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【ミライデザイン研究所】「2121年 Futures In-Sight」展 -後編-

インサイドジール 日本語記事

クリエーティブ本部 デザイナーのSです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。 前編に引き続き、東京ミッドタウン・ガーデン内21_21 DESIGN SIGHTにて開催されていた 「2121年 Futures In-Sight」展についてご紹介します。 本展は未来を思い描くだけではなく、考え方や物の見方を、多様な参加者たちとともに“可視化”していくものです。 参加者はデザイナーやアーティスト、思想家、エンジニア、教育機関、研究者など多岐にわたり、 様々な視点から未来への考え方を知ることができる場となっています。 自由な動線と様々な観点からの作品があるにも関わらず、来場者を困惑させない2つの要素 1.自由動線でも成立している理由 2.”未来”に没入させる展示方法 のうち、後編ではポイント2.についてお送りします。 2."未来"に没入させる展示方法 階層を分ける 「21-21 DESIGN SIGHT」は地上1階地下1階の低層建築になっています。 こちらは階段を使用して地下に降りた先にある最初の作品でした。 本来最初の作品の近くに展示されている”ごあいさつ”ですが、本展では地上1階に展示され、作品は地下1階から始まります。 階層が分けられ、突如作品が目に入ることで、来場者にとって”没入感”を与えるものとなっているのではないでしょうか。 パネルとグラフィックの位置 また、最初の展示ゾーンには”歴史を歩く”というテーマが設けられています。 パネルを”目線の高さ”に合わせることで、歩きながらもストレスなく作品を鑑賞することができるようになっていました。 もう少し細かく見ていくと、グラフィックの構成で日付やタイトル毎に高さを合わせています。 これもまた目線を一定にする要素となっています。 もしこのパネルが大きく別々に展示されていたら、来場者は立ち止まり流れが悪くなることが想像できます。 メイン会場では”未来を一緒に考察する”というテーマになっています。 先ほどの目線に合わせる方法を用いた”歴史を歩く”展示ゾーンとは異なり、四角柱には満遍なく文字情報が掲示されています。 足元や高い場所にあると読みにくいと感じるかと思いますが、これにより視線が上から下まで向けられるようになります。 普段考え事をする時に、何気なく上を見ることがあるのではないでしょうか。 実際に私も、上に掲示されている文章を読んでいる時は 「そういった未来もあるのか」「私ならこう考えるな」などの思考回路になっていました。 下部にも掲示することで、しゃがみながら考え込む人もいました。 このように視線の幅を広くすることで、考えることに対して視野が広がり、作品に没入することができます。 また、会場全体はモノクロに統一されています。 多くの企画展ではイメージカラーやメインとなる作品があるのに対し、メインとなる作品がないことはもちろん、 余計なイメージを与えてしまうと、来場者にとって”考える”という行為に”弊害”が生まれてしまうかもしれません。 赤は”情熱”、青は”爽やか”など、生活する上で何気なくイメージが浮かび上がってしまいます。 モノクロにすることで色彩からイメージを与えず、来場者に”想像する”余地を与えることができます。 それもまた没入感へ繋がっていると感じました。 このように1つの企画展でも、テーマが異なることで展示方法も変わってきます。 来場者に伝えたいことを明確にすることで、これらは解決できるのではないでしょうか。 まとめ 今回は大きく2つの視点から本展を成り立たせる体験設計について書かせていただきました。 空間デザインをしていく上で、体験設計を考えることは大事であると考えています。 羅針盤がフロアマップとなっていたことや、四角柱の展示において高さを持たせることで回遊を促していたことは、 自由動線でも成立していた要素となっています。 自由動線であることで、来場者自らが情報を取得する構成になっており、 それが今回の没入体験に繋がっていると気づくことができました。 また、その没入体験をストレスなく実現するために、 パネルの位置をテーマによって変化させることや会場全体をモノクロで統一すること、 ランダムに配置された四角柱など様々な工夫が見られました。 体験設計を踏まえ、レイアウト設計を企画書などに明記することは多いですが、 本当の意味での体験設計とは来場者の”主体性を尊重する”ことかもしれません。 展示会や内装、バーチャル空間などにおいて、 このような視点から体験設計を考えてみると、また新しい提案に繋がるのではないでしょうか。

【ミライデザイン研究所】「2121年 Futures In-Sight」展 -前編-

インサイドジール 日本語記事

クリエーティブ本部 デザイナーのSです。 【ミライデザイン研究所】とはーーー 空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、 考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想しアイデアにプラスしていく、そんな企画です。 今回は東京ミッドタウン・ガーデン内21_21 DESIGN SIGHTにて開催されていた「2121年 Futures In-Sight」展についてご紹介します。 本展は未来を思い描くだけではなく、考え方や物の見方を、多様な参加者たちとともに“可視化”していくものです。 参加者はデザイナーやアーティスト、思想家、エンジニア、教育機関、研究者など多岐にわたり、 様々な視点から未来への考え方を知ることができる場となっています。 未来の考え方を知る”様々な視点”を2つの作品を例に挙げてご紹介します。 タイトル  Imaginary Dictionary-未来を編む辞書 概要  過去30年の新聞記事データを学習したAIが、未来の可能性から作り出される言葉を生成します。 考察  AIと聞くと堅苦しいイメージがありますが、この作品で表示されていた未来の言葉には「差別麦」「カーテン哲学」など、 今ある言葉が組み合わさったものが多く見られました。 思わず笑ってしまうものばかりだったので、私も未来の言葉を考えたい気持ちにさせられます。 全く異なる要素を掛け合わせることは、クリエイティブの分野でもよく使われています。 新しいものとは、何かと何かを掛け合わせることで生まれるものであると感じます。   タイトル  "e-lamp.”-心を、光で、可視化する。 概要  自身の指を作品にかざすことで心臓の動きを感じ、心拍が光になって点滅を繰り返す。 考察  もし心が可視化されたら日常にどのようなコミュニケーションが生まれるのでしょうか。 プレゼン時や恋人といる時の”ドキドキ”が可視化されたら少し恥ずかしい気持ちもありますが、 それを知った時の相手の行動に変化が生まれることで、現在とはまた違ったコミュニケーションになるのではないでしょうか。    また、本展は来場者が自由に巡回できるものとなっています。 それにも関わらず、次の目的地へと困惑することもなく作品を鑑賞できました。 自由な動線と様々な観点からの作品があるにも関わらず、来場者を困惑させない要素とは何なのでしょうか。 大きく2つの視点から、どのような体験設計をつくっているのかについて深掘りしていきます。 1.自由動線でも成立している理由 2.”未来”に没入させる展示方法 今回の前編ではポイント1.についてお送りします。 1.自由動線でも成立している理由 作品を鑑賞する際、動線をあえて設けないことで来場者を自ら行動させることができます。 しかし自由に行動できるが故に、そこには自発的に行動させるための何かしらの工夫が必要になってきます。 羅針盤が生み出す動線計画 入り口を真っ直ぐ進むと、左側に大きな羅針盤が見えてきます。 「Future Compass」というこの羅針盤は、3層の円盤から構成され、 21のキーワードを自由に組み合わせることで自身のオリジナルの”問い”を導き出すことができます。 壁面に大きく展示されることで、本展にとって大きな役割を担っていることが伝わってきます。 スマートフォンやタブレットでQRコードを読み込むと、 画面上にも羅針盤が表示されて操作することができるようになっています。 くるくると回しながら3つのキーワードを繋げることで、1つの作品が表示されます。 それは次に鑑賞する作品で、目的地を提示してくれるのです。 この一連の流れの中で毎回異なるパターンが表示され、来場者の足を止めることなく誘導することができるものとなっていました。 本来であればパンフレットから作品概要やフロアマップを伝えるところを、 スマートフォンやタブレットを用いることで、来場者によって異なる鑑賞方法を作り出し、”自由な動線”が生まれています。 ▲羅針盤を操作して作品に行くまでの流れ 四角柱が生み出す動線計画 モノの変化を可視化する四角柱「タイムモノリス」は、100年という時間軸を高さに置き換えられたものです。 その高さは約3mにも及びます。展示物と天井の区別がなくなり、まるで森の中を彷徨っているような感覚になりました。 さらには展示物がランダムに配置されていることで会場全体に死角が生まれます。 遠くの作品はその場からの認識が難しく、羅針盤から提示された作品に一直線でたどり着くことはできません。 その間に惹かれる作品には立ち止まり、結果的に新たな鑑賞方法が生まれます。 これもまた、巡回を促す要素となり、自由な動線を作り出しています。 (後編に続きます)