インサイドジール

【ミライデザイン研究所】空間におけるコラージュ表現の可能性 -後編-

2022.11.30

クリエーティブ本部 デザイナーのSです。

【ミライデザイン研究所】とはーーー
空間デザインの領域から一歩外に飛び出し、
考え方やデザインの成り立ちについて考察、予想し、アイデアにプラスしていく、そんな企画です。

中編に引き続き、瀬戸内国際芸術祭2022の作品、
「女根 / めこん」「家プロジェクト:はいしゃ」についてお届けいたします。

【記憶のコラージュ:満遍なく展開させた一つのキーワード】
「媒体のコラージュ」や「文化のコラージュ」より中心のコンセプトとする「記憶のコラージュ」は、
作品において最も重要な考え方になっていると考えます。
三つの作品とも、その島ならではの精神と記憶を元に1つのキーワードで空間を設計されています。

「はいしゃ」では、かつて歯科医院ということで「歯」をテーマに展開していました。
こちらはビルに入る前にある階段の砂壁です。
アイコンとなる各種歯のペンティング・タイルだけではなく、
壁に近づいてじっくり見ると小さいな陶器製の歯が所々埋め込まれています。

また、ビルの中の床には、歯のレントゲン写真が散らばっています。
そして、左の黒い部屋に入ると、巨大な黒い歯のインストレーションが現れます。
ペイティング・陶器・写真・インストレーションといった異なる表現で
「歯」というテーマを貫通させ印象的なアイデアの展開になっています。

「めこん」では、女木島の「生命力」というコンセプトだと思われます。
学校の核としての中庭には、島で育った大きな椰子に赤いフレームで囲まれ、
スクラップや船材などのパーツを再構築することで女木島の精神を表現していると思います。
天辺に風で回転する「めこん」のアイコンのようなものは、
島の呼吸と共振して生きているというような印象を受けました。


そして「I♥湯」では、島の高齢者が自宅での入浴が難しくなっているので銭湯が欲しいという声が上がりました。
そこで、国内外の来島者と島民が交流できる場というコンセプトの銭湯を作るに至ったそうです。
直島の象徴としてこの銭湯が認識されています。


「めこん」と同じく島で育った椰子をそのまま空間に活かし、
島の岩・海・波などのモチーフを書かれたタイルをたくさん飾られていました。
タイルの周囲にリゾット風のサンメントをバランスよく配置することで、
暖かくエキゾチックな南国情緒をあふれる空間になります。

【まとめ】
コラージュという手法だからこそ、色々な要素を組み合わせても成り立つというのもありますが、
異なる素材の遊びから配色の冒険、そして極めたコンセプトの展開まで勉強になり、
ちょっとした変わったデザインを作りたい際に良い手本となる作品だと思います。
島での展示は普段都内の美術館では馴染まない珍しい表現手法がたくさん見られて楽しいので、
ぜひ来年の瀬戸内国際芸術祭まで足を運んでいただけたらと思います。


【参考】
▼瀬戸内国際芸術祭2022
https://setouchi-artfest.jp
▼北川フラム×大竹伸朗、銭湯やラブホテル…日本の“ローカル”に見い出す新たな価値観【対談2/2】
https://www.fashion-headline.com/article/5014
▼「2,000個の陶器製の歯」が出迎える――大竹伸朗「はいしゃ」追加制作ドキュメント
https://benesse-artsite.jp/story/20210825-1771.html