエイツ 概要】 本社 東京都中央区銀座1丁目19-7 JRE銀座一丁目イーストビル8F 設立 2004年1月23日 代表 代表取締役 永門 大輔 事業内容 スペースデザイン事業 コミュニケーションプランニング事業 インタラクティブコミュニケーション事業 HP https://www.zeal-as.co.jp Facebook https://www.facebook.com/ZEALAssociates twitter https://twitter.com/zealas Instagram https://www.instagram.com/zealassociate_corp/ 【本件リリースに関するお問い合わせ先】 株式会社ジールアソシエイツ コーポレート本部 東京都中央区銀座1丁目19-7 JRE銀座一丁目イーストビル8F Tel : 03-6264-2690 / Fax : 03-6264-2693 E-mail : kanri@zeal-as.co.jp Web : https://www.zeal-as.co.jp

【ミライデザイン研究所】空間におけるコラージュ表現の可能性 -前編-

インサイドジール 日本語記事

クリエーティブ本部 デザイナーのSです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想し、アイデアにプラスしていく、そんな企画です。 今回のトピックは、瀬戸内国際芸術祭2022でアーティストの大竹伸朗が手がけた 「直島銭湯『I♥湯』」、「女根 / めこん」、「家プロジェクト:はいしゃ」という三つの作品についてお送りいたします。 以下、三つの作品の概要です。 ■直島銭湯「I♥湯」(以下、I♥湯) ・鮮やかな天井画を再制作 実際に入浴できる美術施設。 町民の活力源として、また国内外からのお客様との交流の場としてつくられた。 (瀬戸内国際芸術祭2022公式HPより) ■女根 / めこん(以下、めこん) ・校舎から校庭まで大竹テイストが随所に 島で育った大きな椰子の周りに、タイルのモザイクやワニのオブジェ、船材などを配置。 休校中の小学校と植物、作品が響き合う。 (瀬戸内国際芸術祭2022公式HPより) ■家プロジェクト:はいしゃ(以下、はいしゃ) ・家プロジェクト 直島特有の家屋や寺社などを改修し、現在も生活が営まれる地域で、空間そのものを作品化。現在では7軒が公開中。 ・感覚からたどる夢の記憶の過程がテーマ かつての歯科医院兼住居を作品化。 ペインティングやスクラップなど、多様なスタイルによる作品。 (瀬戸内国際芸術祭2022公式HPより) 大竹伸朗はコラージュという表現手法が知られており、 今回の瀬戸内国際芸術祭における三つの作品はただ絵画の技法としてのコラージュだけではなく、 島の精神と既存の空間を踏まえて異なる素材や要素を取り入れた空間になります。 そこで、「媒体のコラージュ」、「文化のコラージュ」、「記憶のコラージュ」 という三つの観点から空間におけるコラージュの可能性を考察していきたいと思います。 【媒体のコラージュ:カオスから生まれた圧倒的なエネルギー】 こちらはかつて歯科医院だった「はいしゃ」という作品の外観です。 解体されたスクラップでビルの外観を構成しており、その上に枯れた木が象徴的に配置されています。 島本来の緑の中に、金属スクラップの一軒家が現れるという有機物と無機物の組み合わせが力強く響き合っています。 ビルの中に入ると、壁は狂気に溢れたドローイングに覆われており、 厚く重なったり垂らしたりしているアクション・ペイティングが見られます。 右に曲がると、青いペイティングで仕上げた青い部屋があります。 古民家本来の控え目の素材の上に、抽象的なペイティングを加えたことで、 豊かなテクスチャのレイヤーを作り出せて飽きない鑑賞体験になっていると感じます。 また、休校になっている学校を丸ごと作品化された「めこん」でも同じ手法が見られます。 廊下には切られた太い幹が埋められ、 ペインティング・タイルやネオンカラーに染めた天井のステンドグラスという有機物と無機物の素材がお互いに反射し合っています。 こちらは直島の銭湯「I♥湯」の外観です。 夜になって島の最も光っているパワースポットになるネオンの看板、 そして空まで伸びた「ゆ」文字は聳え立った両側の椰子と共鳴する不思議な衝突感を与えつつ、暖かい南国らしさが感じられます。 このように異なる媒体を同じ空間に配置することで、 普段目にしない素材の組み方なのでカオスから生まれる圧倒的なパワーを伝えられとても新鮮で魅力的です。 中編では、異なる文化の背景の持つ要素を切り抜き、 再構成させる「文化のコラージュ」という手法についてご紹介します。 【参考】 瀬戸内国際芸術祭2022公式HP:https://setouchi-artfest.jp/